<本文と拓本>文字32(1082+32=1114)
代宗文武皇帝恢張聖運(代宗文武皇帝は聖運を恢張し)、従事無為(無為に従事す)。毎於降誕之辰[註](毎<常>に降誕の辰に於いては<皇帝の誕生記念日で天長節のこと>)、錫天香以告成功(天香を賜いて以て成功を告げ)、頒御饌以光景衆(御饌を頒ち、以て景衆を光かす)。且(且つ)
<現代訳>
代宗文武皇帝(726~779、在位762~779。第11代皇帝)は、唐帝国の回復発展に無為に従事し、その降誕記念日には皇帝が景教徒たちに香を贈られ、その事業の成功を告げ、多くの食物を景教徒に贈られたので景教は輝きました。
[註]降誕については『旧唐書』(これは唐の成立の618年から滅亡の907年までを記載)にも出ます。皇帝の誕生日を祝うのは729年8月5日の玄宗皇帝から始まりました。初めは千秋節と呼ばれ、748年には天長節と変更、国を挙げて盛大に祝われました。日本の天皇の誕生日が天長節と呼ばれる起源はここにあります。
<解説>
代宗は郭子儀らと占拠されていた長安や洛陽を奪回し、財政再建のために塩の専売化に取り組んだことは知られています。政情が落ち着き、皇帝の誕生祝会には多くの下賜が景教にもあり、それによって平安に過ごす日々が続いたことが伺えます。
※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
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