景教碑の頭部には幾つかのデザインが刻まれています。
1. 頭部の龍と下部の龍の子のデザイン
2. 十字
3. 十字の上の火炎
4. 十字の先端の二重丸が各3個
5. 十字の下の7つのデザイン
6. 雲形のデザイン
7. 花のデザイン
この中の頭部の龍について書きました。
1. 頭部の龍(現代中国では「龙」と書き、「竜」は古代文字、台湾では「龍」、日本の聖書は「竜」が多い、文語訳聖書では「龍(たつ)」と表記している)
聖書では特にヨハネの黙示録12章で、王冠のついた赤い龍は悪魔・サタンの別称で、主なる神様に敵対し、人間を惑わす悪とされています。しかし東アジアの中国では、龍は想像上の動物で皇帝の権威の象徴であり、吉祥と運気をもたらす最高の権威を持つ動物として崇められています。衣服にも龍のデザインが描かれていて、中国各地を歩き回ると至る所に龍の文様が描かれています。食器や陶器、建築物にも見受けられ、日本でも水の守護神の竜神といって偶像崇拝されています。
隋や唐の時代、龍の爪の数は3本まででしたが、明清の時代になると、爪の数で権威が決められました。5本爪は皇帝しか描かない権威のしるし、4本爪は皇族や地方の王の衣服に描かれ、3本爪は役人の礼服に描かれていました。ちなみに日本の高松塚古墳の青龍の爪は3本です。
中国の陶器工房の皿には4本爪がデザインされていました。
景教碑だけでなく、たくさんある石刻芸術の書道の石碑類にはどれも頭部に龍が描かれています。景教碑は唐の時代に作られているので、龍の爪は2本です。その爪で、鉱物では最高の宝玉(ギョク)を中央の部分につかんでいます。玉はダイヤモンドや真珠よりも高価な最高の宝で国宝といわれ、龍と玉は一対であり、皇帝こそ世のものすべてを入手したという欲望の表れといえましょう。
ちなみに黙示録21章では、新しい天と新しい地の都の城壁が、多くの宝玉で造られていることを伝えています。使徒ヨハネは、新しい都を幻で見て感嘆したことでしょう。私たちもそこに入っていけるという希望があることは、最高の喜びでもあります。
続いて、景教碑の下の動物は亀ではなく龍の子のビシ(贔屓は「ひいき」ではなく「ビシ」と呼ぶ)といわれています。龍には子が9匹いて、1番目がビシであると伝えられています。
日本人はこの石の動物を見ると昔から亀とか、亀台と呼んでいました。それは亀をよく見かけるからです。しかし、中国に行って初めてその意味も分かるようになりました。下の動物は龍の子ですから龍であって亀ではありません。
そのようなことから、聖書の世界観と中国思想の文化は大きく異なりますので、聖書の視点のみから愛のない正義心で語るとなると、宣教が進みにくく誤解も生じるかと考えます。
※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
※ 2021年4月12日に内容を一部修正しました。
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