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カジノ法案とキリスト教 国内・国際的な視点から考える

2016年12月6日08時09分 記者 : 行本尚史
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カジノ法案とキリスト教 国内・国際的な視点から考える +
カジノでスロットマシンに興じる人々(写真:Access-jawiki、一部加工)

2日に衆議院内閣委員会を通過したカジノを含む「統合型リゾート施設(IR)」整備推進法案(カジノ解禁法案)を、キリスト教の観点からどのように考えるのか?国内および国際的な視点から集まったクリスチャンや教会組織の声は、どれもカジノやギャンブルに批判的だ。

カジノ法案は信仰的に正しいのか:ある牧師の声

ギャンブル依存症の自助グループに月3回ミーティング会場として場所を提供している日本キリスト教団牛久教会(茨城県牛久市)の金子敏明牧師は、2日、本紙からのメールによる取材に対し、同日に衆議院内閣委員会で可決されたカジノ法案について、これはギャンブル依存症の新たな温床を作り出すだけだとして反対していると回答した。

「すべてギャンブルというのは『働いた対価として報酬を出す』ものではありません。その逆に『人間を正常な判断を麻痺させて、金を搾り取る』装置に他なりません。そのようなものが信仰的にみて正しいとは思えません。自民党にもキリスト教信仰を持つ国会議員はおられるはず。なのになぜこの議案に反対しないのか、彼らの信仰を疑います」と、同牧師は本紙に答えた。

シンガポール:カジノにキリスト教会などが反対

シンガポールでは、2004年3月に政府がカジノの建設を発表した時、カトリック教会やシンガポール教会協議会(NCCS)、イスラム教徒の団体が、その社会的な悪影響を理由に力強い非難を表明したが、同年12月に同国政府はカジノの合法化を決定し、2006年にカジノ管理法が制定されてカジノが合法化された。

さらに、シンガポール政府がカジノも含む統合型リゾート(IR)の開発の実現可能性を探っていると発表したのに対して、NCCSは2010年、1.カジノは美徳を傷つける、2.カジノはより多くの社会悪をもたらす、3.カジノを持つことはわが国の国益に合わない、としてカジノに反対する声明文を発表した。しかし同年、同国のIRは開業された。

キリスト教ロビー団体がカジノに対する提訴を歓迎:オーストラリア

一方、オーストラリアのクリスチャントゥデイは今年の10月26日、「ACL(オーストラリア・クリスチャン・ロビー)、ギャンブルの改革を改めて呼び掛け クラウン・カジノ裁判がスロットマシンの害悪に光を当てる」と題する記事を掲載した。

それによると、オーストラリア南東部の都市・メルボルンにあるカジノ施設であるクラウンカジノとスロットマシンの製造業者であるアリストクラットに対する連邦裁判所での画期的な提訴を、同国のロビー団体であるACLが歓迎したという。

「ACLは、スロットマシンが人を中毒にさせるように設計されており、賭ける人を負けさせるために作られているそのやり方に光を当てようと裁判所に提訴した、スロットマシンの元中毒者であるショニカ・ガイさんをたたえます」と、ACLの統括主宰者であるライル・シェルトン氏は語った。

「ギャンブルをする人たちは理にかなった勝ちを期待できるという、スロットマシンの所有業者たちによる主張は、人を誤らせるとともに、スロットマシンが所有業者に有利に調整されているというそのやり方を反映していないのです」

オーストラリア政府の生産性委員会によるギャンブル問題に関するある報告書によると、ギャンブルの結果、約50万人のオーストラリア人が金銭的なストレスや精神病、人間関係の崩壊を経験しているという。

「オーストラリア人は年間120億ドルを、人々が自分たちのお金を失うように中毒させるよう設計されているスロットマシンに費やしているのです」と、シェルトン氏は語った。

「これは倫理的に弁護の余地がないビジネスモデルであり、他のいかなる産業でも容認されることはありません。スロットマシンによって引き起こされる被害を制限する簡潔な措置を行う時が来ているのです」

シェルトン氏は、オーストラリア連邦政府がスロットマシンを1回回す際の掛け金を1オーストラリアドルに制限し、スポーツのギャンブル広告に干渉してそれをやめさせるように求める、ギャンブル改革の支持者たちによる呼びかけを新たに行った。

「私たちは(オーストラリア首相の)ターンブル政権に対し、スロットマシンの害悪に対する社会問題に耳を傾けるとともに、ニック・ゼナフォン上院議員やアンドリュー・ウィルキー議員、そしてギャンブル改革同盟と共に活動し、家族や地域社会に対して引き起こされた被害を食い止める改革を達成するよう強く求めます」と同氏は述べた。

米国:ラスベガスの司祭とノースカロライナ州のカジノ、そして聖書

やや古い記事になるが、米クリスチャンポストは2011年10月12日、米国ネバダ州ラスベガスのカトリック司祭であるケビン・マッカリッフェ氏がギャンブル中毒のために聖エリサベス・アン・セトン教会から65万米ドルを盗んだことを認め、有罪判決を願ったと報じた。

一方、同紙のコラムニストであるマーク・H・クリーチ牧師は2013年10月23日付の同紙で、米国ノースカロライナ州に新しいカジノが造られるというニュースとの関連で、ギャンブルと聖書がそれについて語っていることについて記した。

その中でクリーチ牧師は、「人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか」(新約聖書 マルコによる福音書8章36節)などを引用し、こう結んだ。

「私たちの教会や文化全般において、ギャンブルに対する強力な道義的反対を新たにするために、これ以上に大きな理由はないのではないでしょうか?なぜならそれは、(ギャンブルをする)個人が…私たちが暮らしている文化そのものが…自らの魂を失ってしまうまで…私たちがまさに(米国のジャーナリストである)ウォルター・クロンカイト氏が言ったもの…善良できちんとしたアメリカ人としての自我を失うまで…心底、悪であり、さらにもっと、もっと、もっと、そしてもっと多くの悪を生じさせるからです」

マカオ:カジノ文化のただ中にある教会

一方、米国にオフィスを置くメノナイト派のミッション団体「メノナイト・ミッション・ネットワーク」は2010年6月9日、「マカオのギャンブルは教会にとって"幸運"ではない」と題する英文記事を公式サイトのページに掲載し、カジノがマカオ・メノナイト教会を含むマカオの社会に及ぼす悪影響を詳しく伝えた。

「ぜいたくに見せびらかされている富が運任せのゲームに依存し、そこでは勝者が敗者を犠牲にして繁栄している」と、同ネットワークはマカオがもつ対照性について記した。「暴利をむさぼるこの文化のただ中に、マカオ・メノナイト教会はあり、その指導者たちと教会員たちはカジノ文化の中でどのようにすれば信仰に忠実な生活を最も良くすることができるのかに取り組んでいる」

中産階級や労働者階級が多いこの教会では、ゲーム産業で働かない人たちは収入を得るために労働時間が長くなり、教会のための時間がほとんど取れなかったという。

同ネットワークのトビア・ベイス氏によると、責任感のある1人の女性信者が、母親や弟の面倒を見るためにお金を稼ごうとカジノのディーラーとして働き始めた後に突然いなくなってしまったという。この女性は自分の仕事を恥ずかしいと思い、教会を避けたのだという。

政府やカジノは観光客のためにこの都市を美化しようと活動するため、ギャンブルが持つより暗い側面の証拠—貧しい人たちーは容易には見えないと、同ネットワークはそのページの終わりに記した。「ホームレスは見えません」と、ベイス氏は語った。「けれども彼らはそこにいるのです」

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