米国や豪州で拡大している創造論。日本で長年創造論を唱えてきた宇佐神実牧師は、「聖書はそのまま信じるのに値する書物と確信している」と話している。創造論は創造についてのみのものでなく、聖書を正しく理解するための土台という。
宇佐神牧師の実父である宇佐神正海氏は、日本における創造論の草分け的存在。一九七八年に「聖書と科学の会」八六年に「創造科学研究会」を創設した。父親の影響もあり、高校生の頃から聖書と進化について考えていたという宇佐神牧師は、米国留学時代にその考えを深め、現在は創造科学研究会の総主事を務めている。同研究会の会員数は現在約500人。
二十世紀は「科学の世紀」といわれるように、科学が大きく発展した。宇佐神牧師は、二十世紀の思想の背景にあったのが進化論だと主張。進化論は、単に生物学的な話だけにとどまらず、社会全体を支配するパラダイム的存在であり、社会における思想や観念の土台に進化論がある場合が少なくないと語った。
人々の多くは進化論的思考だけを聞いて育ってきたため、聖書よりも科学を選ぶようになり、科学者たちも聖書を科学にあわせようとし始めた。クリスチャンでさえ、真実はどちらであるかが分からなくなり、聖書の真理性に迷いが生じ、確信を持てずにいる人が少なくない。
進化論に見られる科学第一主義の考え方に対して、創造論は、聖書を逐語的に解釈し、そこに科学が裏付けとして用いることができるという。宇佐神牧師は、聖書を科学に合わせようとするのではなく、まず物事を聖書から考える。進化論で妥協することなく、聖書に基づいた科学を提唱し、聖書を逐語的に信じることに迷いを感じるクリスチャンや科学者たちに示していきたい、と宇佐神牧師は話した。
科学の先入観から抜け出して科学を聖書から見るとき、科学の基礎となる部分は聖書と完全に一致する。科学には実証されている部分と仮説に過ぎない部分があり、確実な部分は聖書と一致するという。進化論など仮説で成り立っているものは、今後の研究で真実が解明されていくだろうとした。
この地上は創造主が作られたものであり、六日間の創造についてもその順序は科学的に見ても適切で、聖書全体はこのように科学的に見ても非常に論理的に作られていると宇佐神牧師は指摘した。
二十世紀始めに人々が夢見たように、科学や医療の発展によってユートピアが訪れるという考えは本当に正しいのか、考え直さなければならない。
宇佐神牧師は、今の時代は地動説が提唱され始めた時代と同様ではないかと述べた。当時の人々は天動説を信じていたが、それは聖書の考え方に基づいた正しい考えであるかのように思われていた。だが実際天動説は、プトレマイオス(85〜165年頃)らの科学であった、と宇佐神牧師は語った。宇佐神牧師はギリシアの哲学や科学で正しいとされていた天動説と今の進化論は同じではないかと指摘した。
現代では、進化論に基づいた歴史の年代を信じない人は教養がないように思われがちだが、宇佐神牧師は「神の愚かさは人の知恵に勝るものであり、今は分からなくとも、聖書を信じる人が正しいということがわかるときが来るはず」と語った。
科学の正誤よりも本人が何を信じるかが重要、と同牧師。金持ちとラザロのたとえ(ルカ16:19〜)を挙げ、正しいことや正しい科学、正しい聖書の教えが語られたとしても、人の心がかたくなであるなら、何の意味もないと述べた。
宇佐神牧師は研究会の活動として教会や大学での講演、ニュースレターの発行、出版や創造論を教える人材の育成に取り組んでいる。主が与えてくださったあらゆる機会を通して聖書が正しいことを伝えていきたいと語る宇佐神牧師は、今後日本でも講演会や雑誌などを通して科学者たちにも広く創造論を伝えていきたいと語った。
また、▽児童教育、▽成人の信仰と確信の確立、▽神学生の聖書に対する確信―― を柱に活動していきたいと述べた。どうすれば多くの人々に聖書が真実であり信じるに値するものとして受け入れられるかを常に考え、活動の姿勢にしていきたいという。
特に多くのクリスチャンや子供たちが進化論と聖書のギャップによって教会を離れることがある中、確信と信仰の継承を助けていきたいとのこと。聖書より科学の仮説が優先されることがあってはならない、と宇佐神牧師は強調した。
同牧師は、聖書を読む際は文脈から読むことが鉄則と主張する。「殺してはならない」と言われる神様が、どうして別の箇所で「殺しなさい」と言われるのか。それは、完璧に作った大切な宝物が傷つけられることに似ている。宝物が修復され得るのであれば修復するが、修復できないものは捨てざるを得ない。確かに、人に他者の宝物を壊す権利はないが、全ての創造主には全てを裁く権利があるのでは、と宇佐神牧師。壊されたものに対する主の悲しみや怒り、み心を考えながら、聖書の箇所をツギハギのように寄せ集めて読むのではなく、聖書に従って読むことが重要だと述べた。
聖書は神話ではなく、そのまま信じるべきものを記している。創造主の喜びは、絶えず変化する学問や科学を聖書よりも信じる人ではなく、不変の聖書に固く立つ人にあるのではと同牧師。現在一般的に正しいとされていることを信じたとしても、それが変化するものであれば、そのような信仰に何の意味があるのかと述べた。問題は聖書に確信を持っているか否かであり、人々が聖書に基づいた考え方をするようになってほしいと話した。
創造論は信仰の土台であり、土台が間違ってしまえば全てが間違ってしまうため、創造主の存在を信じることは非常に重要という。自分は被造物であることを認め、聖書の真実性を伝え、聖書を信じる教会を作っていきたいという。
宇佐神実牧師のプロフィール
1961年宮城県仙台市生まれ。87年に渡米し、94年クリスチャン・ヘリテイジ・カレッジ卒。聖書と創造論を学ぶ。96年カリフォルニア大学バークレー校卒。宇宙物理学・進化論・言語学などを学ぶ。97年帰国と同時に創造科学研究会の活動に加わる。現在、創造科学研究会総主事、米国創造科学研究所大学院研究生、季刊誌「創造」編集発行人、インターナショナル・クリエーション・アカデミー学長(チャーチ・スクール)、茨城「世の光」伝道協力会副主事。