「伝道はコミュニケーションです。相手に伝わらないと意味がありません。相手が理解してくれないと意味がありません」
そう話すのは、米西海岸のワシントン州で20年前にリンウッド日本人ファミリー教会を開拓した金田豪牧師。中学生の時にクリスチャンとなり、大学卒業後、8年間の社会人生活を経て、カナダの神学校へ。神学校卒業後に、同州最大の都市シアトルの北約25キロに位置するリンウッドで教会開拓を始めた。
日英バイリンガルで礼拝をささげているリンウッド日本人ファミリー教会では、日本からの留学生を中心に、毎年イエス・キリストを信じ救われる魂が起こされている。今では、新しくクリスチャンになった人を日本に送り返すのが、大きな働きの一つとなっているという。
この20年で救われた人は、実に50人近くに上る。金田牧師はこの間、キリスト教を全く知らない日本人にも、グッドニュース(良き知らせ)である福音が「伝わる」「分かる」方法を模索してきた。
試行錯誤と祈りから生まれた金田牧師の「伝道トーク」。2020年には、50ページ弱の小冊子『あなたは、めっちゃ愛されてる!』としてまとめられた。今年春には第3刷が発行され、求道者へのプレゼントや伝道の学び用のテキストとして、さまざまな場面で用いられている。
「今は伝道が大好き」と言う金田牧師だが、救われてから長らく、伝道に対しては苦手意識があった。クリスチャンになったことは一度も後悔したことはないが、信徒時代は伝道を避けて通ってきたという。神に押し出されて教会開拓を始めたときも、最初は苦手意識を一生懸命振り払いつつの伝道だった。
金田牧師が開拓時に最初にしたのは、学生時代に教えられ、唯一知っていた「四つの法則」のトラクトを使っての伝道だった。「四つの法則」は、キャンパス・クルセード・フォー・クライスト(CCC)の創立者・故ビル・ブライト氏が作成した代表的な伝道トラクト、またその伝道メッセージだ。
「四つの法則」は、「神様はあなたを愛しています」というメッセージから始まる。金田牧師は「聖書のメッセージをひと言で表すような素晴らしいメッセージです」と言う。しかし、実際の伝道の現場でそれを伝えても、多くの日本人は「そうなんだ!」と驚くよりも、「ふーん、それで?」といった反応しか示さない。
また、「四つの法則」の2つ目のメッセージ「人には罪があります」についても、「私は犯罪人じゃない」と思って拒絶してしまう人がほとんど。「四つの法則」を使っていたときは多くの場合、話しても相手の表情に変化が見られることは少なかったという。
しかし、『あなたは、めっちゃ愛されてる!』でまとめた話を伝えると、相手にとっては今まで聞いたことのない聖書のメッセージに変わりはないものの、反応は違うという。自分自身で考え始める様子を見ることができ、人体の神秘から神の創造について話したり、罪を自己中心だと説明したりすると、うなずきながら話を聞いてくれる。
『あなたは、めっちゃ愛されてる!』で伝えているのは、1)全てを造られた神様、2)人を造られた神様、3)あなたを造られた神様、4)罪を犯した人、5)十字架で死なれたイエス様、6)よみがえられたイエス様、7)あなたのためのグッドニュース――の7つのメッセージ。
教会や留学生伝道プログラムに未信者の人が来ると、金田牧師は、この内容を1回で話すこともあれば、数回に分けて話すこともある。多くの人はキリスト教に全く触れたことがないため、最初は「へー、そんな考えもあるんだ」というような反応だという。しかし、金田牧師は、繰り返し伝えていく中で、神が彼らの宗教に対する偏見を取り去り、心を開いてくださるのが見えてくると話す。
「『四つの法則』を使っていたときの私は、こちらの伝えたいことを一方的に伝えているだけでした。『あなたは、めっちゃ愛されてる!』の内容は、どうすれば相手に伝わるか、どうすれば相手が分かるかを考え、祈った結果、与えられたものです」
『あなたは、めっちゃ愛されてる!』は、日本国内ではアマゾンやイーグレープ、教文館などのオンラインショップで購入可能(税込み660円)。米国を含む海外では、リンウッド日本人ファミリー教会の専用フォームから申し込みができる(8ドル、米国以外の国は別途送料発生)。