昨年、取引先の複数の大手金融機関などに対し計100億ドル(1兆2700億円)余りの損失を与えたとされる米アルケゴス・キャピタル・マネジメント社の創業者で、クリスチャン投資家として知られているビル・ファン氏(58)が4月27日、証券詐欺など計11の罪で逮捕・起訴された。
牧師家庭出身のファン氏は、スマホアプリ「聴くドラマ聖書」の制作を手掛けた日本G&M文化財団の米国法人「グレース・アンド・マーシー財団」の創設者。米フラー神学校の理事なども務め、同校や米首都ワシントンの聖書博物館など、さまざまなキリスト教団体の大口献金者として知られていた。
米司法省は発表(英語)で、ファン氏が「アルケゴス社のポートフォリオに含まれる公開有価証券の価格を違法に操作し、世界の主要な投資銀行や証券会社を欺くための、相互に関連した数多くのスキームに関与」したとしている。
アルケゴス社の最高財務責任者(CFO)であったパトリック・ハリガン氏(45)も同様の罪で逮捕・起訴された。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(英語)によると、ファン、ハリガンの両氏はこの日、マンハッタン連邦地裁に出廷し無罪を主張。ファン氏は1億ドル(約127億円)、ハリガン氏は100万ドル(約1億2700万円)の保釈金を支払い保釈された。
ファン氏の代理人であるローレンス・ラストバーグ氏は、米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)に対し、ファン氏に対する申し立ては「大げさ」であり、起訴は「事実においても法的にも全く根拠がない」ものだとし、ファン氏には「いかなる不正行為もない」と主張した。ハリガン氏の代理人であるメアリー・マリガン氏も同紙に対し、ハリガン氏は「無実であり、無罪を勝ち取るだろう」と述べた。
連邦検察によると、アルケゴス社のヘッドトレーダーであったウィリアム・トミタ氏(38)と、最高リスク管理責任者(CRO)であったスコット・ベッカー氏(38)はスキームへの関与を認め、現在、司法省側に協力しているという。
米ブルームバーグ通信(英語)によると、5月19日に行われた公判前手続きには、ファン、ハリガンの両氏も出廷し、公判日程の調整をするなどした。司法省側は、1~2カ月の公判になる見通しを示した上で、来年の開廷を提案したという。