(ハ)機能論的な労働に対する聖霊の働き(召しにおける聖霊の働き)②
聖霊の賜物に関して、次のことは教会成長〔13〕のみならず、労働にとっても大変有益である。(イ)与えられた自己の聖霊の賜物を正確に把握すること、(ロ)聖霊の賜物と、生来のタラントや聖霊の実やキリスト者としての役割および偽の賜物などとの明確な違いを見極めること、(ハ)聖霊の賜物について洞察すること、(ニ)そして聖霊の賜物を用いること。
キングホーン〔14〕は20の聖霊の賜物を(イ)権能を付与された賜物、(ロ)奉仕する賜物、(ハ)異言とそれを解釈する賜物、の三つの類別に沿ってそれぞれ別個に説明している。この20の聖霊の賜物の中で、キリスト者が労働の場で用い得るものは、大きくは「助け・仕える賜物」と「治め・指導する賜物」の二つである。
彼は「助け・仕える賜物」に関して、(イ)助けること、仕えることは、それぞれ別の賜物であるが、互いに親密な関係にあること、(ロ)助ける賜物は、他者への実際的な奉仕を通して彼らを慰め、その人たちがさらに広範な奉仕を遂行できるようにさせるなど、人間そのものに心配りする奉仕であるが(Ⅰコリント12:28および使徒20:35参照)、仕える賜物は、私たちを整えて仕事をやり遂げさせる仕事志向の奉仕であること、(ハ)それぞれの賜物が自分の活動の分野を守っているが、はっきりと単純に、この二つの霊の賜物を分けて考えるべきではないこと、(ニ)助ける賜物と仕える賜物は人々を重荷から解放し、彼らがさらにキリストに仕えていけるようにしてあげる、そのような奉仕へと私たちを導くこと、などを指摘している〔14〕。
また、「治め・指導する賜物」に関して(イ)治める賜物は、私たちを整えて教会(または社会における所属団体)の組織化と管理に当たらせるものであること(Ⅰコリント12:28参照)、(ロ)この賜物を持っている人は、各人が無秩序という障害に煩わされないで自分の職責を果たせるように、大きくなってくる信徒の群れ(または所属団体の人々)を指導し、組織づくりをすること、(ハ)指導する賜物を持っている人(ローマ12:8、Ⅰテサロニケ5:12、Ⅰテモテ5:17参照)は援助のためにリーダーシップをとる人であり、彼は人の必要としているものが見え、その必要に応えてあげるために、信徒の共同体(または所属団体)の中で統率力を発揮し、人々からの財源や能力を調整し、その必要を満たす人であること、(ニ)教会におけるリーダーシップは、世俗での理解とは全く対照的である、すなわち世俗の考えるリーダーシップは他人を支配するものであるが、教会のリーダーシップは他人に仕えるものであること、などを指摘している〔14〕。
魂に備えられた聖霊の賜物と体とをもって労働を行うとき、そこには主の祝福が溢れ、神の使命を達成することができ、大いなる成果を挙げることができることを覚えたい。ヨハネ4:10a「もしあなたが神の賜物を知り、また、あなたに水を飲ませてくれと言う者がだれであるかを知っていたなら、あなたのほうでその人に求めたことでしょう」参照、およびⅠテモテ4・14b「あなたのうちにある聖霊の賜物を軽んじてはいけません」参照。
《 参考文献を表示 》 / 《 非表示 》
(参考並びに引用資料)
[1]門谷晥一(2006年)『働くことに喜びがありますか?』NOA企画出版
[2]ジョン・A・バーンバウム、サイモン・M・スティアー(1988年)『キリスト者と職業』村瀬俊夫訳、いのちのことば社
[3]山中良知(1969年)『聖書における労働の意義』日本基督改革派教会西部中会文書委員会刊
[4]カール・F・ヴィスロフ(1980年)『キリスト教倫理』鍋谷堯爾訳、いのちのことば社
[5]唄野隆(1995年)『主にあって働くということ』いのちのことば社
[6]宇田進他編(1991年)『新キリスト教辞典』いのちのことば社
[7]山崎龍一(2004年)『クリスチャンの職業選択』いのちのことば社
[8]ケネ・E・ヘーゲン『クリスチャンの繁栄』エターナル・ライフ・ミニストリーズ
[9]D・M・ロイドジョンズ(1985年)『働くことの意味』鈴木英昭訳、いのちのことば社
[10]唄野隆(1979年)『現代に生きる信仰』すぐ書房
