ローマ教皇フランシスコが、イタリアのペンテコステ派教会を初めて訪問した。この訪問で、教皇は過去にローマ・カトリック教会がペンテコステ派を迫害したことについてゆるしを求めた。これを福音派のリーダーたちは感謝をもって歓迎。福音派の世界組織である世界福音同盟(WEA)のジェフ・タニクリフ総裁兼総主事は、逆にカトリック教会に対して福音派がこれまで行った差別について謝罪した。
バチカン放送(英語版)が7月30日に伝えたところによると、教皇がゆるしを求めたことについて、タニクリフ氏は、「これは聖書に基づいたことであり、イエス様のメッセージを反映しています。私の望みは、この教皇フランシスコの行動が、世界に対する、特にカトリックと福音派の間にかなりの緊張関係が存在するような国々に対する、強力なメッセージとなることです」と語った。
一方、タニクリフ氏は、「しかしまたこうも言わねばなりません。過去においては、福音派を含め、プロテスタントがカトリックを差別したという状況も確かにありました。私はこのような行いがあったことを本当に遺憾に思います。神学的に意見の相違があっても、それが相手を差別したり迫害したりすることにつながるべきではないからです」「われわれは皆、自分たちの失敗を全て認めて、互いにゆるしを請う必要があるのです。教皇フランシスコはそのよいお手本を示したと思います」と語った。
教皇フランシスコは7月28日、イタリア南部の都市カゼルタにあるペンテコステ派として知られる「和解の福音教会」を訪問。バチカン放送(英語版)によると、教皇はブエノスアイレス大司教時代に、同教会の創立者であるジョバンニ・トレッティーノ牧師と初めて会った。これまでも教皇は、住居としているバチカンにある聖マルタの家で、複数のペンテコステ派のグループと会見している。AP通信の報道によると、歴代ローマ教皇の中でペンテコステ派教会を訪問したのは教皇フランシスコが初めて。
教皇は、同教会に集まった約350人の前で話し、トレッティーノ牧師と個人的に会見した。一方、バチカン放送(英語版)によると、教皇はトレッティーノ牧師との会見の後、イタリア全土、また米国や南米から訪れた約200人の福音派に温かく迎え入れられたという。
「狂ったようにペンテコステ派を迫害し、否定した人々の中には、カトリック信者もいました」と、教皇はペンテコステ派教会を禁じていたイタリアのファシスト政権に言及。「私はカトリックの神父ですが、自分たちがしていることが分からず、悪魔に誘惑された、そのようなカトリックの兄弟姉妹たちに代わって、許しを請います」と謝罪した。
教皇は、今回の訪問を驚く人もいるだろうと認めた上で、教皇自身は福音派を「兄弟」と考えていると語った。「驚く人もいるでしょう。『教皇が福音派を訪ねたって?』と。しかし、私は単に自分の兄弟たちに会いに行っただけです」と語った。
タニクリフ氏は、世界中の福音派クリスチャンのうち約6億5千万人が所属するWEAの総裁兼総主事を2005年5月から務めているが、「カトリックと福音派との間の公式な対話は、エキュメニカルな模索の一部として非常に重要であり、信頼と友情を築くことは神学的対話を深めることにつながる」と語った。
タニクリフ氏はまた、キリストの身体である教会において、関係を構築することはとても重要だと付け加えた。「ヨハネによる福音書17章で、イエスは明らかに私たちに一つとなるように呼び掛けています。教会の外にいる人々にも、キリスト教の教派の間には違いもあるけれども、中核となるところでは、共通する点も多いと理解してもらうことは重要です」と語った。
WEAグローバル大使のブライアン・スティラー氏が明かしたところによれば、教皇は福音派のリーダーたちと個人的な会合を開いた後、ペンテコステ派教会への訪問を計画していることを、今年6月下旬には打ち明けていたという。
「教皇はわれわれの話を聴いた後、意外な話をしました」とスティラー氏。「教皇になる前から、教皇はあるイタリア人牧師と親しくされていたそうですが、そのうちに、その牧師とその教会がカトリック教会の力と存在を重苦しく感じていることを知りました。だからその教会を訪問して、カトリック信者が過去に行った過ちに対して謝罪しようと決意したのです」と説明した。
ライフ・アウトリーチ・インターナショナルの創設牧師で、妻のベティ夫人と共にテレビ伝道を行っているジェームズ・ロビンソン氏も、6月の会合に参加したが、教皇は過去の過ちを癒す道を模索したかったのだと考えている。
「教皇はこの教会に対して謝罪する理由があると考えたのです。カトリックが福音派とプロテスタントに対して友好的ではなかった地域で、福音派を含めたプロテスタント信者に対して謝罪したかったのだと思います」とロビンソン氏は語った。
また、タニクリフ氏は今回、教皇フランシスコといくらか個人的な時間を過ごす機会も得られたという。
「何年もかけて信頼と友情を築いたおかげで、より深く、より真実味のある対話が持てるのだと分かりました」とタニクリフ氏。「一つのグループが他のグループに嫌がらせをされたら、われわれ一人ひとりが何をできるのかを理解することが、世界的に見ても本当に重要です。バチカンとの関係を進めていく中で、われわれはそれを求めていくつもりです」と語った。