私たちはスポーツから多くのことを学びます。ある時、米国のワシントン州で米国北西部高校女子ソフトボール大会が行われました。中央ワシントン州代表と西部オレゴン州代表との試合が行われたときのことです。
西部オレゴンが2対0で負けていた2回に、バッターに立ったサラ・ツコルスキ選手が選手生活で初めてのホームランを放ちました。塁にいた2人の選手がホームに帰ってきました。サラ選手に目をやると、なんと彼女は1塁ベースにしがみついて倒れているのです。片足の前十字靱帯を痛めて激痛のため全く立ち上がることさえできなくなっていたのです。
西部オレゴンチームの監督がサラの代走者を入れたら、サラのホームランはどうなるのかと審判に聞くと、ホームランは取り消され2塁打になるということでした。さらに、サラのチームの誰かがベースを回れるように彼女に手を貸すと、彼女は試合から離脱になるというのです。せっかく逆転のホームランを放ち、サラにとっては生まれて初めてのホームランであったのが、一転して悲劇となったのです。
チームの誰もががっくりしていたその時のことです。相手チームのマロリーという選手が審判のところに来て、自分たちがサラを担いでベースを回ったらどうなりますか、と尋ねるのです。審判は最初信じられないような顔をしていましたが、相手チームがサラを持ち運ぶのならば、それはルール違反ではないと言ったのです。
そこでマロリー選手ともう1人の相手チームの選手が倒れているサラを起こして彼女を2人で担いで2塁ベース、3塁ベース、そしてホームベースにサラの足を確実にタッチさせて、ホームランを成立させたのです。
相手チームのマロリー選手というのは米国北西部で最多ホームランを打っている選手でした。マロリー選手ともう1人の選手がサラを担いでホームベースに向かって歩いている途中、サラのチームメイトも、それを見ていた観客たちもいつしか頬から熱いものが流れていました。
大事な試合になんとしても勝ちたいというのが普通の気持ちですが、このような行動に出たマロリー選手の高潔な心に誰もが心打たれたのでした。多くの人に試合の勝ち負けよりも、人生にはもっと大切なことがあることを教えてくれる結果となりました。
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