[11]ルーク・カラサワ(2001年)『真理はあなたを自由にする』リバイバル新聞社
[12]ヘンドリクス・ベルコフ(1967年)『聖霊の教理』松村克己&藤本冶祥訳、日本基督教団出版局
[13]ピーター・ワグナー(1985年)『あなたの賜物が教会成長を助ける』増田誉雄編訳、いのちのことば社
[14]ケネス・C・キングホーン(1996年)『御霊の賜物』飯塚俊雄訳、福音文書刊行会
[15]エドウィン・H・パーマー(1986年)『聖霊とその働き』鈴木英昭訳、つのぶえ社
[16]遠藤嘉信(2003年)『ヨセフの見た夢』いのちのことば社
[17]唄野隆(1986年)『主に仕える経済ライフ』いのちのことば社
[18]東方敬信(2001年)『神の国と経済倫理』教文館
[19]E・P・サンダース(2002年)『パウロ』土岐健治&太田修司訳、教文館
[20]松永真里(2001年)『なぜ仕事するの?』講談社
[21]厚生労働省編(2005年)『労働経済白書(平成一七年版)』国立印刷局発行
[22]ダニエル・フー「Goal-Setting」、国際ハガイセミナー資料(2005年、シンガポール)
[23]ジョン・ビョンウク(2005年)『パワーローマ書』小牧者出版
[24]ジョン・エドムンド・ハガイ(2004年)『聖書に学ぶリーダーシップ』小山大三訳、ハガイ・インスティテュート・ジャパン
[25]国際ハガイセミナー資料(シンガポール、2005年7月)
[26]ポール・J・マイヤー(2003年)『成功への25の鍵』小山大三訳、日本地域社会研究所
[27]国内ハガイセミナー資料(名古屋、2004年11月)
[28]三谷康人(2002年)『ビジネスと人生と聖書』いのちのことば社
[29]安黒務(2005年)「組織神学講義録、人間論及び聖霊論」関西聖書学院
[30]平野誠(2003年)『信念を貫いたこの7人のビジネス戦略』アイシーメディックス
[31]マナブックス編(2004年)『バイブルに見るビジネスの黄金律』いのちのことば社
[32]マナブックス編(2006年)『バイブルに見るビジネスの黄金律2』いのちのことば社
[33]山岸登(2005年)『ヤコブの手紙 各節注解』エマオ出版
[34]野田秀(1993年)『ヤコブの手紙』いのちのことば社
[35]デイビッド・W・F・ワング(2008年)『最後まで走り抜け』小山大三訳、岐阜純福音出版会
(その他の参考資料)
・林晏久編(2004年)『刈り入れの時は来た—ビジネスマン・壮年者伝道ハンドブック』いのちのことば社
・大谷順彦(1993年)『この世の富に忠実に』すぐ書房
・H・F・R・キャサーウッド(1996年)『産業化社会とキリスト教徒』宮平光庸訳、すぐ書房
・鍋谷憲一(2005年)『もしキリストがサラリーマンだったら』阪急コミュニケーションズ
・マックス・ヴェーバー(1989年)『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』大塚久雄訳、岩波書店
・小形真訓(2005年)『迷ったときの聖書活用術』文春新書
・ウォッチマン・ニー(1960年)『キリスト者の標準』斉藤一訳、いのちのことば社
・ロナルド・ドーア(2005年)『働くということ』石塚雅彦訳、中公新書
・共立基督教研究所編(1993年)『聖書と精神医学』共立基督教研究所発行
・生松敬三(1990年)『世界の古典名著・総解説』自由国民社
・バンソンギ「キリスト教世界観」石塚雅彦訳、CBMC講演会資料(2005年)
・William Nix, 『Transforming Your Workplace For Christ』, Broadman & Holman Publishers, 1997
・ミラード・J・エリクソン(2005年)『キリスト教神学』第三巻、伊藤淑美訳
・ヘンリー・シーセン(1961年)『組織神学』島田福安訳、聖書図書刊行会
・ジョージ・S・ヘンドリー(1996年)『聖霊論』一麦出版社
・ウィリアム・ポラード(2003年)『企業の全ては人に始まる』大西央士訳、ダイヤモンド社
◇
門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。