ローマ・カトリック教会の教皇フランシスコと、東方正教会のバルソロメオ全地総主教、そしてギリシャ正教会の首座主教でアテネおよび全ギリシャのイエロニモス大主教は16日、難民問題に関する共同声明を発表した。
この声明は、これら3人の指導者たちが同日、紛争を逃れてくる難民や移民にとって、ヨーロッパで最初の上陸地点であるギリシャのレスボス島で会談を行って署名したもの。
この声明で3者は、この会談の目的について「紛争の状況や、多くの場合、自らの生存に対する毎日の脅威から逃れてヨーロッパへやってきた無数の難民や移民、そして庇護希望者たちの悲劇的な状況に対する深い関心を表すため」だと説明している。
「人間の尊厳や基本的人権と自由を侵害し、暴力と武力紛争、宗教的および民族的少数者の迫害や立ち退き、そして故郷からの家族の追い立ての拡大によって作られた、途方もなく大きい人道危機を、世界の世論は無視してはいけない」と、同声明は強く訴えている。
同声明はまた、強制移住や立ち退きの悲劇が何百万人もの人たちに被害をもたらしており、それは根本的に人間性の危機であって、連帯と憐れみ、寛容そして資源の迅速かつ実用的な約束を必要としていると述べている。
「レスボス島から私たちは、この大規模な人道危機とその底に潜む原因に直面するに当たって、外交的・政治的および慈善的な発意を通じて、そして協力的な努力を通じて、中東とヨーロッパの両方において勇気をもって応えるよう国際社会に訴える」と、3人の指導者たちはこの声明に記している。
3人の指導者たちは、この声明で、平和を求める自らの願いにおいて、また対話と和解を通じた紛争の解決を促進する自らの用意において、「私たちは一つ」と明言している。
そして、難民や移民および庇護希望者たちを助け気遣うためにすでに行われている取り組みを認める一方で、「私たちは全ての政治指導者たちに対し、キリスト教徒を含めて、個人や共同体が自らの祖国に確実にとどまり、平和と安全のうちに生きる基本的な権利を享受することが確実にできるようにするために、あらゆる手段を用いるよう呼び掛ける」としている。
同指導者らは、法の支配を支え、この持続不可能な状況の中で基本的人権を守り、少数者を保護し、人身売買や密輸入と闘い、エーゲ海や地中海全域経由のような安全でない経路を除去し、安全な再定住の手続きを開発するために、より幅広い国際的な意見の一致と支援計画が緊急に必要だとしている。
「このようにすれば、私たちは、苦しんでいる私たちの非常に多くの兄弟姉妹たちの必要を満たすのに直接関与している国々を支援することができるだろう」と同指導者たちは述べている。「とりわけ私たちは、自らの経済的困難にもかかわらず、この危機に対して寛容さをもって応えてきたギリシャの国民に対する自らの連帯を表明する」
「共に私たちは、中東における戦争や暴力の終結と、公正かつ永続的な平和、そして自らの故郷を捨てることを余儀なくされた人たちの栄誉ある帰還を、厳然と訴える」と同声明は記している。「私たちは宗教共同体に対し、難民を受け止め、支援し、そして保護するための自らの努力を増大させるよう、そして宗教的および民間の救援奉仕活動が自らの取り組みを調整するよう求める」
「その必要性が存在する限りにおいて、私たちは全ての国々に対し、一時的な庇護を拡張し、適格な人たちに難民の地位を提供し、自らの救援活動を拡大し、進行中の紛争を素早く終わらせるために、善意ある全ての男女とともに働くよう強く求める」と、同声明は付け加えている。
3人の指導者たちはこの声明で、「今日のヨーロッパが第二次世界大戦の終結以来最も深刻な人道危機の一つに直面している」という認識を示している。その上で、「この重大な課題に向き合うために、私たちはキリストに従う全ての人たちに対し、私たちがいつかある日裁かれることになる根拠である、主の御言葉を心に留めるよう訴える」と述べ、「蓋シ我ガ飢エシ時、爾等我ニ食ハセ、我ガ渇キシ時、我ニ飲マセ、我ガ旅セシ時、我ヲ宿ラセ、我ガ裸ナリシ時、我ニ衣セ、我ガ病ミシ時、我ヲ顧ミ、我ガ獄ニ在リシ時、我ニ来レリ。・・・我誠ニ爾等ニ語グ、爾等ガ之ヲ我ガ此ノ至ト小キ兄弟ノ一人ニ行ヒシハ、即我ニ行ヒシナリ」(新約・マトフェイ福音25章35節から36節および40節、正教会訳)/「『お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。』・・・『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。』」(マタイによる福音書25章35節から36節および40節、新共同訳)を引用している。
「私たちの側に関しては、私たちの主イイスス・ハリストス/イエス・キリストの御心に従い、私たちは全てのキリスト教徒の完全な一致を促進するための自らの努力を強めることを、堅くそして心から決意する」と3者は強く言明。その上で、「私たちは『(キリスト教徒同士の)和解には全ての民族の中および間において社会正義を促進することが含まれる・・・移民や難民そして庇護希望者たちに、ヨーロッパにおける人間的な歓迎をもたらすことに向けて、共に私たちは自らの役割を果たす』(チャルタ・オイクメニカ、2001年)という自らの信条を再確認する」と、ヨーロッパ教会協議会と欧州カトリック司教協議会の共同文書であるエキュメニカル憲章を引用している。
「難民や庇護希望者そして移民および私たちの社会で周縁化された多くの人々の基本的人権を擁護することによって、私たちはこの世界に対する奉仕という教会の使命を果たすことを目指す」と、同声明には記されている。
声明の最後に3人の指導者たちは、「本日の私たちの会談は、避難を求めている人々や彼らを歓迎し支援する全ての人々に勇気と希望をもたらすのを助けることを意図している。私たちは国際社会に対し、人命の保護を優先課題とし、そして、あらゆるレベルで、全ての宗教共同体にまで拡張する包括的な政策を支持するよう、強く要求する。現在の人道危機によって被害を受けている、キリスト教徒である非常に多くの私たちの兄弟姉妹も含めて、全ての人々のひどい状況は、私たちの絶えることのない祈りを必要としている」と結んでいる。
バチカン放送局日本語版は「教皇、レスボス島で難民キャンプを訪問」という見出しの16日付の記事で、この声明では「難民たちが生きる人道的悲劇に対し、連帯と、寛大さ、そして迅速で効果ある支援を訴え、人命の保護は第一優先であると強調している」と報じた。
教皇、シリア難民をイタリアへ連れて行く
また、16日付のバチカン放送局英語版によると、教皇フランシスコは、会談後の帰りにレスボス島を離れた際、ギリシャに到達する難民をトルコに送還することで欧州連合(EU)とトルコが3月9日に交わした合意が署名される前、すでにレスボス島の難民キャンプにいた、シリア難民の3家族とその6人の子どもたちからなる合計12人のイスラム教徒を、自らと同じ飛行機でイタリアへ連れて行ったという。
同放送局によると、これらの難民の住居や世話にかかる費用はバチカンが負担し、聖エジディオ共同体が初期のシェルターを提供することになると、同放送局は報じた。