神が願われる労働による祝福
神が願われる労働に携わることは、本来大変な光栄であり、誇りであり、大きな喜びであり、結果として、神の特別恩恵による大いなる祝福を受け、豊かな実を結ぶものである。その祝福がどんなに素晴らしいものであるかを、幾つかの御言葉から見ていきたい。
(イ)平安と喜びが与えられ〔2〕、幸福でしあわせになる。
詩篇128:1、2「幸いなことよ。すべて主を恐れ、主の道を歩む者は。あなたは、自分の手の勤労の実を食べるとき、幸福で、しあわせであろう」参照。および伝道者2:26「なぜなら、神は、みこころにかなう人には、知恵と知識と喜びを与え、罪人には、神のみこころにかなう者に渡すために、集め、たくわえる仕事を与えられる。これもまた、むなしく、風を追うようなものだ」参照。
(ロ)能力に応じて働き、必要に応じて受ける(無競争の状態)。
人間が初めて置かれたエデンの園は、労働の産物によって生計を立てるところではなかった。生活の糧が十分あったということは(創世記1:29、30、2:9、2:16参照)、労働がそのためのものではなく、むしろそれは人間が神の創造の目的を遂行、成就する方法であったと見なされる。
その点でエデンの園においては、労働と報酬とが直接的につながっていなかった。罪の無いエデンの園における神の直接支配の中では、「能力に応じて働き、必要に応じて受ける」という無競走の原則が見られる。
報酬が労働の原因や目的となって、労働の前後を報酬が取り巻く世界は、人間に罪が入った後の世界である。それだけ、エデンの園の労働は祝福を受け、純粋な奉仕となっていた。
これは、神の祝福の原理に沿った労働であり、原則的には人間に罪が入った後においても見られる。その例は、出エジプト記16:18「しかし、彼らがオメルでそれを計ってみると、多く集めた者も余ることはなく、少なく集めた者も足りないことはなかった。各自は自分の食べる分だけ集めたのである」に示されている〔3〕。
(ハ)繁栄し、また栄える。
ヨシュア記1:8「この律法の書を、あなたの口から離さず、昼も夜もそれを口ずさまなければならない。そのうちにしるされているすべてのことを守り行うためである。そうすれば、あなたのすることで繁栄し、また栄えることができるからである」参照、その他、申命記28:1~14、詩篇35:27参照。
(ニ)無駄に労することがない。
イザヤ65:23「彼らはむだに労することもなく、子を産んで、突然その子が死ぬこともない。彼らは主に祝福された者のすえであり、その子孫たちは彼らとともにいるからだ」参照。
(ホ)非常に高い生産性・高い効率が見られる。
創世記26:12、13「イサクはその地に種を蒔き、その年に百倍の収穫を見た。主が彼を祝福してくださったのである。こうして、この人は富み、ますます栄えて、非常に裕福になった」参照。
(ヘ)必ず与えられる、また満ち足りるまで与えられる。
イザヤ55:10「雨や雪が天から降ってもとに戻らず、必ず地を潤し、それに物を生えさせ、芽を出させ、種蒔く者には種を与え、食べる者にはパンを与える」参照。およびレビ記26:3~5「もし、あなたがたがわたしのおきてに従って歩み、わたしの命令を守り、それらを行うなら、わたしはその季節にしたがってあなたがたに雨を与え、地は産物を出し、畑の木々はその実を結び、あなたがたの麦打ちは、ぶどうの取り入れ時まで続き、ぶどうの取り入れ時は、種蒔きの時まで続く。あなたがたは満ち足りるまでパンを食べ、安らかにあなたがたの地に住む」参照。
(ト)良きものが、やむことなく与えられる。
イザヤ1:19「もし喜んで聞こうとするなら、あなたがたは、この国の良い物を食べることができる」参照。および創世記8:22「地の続くかぎり、種蒔きと刈り入れ、寒さと暑さ、夏と冬、昼と夜とは、やむことはない」参照。
(チ)神に似る者となっていく。
人は労働によって神の世界管理のわざに加わり、神のかたちを具体化していく。人はその仕事を通じて、自分の人格を具体的に形づくっていく〔10〕。
私たちは労働から与えられる祝福が、お金や物質のような有形のものだけではなく、平安や喜びや幸福、そして人格や品性というさらに素晴らしい無形のものが与えられることを覚えたいと思う。また私たちは、神が願われる労働による祝福は、労働を行う者だけではなく、その者の周辺にもその祝福が広がっていくものであることを覚えたい。
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(参考並びに引用資料)
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[5]唄野隆(1995年)『主にあって働くということ』いのちのことば社
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[12]ヘンドリクス・ベルコフ(1967年)『聖霊の教理』松村克己&藤本冶祥訳、日本基督教団出版局
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・マックス・ヴェーバー(1989年)『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』大塚久雄訳、岩波書店
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・生松敬三(1990年)『世界の古典名著・総解説』自由国民社
・バンソンギ「キリスト教世界観」石塚雅彦訳、CBMC講演会資料(2005年)
・William Nix, 『Transforming Your Workplace For Christ』, Broadman & Holman Publishers, 1997
・ミラード・J・エリクソン(2005年)『キリスト教神学』第三巻、伊藤淑美訳
・ヘンリー・シーセン(1961年)『組織神学』島田福安訳、聖書図書刊行会
・ジョージ・S・ヘンドリー(1996年)『聖霊論』一麦出版社
・ウィリアム・ポラード(2003年)『企業の全ては人に始まる』大西央士訳、ダイヤモンド社
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門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。