景教碑の頭部には幾つかのデザインが刻まれています。
第一に炎です。十字の上のデザインは炎と見受けます。これはおそらく聖霊の臨在の炎ではないかと考えます。聖霊は人格者であり、景教文書には、聖霊は神を証しする方と書いてあります。人の罪を焼き尽くし、神の奉仕者へと変えるのが聖霊の働きです。使徒2章3節には炎のような舌が一人一人にとどまったと書かれています(ルカ3章16節も参照)。人を変え、新しい神の力を着せられるのも聖霊です。
南インドの使徒トマス教会のシンボルとして、十字の上に鳥が描かれています。イエスがヨルダン川でヨハネから洗礼を授けられたとき、イエスの頭上に聖霊が鳩のように臨まれたという箇所があり(マタイ3章16節)、鳩を描いたと考えます。
続いて十字の各先端の◎についてです。十字の先端には、◎が各3個描かれています。これはおそらく三一の神を表していると考えます。東方景教徒たちは聖書の神を三一と表記し、父・子・聖霊を書くときには三一と表記する箇所が見受けられます。
下の文字は景教碑からの抜粋ですが、父なる神、メシア、聖霊である浄風には、それぞれ三一の文字が書かれています。もう一つは、シリア語(右から書き読みします)とシリア語から漢訳した大秦景教三威蒙度讃の中の文字で、共に父子浄風と表記しています。
3つ目は、雲のようなデザインです。十字の下側の左右に描かれています。これは何を表現しているのでしょうか。聖書には、神が雲とともに顕現される箇所があり(出エジプト記40章34~38節)、神が顕現されるときの臨在を表現したものと考えます。聖書には他にも、イエスが雲に包まれて天に上げられたとありますし(使徒1章9節)、イエスが再び天から地上に来られるときは、雲とともに再臨されるとも書いてあります(ヨハネの黙示録1章7節ほか)。
このように見ますと、景教徒たちの信仰は聖書に基づいたキリスト中心であり、神認識は三一神信仰であったといえるでしょう。
※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
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