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不条理なる死を不可知の光で中和せよ

天にお金は積めません(その1) マルコ10章17〜22節

2026年2月20日18時18分 コラムニスト : 藤崎裕之
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関連タグ:マルコによる福音書藤崎裕之
不条理なる死を不可知の光で中和せよ─キリスト教スピリチュアルケアとして─(90)+

不条理なる死を不可知の光で中和せよ─キリスト教スピリチュアルケアとして─(90)

せめてお金で解決できたらと思うことがある。そして、それは全く意味のない願望であると、打ちひしがれることもしばしばある。

普段、自らの信仰を振り返ることはあるにはあるが、どこまで真剣にやれているかといえば、疑問がある。特に罪を言葉で告白するというのは、実のところとても難しいのではないか。そう思えてならない。

わが生涯に罪あり、というのは当たり前であるが、では、例えばこの数日、月曜日から今日までに私はどのような罪を犯したのか。いろいろと考えてみるが、具体的なことは思い浮かばない。キリストに気持ちが向かわなかったとか、あまり祈らなかったとか、そういう抽象的なことは挙げられるが、具体的な罪を具体的な言葉で簡潔に伝えるとなると、それはかなり骨が折れる作業になってしまう。

旧約聖書には十戒というものが書かれていて、その存在自体は割と一般社会でも知られている。十戒は、出エジプト記20章に書かれた戒めである。十戒は、神がイスラエルの民に守るように命じた戒めであって、つまり神定である。人間が人間に対して取り決めた「法律」とは相当に違う。まずこの点が大事だ。

モーセの時代、つまり今から3千年以上前の戒めであるから、その時代の諸事情が反映されているといってはならない。神定というのは、どの時代においても、時代背景からその内容が吟味されるようなものではない。また、過去・現在・未来においても、神定はそのまま残るのだ。

では、そのようなものに対して、私自身がどのように向き合っているかというと、実は日頃から十戒を意識することはほとんどない。恐らく世襲のキリスト教徒として、幼い時から十戒の内容を何度も聞かされていると思うし、牧師時代には十戒について説教もしたし、講義もしたはずだ。

ではあるが、要するに、日常的に意識しているのかどうかは怪しい。怪しいが、改めて十戒を読んでみても驚きはない。実際に守れているかどうかはともかく、内容は自分にとってごく当たり前のことである。これらをしっかりと守るように誓えと言われても、重い決断が必要というわけではないのだ。誓えと言われれば、素直に従えると思う。

さて、イエスが旅に出ようとしたときに、ある人が走り寄ってきた。その人はひざまずいて、イエスに「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか」と尋ねた。ここから読み取れるのは、ある人が急いでその答えを得たいと願っていたということである。「永遠の命を受け継ぐ」ために何が必要か、私も知りたいと思う。

永遠の命という言葉は、キリスト教徒にとってなじみ深いものではあるが、さりとてジャストな答えはない。もちろん永遠に生き続けるということではなくて、いわば最高の命を生きるということである。永遠の命とは、過去・現在・未来において最良の答えと希望を見いだせるということだ。もちろん死後も含めてである。

そういう意味で、永遠の命というのはほとんど誰もが求めているものであり、同時にほとんど誰もがその答えを持っていない。もしかしたら、少しばかりの人は、永遠の命のかけらであれば、手にしているのかもしれない。

キリスト教徒としては、それは洗礼であるとか、キリストの体を与えられる聖餐であるとか、そういうものであろう。私にはそれ以上は回答不可能なのであるが、とにかくその答えをあまり先延ばしできないという意味では、少しばかり急がなければならないだろう。

人は重大な事柄については、その答えや解決を急ぐものである。なかなかじっくりとは向き合えない。向き合えないけれども「何とかしたい」という思いが、人を宗教世界に向かわせている。

大げさにいえば、今までの人生で何を得たとしても、それが全く無価値なものに思われるのが、永遠の命を味わうということだ。「今すぐ」には無理だろうと思いつつ、いつかは永遠の命に対する答えを持ちたい。問題は、その答えを得るには、私はいかにあるべきかということだろうか。あるいは、無為無策でもよいのだろうか。(続く)

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◇

藤崎裕之

藤崎裕之

(ふじさき・ひろゆき)

1962年高知市生まれ。明治から続くクリスチャン家庭に育つ。88年同志社大学大学院神学研究科卒業。旧約聖書神学専攻。同年、日本基督教団の教師となる。現在、日本基督教団隠退教師、函館ハリストス正教会信徒。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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