手足のないキリスト教伝道者として知られ、伝道団体「ライフ・ウィザウト・リムズ(手足のない人生)」の創設者でもあるニック・ブイチチさん(40)は、米国の教会に対し、手遅れになる前に悔い改める必要があると緊急の呼びかけを行うとともに、中絶やポルノ中毒、性的人身売買など、差し迫った社会問題に対して大胆に語るよう強く促した。
全米宗教放送協会(NRB)の年次大会に出席したブイチチさんは、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)の取材に応じ、「私は、(米国の)ほとんどの教会が思い違いをしていると思っています」と語った。
「私はリバイバルのためではなく、悔い改めのために祈っています。米国はこれ以上、神から祝福を受けるに値しないと思います。私たちは悔い改める必要があります。そして、物事から目を背けるのではなく、教会を次のような問題に向かわせるために整え、励ます必要があります。つまり、どのようにすればポルノ依存を避けられるのか、子どもを里子や養子に出さなければならない家庭に、教会は今どのように関わっているのか、といった問題です」
「(世界の)80億人に説教するのにロケット科学は必要ありません。数年前のように、教会が軍隊のように集まって、伝道の仕方を教え、路傍伝道することもできます。牧師が最近、自分の教会で次のように言ったのはいつでしょうか。『イエス・キリストの福音を誰かに伝えるときは、こう言ってください。これが3分間で証しをする方法です。イスラム教徒が、私たちは同じ神に仕えているのだと言ったとき、あなたがすべき反応はこうです』と。私たちはもう、そのような話すらしなくなっています」
78カ国を訪れ、80万人もの人々に福音を伝えてきたブイチチさんは、米国の多くの教会が直面している現状に懸念を示す。米国が差し迫った社会問題に直面している一方で、米国のかなりの数の教会が巨額の負債を負っていると指摘する。
「米国には、半分空っぽの建物(教会堂)を維持するために4980億ドル(約70兆円)相当の負債を抱える約10万の教会があります」とブイチチさん。その一方で、「里親や養親になってくれる人を待っている子どもたちが50万人もいるのです。私たちはこれでよいのでしょうか」と続けた。
教会は立ち上がり、イエスの「手足」として奉仕しなければならないとブイチチさんは言う。また、クリスチャン一人一人は、市議会や教育委員会、地域の他の政治委員会に積極的に参加し、自分たちの声を善のために用いるべきだと促す。
「クリスチャンは教育委員会に行く必要があります。学区で起こっていることについて不平を言うのではなく、教会をそこに参加させてください。私は本当に信じているんです。メディアや政治、ビジネスにおいて、クリスチャンが暗闇の光となることを」
ブイチチさんはまた、クリスチャンも陥っているであろうポルノ中毒や性的人身売買などデリケートな問題について、牧師が説教の中で取り上げる重要性も強調した。「これは問題です。私たちはこのことについて話し始める必要があります。話し合うべきことはたくさんあります」
「このことで、神の民である私たちが覚醒することを願っています。(神の民が)かつてないほど一致し、自国のために祈り、自国を導く神の人のために祈り、自国を神のもとに戻してくれることを」
ブイチチさんの福音宣教に対する情熱は、社会に前向きな変化をもたらすための継続的な働きにも表れている。
ブイチチさんが取り組むプログラム「チャンピオンズ・フォー・ザ・ブロークンハート(心の傷ついた人々のためのチャンピオン)」は、クリスチャンが少人数制のグループでトラウマや痛みを抱える人々をサポートし、癒やし、キリストにある力を見いだすことを手助けできるよう訓練するものだ。
「私たちは、退役軍人や里子に出された子どもたち、誰にも話したことのない中絶による心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える女性たちに心を寄せる教会に通う普通の人たちを訓練しています」
「米国の教会は、救われた人々を癒やすことに時間を使っていないと思います。人は、癒やされて初めて完全な存在になります。力は心が満たされた人から出てくるもので、そうした人が困っている人を助けることができます。それが重要だと考えます。私たちは基本に立ち返る必要があるのです」
しかし、伝道は家庭から始まるとブイチチさんは言う。4人の子どもの献身的な父親であるブイチチさんは、子どもたちとのコミュニケーションやオープンな対話の重要性を話し、子どもたちが聖書的な価値観を持てるよう、聖書的な動画や証しなどのリソースを利用することを保護者に勧めた。
ブイチチさんはまた、性自認や性的指向といった論争の的になる課題に取り組む人々に拍手を送り、こう続けた。「私は声を上げているレムナント(残りの者)に感謝しています。出て行って、真理を伝えてください」
「私たちは、もう少し勇敢に振る舞わなければなりません。また、人々に愛における真理を伝えなければなりません」
ブイチチさんは、オープンなコミュニケーションが強い家庭を築く鍵だとし、子どもたちが日々愛され、大切にされ、励まされていると感じられる環境づくりが重要だと続けた。
「米国では、女の子の3人に1人、男の子の5人に1人が性的虐待を受けています。考えてみてください。信じられないことです。至る所でフェンタニル(麻酔用鎮痛剤、米国では乱用により死者が出るなど社会問題化している)がまん延しています。子どもたちはパーティーでハイになったり、ひどく酔ったりして命を落としています。私たちは目を光らせ、もう少し厳しくしなければなりません。でも、子どもたちに真実を伝えなければなりません。子どもたちと会話をするのです」
家族観が大きく変容する現代社会で、強い家族の絆を育むことに投資するよう、ブイチチさんはクリスチャンに促す。
「悪魔は皆さんの顔を見て、堂々と笑いながら、かつてないほど喜んでいます。ですから、祈ってください。祈り方を学んでください。子どもたちと絆をつくり、いろいろなことを教えたり、見せたりする方法を学んでください。毎日、言ってあげてください。『あなたは素晴らしい子だ』と」
「大きな夢を持つように言ってあげてください。あなた(親)を乗り越えてもっと先に行くように。あなたが言わなければ、子どもたちはそうしないからです」