なくなる食物のためではなく
元JTB勤務 香川和生
「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたもあなたの家族も救われます」(使徒16:31)
アルコール依存症(アル中)は、悲劇的な病気です。それは、飲酒によってあらゆるものを失いつつ死んでいく病気だからです。まず社会的な死に始まり、家族関係の死があり、そして、その肉体的な死によって完結するのです。
20年ほど前ですが、私は妻の実家の村の小さな教会を訪れました。すでにアルコール依存症という死の病にとりつかれていた私でしたが、求める心を与えられて教会の門を捜し叩いたのです。応対してくださった老牧師は、泥酔して教会に闖入(ちんにゅう)した私に驚きながらも決してとがめることなく、一つの御言葉を示してくれました。
イエスはまた彼らに語って言われた。「わたしは、世の光です。わたしに従う者は、決してやみの中を歩むことがなく、いのちの光を持つのです」(ヨハネ8:12)の御言葉でした。
その教会に通い続けることはありませんでしたが、その後、救いを受けて16年目、ある教会から招かれ証しする恵みを与えられて、主が私にしてくださったことをお話しさせていただきました。その時、使わせていただいた講壇がなんと、驚くべきことに16年前、私に聖句を示してくださったあの老牧師から引き継がれたものであったと知ったとき、あらためて主の恵みに心から感謝しました。
私が救われ、酒害から解放されたのは神戸の大震災の年でした。真夜中ごろ、パウロとシラスが神に祈りつつ賛美の歌を歌っていると、ほかの囚人たちも聞き入っていた。ところが突然、大地震が起こって、獄舎の土台が揺れ動き、たちまち扉が全部開いて、みなの鎖が解けてしまった(使徒16:25、6)。肉体は酒にとらわれながらも教会に集い、祈りつつ賛美歌を歌っていた私を、イエス様は深く憐れんでくださったのだと感謝しています。
酒害から解放されて社会生活にも復帰できてから、「十字架の血で贖(あがな)われて罪を赦(ゆる)されたこの身。新しい命と人生の全てを主の御手に委ねます」と祈った結果、50歳で退職の導きを与えられました。あの頃、息子もまだ小学生で経済的心配は重いものがありましたが、「神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます」(マタイ6:33)のお約束にすがって決断しました。
その後、学校関係のボランティア活動の中で主の恵みを伝えさせていただけるような働きを与えられましたが、大きな壁に直面したのです。「学校は公共の場であるから、聖書の話は控えていただきたい」との指摘でした。悩みと祈りの中にあったある日、息子が「お父さん、教科書に聖書のことが書いてあるよ」と、国語の教科書を見せてくれたのです。
そこには、「初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった・・・」(ヨハネ1:1)、これらは聖書の言葉だ、とあったのです。何百人もの方々の前で、「ここは学校ですから、僕のような者がつまらない話をするより教科書を読みます」とそのまま教科書を読み上げ、堂々と福音をお伝えすることが許されました。主がしてくださったことは、「ほかにもたくさんあるが、もしそれらをいちいち書きしるすなら、世界も、書かれた書物を入れることができまい」(ヨハネ21:25)、と私も思います。
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【書籍紹介】
カレブの会編『この時 聖書を開いた―31人に訪れた神の祝福―』
私たちはみな、退職後のさまざまな不安を抱えています。夫婦や家族関係の在り方、体力の衰え、病、経済のこと、伴侶との離別、孤独等々。この世の人々が行く同じ道を歩みます。「夢」がコインの表だとすれば、弱さを味わう「軟着陸」はその裏面です。幸いなことに、この弱さは私たちを成熟へと導いてくれるだけでなく、しばしば夢と使命を与え、御国を広げる道へと導いてくれるのです。
現役で働いている方にとっては、示唆に富んだ言葉に、生き方の確かなヒントやアドバイスが与えられます。同世代の人にとりましては、生きる勇気や力が湧き上がり、その励ましを共有できる本です。
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目次
巻頭言 約束を信じた人々 「カレブの会」代表 小川 吾朗
私が教えられたこと①
一章 愛・希望・勇気を人間関係から学んで
営業経験を生かした人脈造り 市村昌三郎
古里伝道を目指して 遠藤 誠一
なくなる食物のためではなく 香川 和生
三つのチャレンジ 北原 祥光
聖句 隣人を愛しなさいは、私の人生の永遠のテーマです 佐藤 文紀
教育の原点は愛にあり 原田 浩司
仕事と人生 本田 英一
キリストに接木されて 山本 文夫
主ご自身が、私たちの心を慰め強めてくださる 横倉 順治
仕える者に 吉田 富次
私が教えられたこと②
二章 クリスチャンビジネスマンの使命を与えられて
三回のリストラからの奇跡的な解放 秋山 幹生
定年ではなく、墜落による退職とその後 伊藤 博康
一所懸命から一生懸命へ 志田 保夫
クリスチャンビジネスの原点 棚沢 英樹
神様が示される道を求めて 田宮 清
私は〝スルメ〟 根田 裕道
存在感のある人になる 八尋 隆幸
主の恵み・世と誠実にかかわる 山田 貫司
権威に従う 星野 隆三
私が教えられたこと③
三章 主と共に夢実現の道を歩んで
いつも相談に応じてくださる神さまに感謝! 伊藤 紘一
クリスチャンの「コレクティブハウス」を創ろう 江波戸啓悟
神様の深いご配慮に守られて 加々美 要
退職経験から学んだこと─主の救いと導きに感謝─ 神山 武
数々の試練を通して与えられた教訓 門谷 晥一
困難を極めた就職活動・悪戦苦闘の日々と神様の恩寵 来間 幸夫
御言葉が示すミッションとビジネスの成功法則 田口 誠弘
私たちの心は燃えていたではないか 谷 雅史
傘寿を迎えて 西山 久生
ビジネス経験が退職後の別世界に生かされる 畠山 義則
「主と同行二人」で歩む 藤田 達雄
主の恵みに生かされて。リタイアの前、直後、そして今 吉野 輝雄
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カレブの会
切り株から芽を出す「カレブの会」のロゴマークは、リタイア後も御言葉の約束を信じ、それぞれが置かれた場所で、豊かな実を結ぶ現代のカレブのような人々のスピリットを表現している。「主から夢を頂き、夢の実現のために互いに助け合う」こと、「人生のソフトランディング(軟着陸)を助け合う」ことを目的に2006年12月に活動を開始。そのビジョンは宇都宮、仙台、西宮へと、御霊の風に乗って運ばれ、今ゆっくりと広がり続けている。