牧師の働きを通して経験したこと、教えられたこと・その2
対象の変化(目に見える物の世界から神および人の心という目に見えない霊の世界)を通して経験したこと、教えられたこと
牧師はいつも、目に見えない世界の領域のことについて扱わなければならない。それ故、より高い霊性を維持すること、いつも聖霊に満たされていることが望ましい。神は私たちを聖霊によって満たそうとしておられる故に、みことばの約束を信じ、自我を明け渡し、罪を捨てる決断をするなら、必ず聖霊の満たしは与えられる。もしそうならないとすれば、それは自分が自我や罪によって聖霊の満たしをブロックしているからに他ならない。しかし、罪に対してセンシティブになるなら、その分誘惑も多く感じるようになる。従って、いつも聖霊に満たされるためには、かなりの決断をもって自我と罪の問題に立ち向う必要があることを強く思わされた。
Ⅰペテロ5:8〜9のみことばにある通り、私たちの心と思いをキリストから絶えず引き離そうとする悪しき力がほえたける獅子のように、食い尽くすべきものを捜し求めながら歩き回っている。それ故、見えない世界における霊的戦いに勝利するためには、身を慎み、目を覚まして、絶えず祈りつつ、キリストへの従順と愛の献身によって、悪魔に立ち向かう信仰に堅く立つことが必要である。牧師としての働きを経るにつれ、私はこのことをますます強く意識するようになった。そして、悪魔なる敵と戦わねばならないという思いを強く持つようになった。
キリスト者が霊的な力をいただくためには、みことばに触れることが不可欠である。牧師にとって、霊性がいつも整えられていることはとても大切なことであり、ディボーションによって神と交わることは、牧師にとっての生命線であることをあらためて強く思わされた。また、見えない世界の領域のことを思い巡らすことを通して、天の御国への思いが強められてきたことも、とても感謝なことであった。
働き方の変化(何かを行うこと《doing》から共にあること《being》)を通して経験したこと、教えられたこと
牧会においては、見える量的な目標を立て、それをその通りに実現することはなかなか困難である。にもかかわらずビジネスマン時代の習性が残っており、成果を求める思い、またそれによる人の評価を気にする思いにとらわれ、量的な目標を掲げたくなることが多くあった。しかし、徐々に量的なものではなく、質的なものを求める方向に導かれてきた。これは共同牧会者である、妻の影響によるところが大である。
父、御子、御霊の愛の交わり、また共に喜び共に泣くという神の家族としての素晴らしい愛の交わりがあふれることは、教会にとってとても大切な要素である。そのために、信徒の一人一人の内に神の愛が根付いてほしいと切に願っている。しかし私自身は、この6年間の歩みを通して、自分の内には愛がないということを徹底的に覚えさせられ、この点において変えられたいといつも願い求めてきた。そのような私ではあるが、ただ主の哀れみとご愛に支えられ、また教会の兄弟姉妹方や妻の愛に支えられて、ここまで生かされてきた。そのことを心から感謝したい。
牧師にとっては、人の心の問題、特に試練・苦難にある人の心の問題を扱うことはとても大切である。そのような時、どのようにその人の心に寄り添い、どのようにその人を平安に導くか、またその人と交わる時に、いかに聞くに早く語るに遅い者であり得るかなど、牧師として備えるべき資質は多くある。しかしそのためには、牧師も一人のキリスト者として、弱さや、汚さや、自分の内面を、隠さずに正直に出すこと、また、牧師はただキリストのご愛の故に罪が赦(ゆる)され、キリストの召しの故に牧師の働きに導かれ、上よりの力に支えられて牧会をさせていただいている者にすぎないことを示すこと、さらに、牧師は祈り難い時にこそ祈り、自分を差し出すことが困難な状況の時にこそ、神の求めに応じて自分を差し出すという態度を示すこと、などが必要であると思うようになった。そうでなければ、本当の意味で、喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣く者であることはできないと思わされたからである。
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(参考並びに引用資料)
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門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。