リ・スンファン氏は、「北朝鮮の核問題・エネルギー問題を解決するために、経済的にアプローチする方法もある」と述べ、「例えば、南北とロシアの間のガス・パイプラインに関する協力といったような形で、北朝鮮のガス発電所に協力をすることで、核に依存せずにエネルギー問題を解決できる、そういった方法を提供できるという意味で、国際的な経済協力を通じて北朝鮮の核問題を間接的に解決する方法が1つあり得ると思う」と付け加えた。
「本日のこの会議のように、国とは関係なしに市民が国家主義を超える連帯をすることで、平和共同体を作っていく。そういった努力も、その中に北朝鮮を含めることで、北朝鮮との関係の中で、自分たちの軍事主義・国家主義を制御して緩和させる、そういった機会を提供できるのではないか」とリ・スンファン氏は提言。そして、「そういった意味で、こういった場に北朝鮮が参加できるようにする努力を忍耐強く、いくら時間がかかっても、必ずわれわれがやらなくてはならない目標であると考えなくてはならない」と訴えた。
「こういった3つの方法以外にもう1つ方法があるとすれば、それは軍事的なオプションである。しかし、軍事的オプションはわれわれが使い得る方法でもないし、代案にも決してなり得ない」と、リ・スンファン氏は述べた。
「問題は、韓国の現政権と、おそらくアメリカと安倍政権は、朝鮮半島の軍事的衝突について、自分たちに不利だというふうには考えない可能性があるのではないかと思う」とリ・スンファン氏は指摘した上で、「もし政府が朝鮮半島の軍事的危機を緩和させる上で積極的に望まなかった場合は、その問題について積極的な努力をしなくてはいけないのはわれわれ宗教者と市民たちであるというふうに考える」と語った。
リ・スンファン氏は、問題を解決する上でどこから始めるべきなのかということと関連して、「朝鮮半島の問題を解決するのは当事者、特に関連した政府が問題解決の方法についてないがしろにしているので、問題が深刻になっている。そして軍事的危機を伴う状況にまで至っているといえる。それを政府にやれと積極的に言う必要がある」と述べた。
「つまり、相互に脅威を与えている現状を変化させていかなくてはいけないということだ。その脅威の根源になっている1つは、韓国とアメリカが毎年行っている、最先端の戦略兵器を伴った軍事演習である。それも、相手を先制攻撃すると言った軍事演習だ。そしてもう1つは、核とミサイル能力の増強である」とリ・スンファン氏は指摘した。
「われわれは、韓国とアメリカが最低限、北朝鮮を先制核攻撃するといった内容を外して軍事演習を縮小あるいは中断せよというふうに要求しなくてはいけない」とリ・スンファン氏は主張。「そして北朝鮮に対してはこれ以上の核開発・核能力を拡張することをやめよというふうに言う必要がある。最低限、お互いに脅威を与えるということをやめてこそ、朝鮮半島では初めて平和体制、そして真の非核化のための交渉を始めることができると思う」と述べ、「こういった最低限の相互脅威を中断する措置を取らずして北朝鮮に対してのみ一方的に核兵器を放棄せよと言っても、北朝鮮はそれを聞き入れないだろう」と付け加えた。
「北朝鮮に核を放棄させたければ、最低限、われわれが相手に対して向けている脅威を一部減らさなくてはいけない。そういった観点から、相互への脅威を減らす努力について、宗教界、そして市民社会が、朝鮮半島の軍事的な脅威を深刻に考え、直ちにこういった問題について関心を持ち、乗り出さなくてはいけないと思う」と同氏は述べた。
「そして、そのために努力する方法というのはさまざまなものがある。韓国の宗教界・市民社会といった観点からすると、国際的な連帯を強化する。そして韓国国内では与野党のねじれ現象を起こして、政府の一方的な独走をコントロールし許さない」とリ・スンファン氏はその方法を提起しつつ、「今私たちが手をこまねいていては、朝鮮半島の危機はとても深刻になる。今後2年、3年は非常に深刻になるだろう」と懸念を示した。
「北朝鮮が第2次攻撃能力を持つまでの時期というのが、朝鮮半島においては軍事的には非常に危険な時期だ。この期間を逃さず、東アジアの宗教界と市民社会は力を合わせて平和のための努力を進めていかなくてはいけない。そうやって初めて朝鮮半島の戦争を防ぐことができる」と、リ・スンファン氏は結んだ。
その後、パネリストの1人であるチャン・フェンレイ氏(中国・中国人民大学教授、中国宗教界平和委員会委員)は、「中日韓三国の宗教界は現在一層困難かつ偉大な責任と使命を担っていて、手を携えて東アジア地域の友好、平和と安定を共同で守るべきです。東アジア地域は共同の文化伝統と現実的利益があるので、善隣友人、平和共存のモデルになるべきで、軍備競争や軍事対抗の場になってはいけません」などと意見を述べた。
続いて、山本俊正氏(WCRP日本委員会理事、同和解の教育タスクフォース責任者、関西学院大学教授、元日本キリスト教協議会[NCC]総幹事)は、「私の提案は、(朝鮮)戦争の終結に最大の優先順位を与えることです。講和のための、米朝間の直接交渉が最優先されるべきだと考えます」などと語った。
さらに、韓国の民族宗教である天道教の研修機関で院長を務めているイム・ヒョンジョン氏(韓国・慶熙大学校教授)は、「東北アジア平和共同体の実現は、この時代を生きる全ての宗教者への最大の課題であるともいえる。そして、それを実現するための第一歩は、朝鮮半島における緊張の緩和から踏み出されるべきである。そのためにはまず、北朝鮮に対する朴槿恵政府の強硬方針にどうにかして歯止めをかける方法を模索しなければならない」と語り、「宗教界の連合運動が必要だということを伝えたい。相違を乗り越え、さらに日本と中国の宗教者たちが一緒に行動すれば、その効果はさらに増していくのであろう。それによって多くの人々が夢見てきた日韓中平和共同体の理想が現実化されることを願う」などと付け加えた。