無神論の普及を目指す英国ヒューマニスト協会(BHA)が4日から、英国内を走る200台以上のバスに、今月英国で実施される国勢調査の宗教欄で「無宗教」を選択するよう呼び掛ける広告の掲載を始めた。これに対し、キリスト教シンクタンク「セオス」は、BHAの主張は誤ったものだと批判している。
問題の広告は「宗教心がない?今年の国勢調査ではそう言おう」というもの。英国では今月27日、10年に1度の国勢調査が実施される。調査の項目には信仰する宗教を選択する項目もあり、広告は普段あまり教会へ行かないようなクリスチャンが、「キリスト教」ではなく「無宗教」を選択するよう促すことを意図している。
広告は最初、「宗教心がないなら、神が願っているのだからそう言おう」というものであった。しかし、同国の広告慣行委員会(CAP)から、この内容では広範囲かつ深刻な非難を受けることになるだろうという助言を受け、今回のものに変更された。
BHAは、2001年に行われた前回の国勢調査の宗教に関する統計は歪められたもので、より正確な数値が必要だと主張している。
しかし、セオスは、前回の国勢調査では宗教を問う項目は記述式ではなく選択式のもので、「無宗教」がその最も初めの選択肢として設定されていたことを指摘。回答者にはいかなる宗教に対してもそれを信仰していないと否定できる「十分な機会」があったとしている。BHAが、回答者は自動的にいずれかの宗教を信仰していることにされてしまうと語っていることについては、「全く事実ではない」と否定している。
セオスのポール・ビックリー上級研究員は今回の広告について、宗教をニュースの話題の一つにしてくれているに過ぎない言う一方、「(BHAの)キャンペーンは、01年の国勢調査における宗教に関する調査の結果が政府の方針を左右し、国の歳出にまで影響を与えているなどと誇張している」と批判。「いかなる場合にしても、英国民はどのチェックボックスを選択するべきか、自分自身で判断する十分な能力を持っている。誰かに教えてもらう必要はない」と語った。
また、「もしカンタベリー大主教(英国国教会のトップ)が、人々に宗教欄でキリスト教を選択するよう呼び掛けるキャンペーンをするとしたら、それは大主教がやけになっているという証拠に他ならず、人々からは笑われるだけだ」「これは、今回のキャンペーンでも同じことが言える」などと語った。
BAHは、09年から英国内のバスに「神は多分いない。心配するのはやめて、人生を楽しもう」という広告を掲載。当時から広告をめぐって様々な議論が起きた。