300年の歴史をもつ日本の古典芸能、文楽でイエス・キリストの生涯を題材にした公演「ゴスペル in 文楽」が17日、兵庫県西宮市の関西学院高等部チャペルで行われた。
同学院関係者によると、生徒ら約900人が鑑賞した。企画・制作はクリスチャンでもある豊竹英大夫(とよたけ・はなぶさだゆう)(57)さん。同校が生徒に古典芸能を身近に感じてほしいと、5年前から国立文楽劇場などで公演を続ける英太夫さんに依頼した。同関係者は「独特の言い回しや三味線などの伝統楽器を用いた演奏が生徒たちにも好評だった」と話した。
新約聖書の物語を義太夫節にしたもので、今公演では新たにヤイロの娘が復活する場面などを加えた。
23歳のときに現在の夫人に教会に誘われ、バプテスマを受けた。結婚後、40歳を過ぎたころからC型肝炎を患うなどして体調を崩し、心身共に疲れ果てたとき、夫人に勧められて牧師に相談。癒しを求めて一緒に祈っていると、健康が次第に回復していったという。神の力に感動した英大夫さんは、これまでの生活を悔い改め、「神様に恩返しをしたい」と思い立ったのが、聖書の話を浄瑠璃にして教会で語ることだったと話した。
公演を始めた1991年当初は各地の教会、学校で小さい集会だけであったのが、キリストの十字架上の死と復活をどのように表現すべきかを研究するため96年にはパレスチナを旅したという。99年には大阪基督教短大で「イエスの十字架」と題して学生向けに公演した。
英大夫さんによると、最初はキリスト教を文楽で扱うことについて業界から反対の声もあったという。だが、師匠で人間国宝の故・四世竹本越路大夫から「よいことだから、続けなさい」とアドバイスをもらい、勇気をもって継続した結果、今ではそうした声はなくなった。
公演の模様は、12月14日午後11時15分からのNHK総合テレビの番組『物知り一夜漬け』で放送される予定。これからは内容を充実させながら、旧約聖書の義太夫も検討中とのこと。