ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会、峯野龍弘主管牧師のコラム4回目です。
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使徒パウロは、ダマスコ途上の復活のキリストとの出会いによる「偉大な回心」によって、徹底した律法主義者から徹底した恩寵主義者に変えられた。この場合、恩寵主義者という人為的表現は、もはや馴染まない言葉とさえなった。なぜなら、律法主義に関しては、まさに彼の人為的主義主張であって「主義者」であったのだが、後者はもはや何一つ人為的主義主張や努力精進の結果ではない。ただ一方的な主の恵みと憐れみによる神的御業であって、パウロはその天与の驚くばかりの恩寵に与ったのである。それゆえこれを「福音」と呼ぶ。人は福音に与って生かされ、生きるようになる時、今や如何なる主義主張によって人為的に努力精進するに勝って、自由かつ平安のうちに、しかも力強く、何よりも喜びをもって、すべてのことを成し遂げ得るようになるのである。その内で最も大いなるものは、「愛」である。この愛は、律法として人為的に努力して実践している間は、決して聖書の求める真の「愛」には至り得ない。しかし、キリストの「偉大な愛」に出会い、その偉大な愛に触れ、その愛の中に自らが抱かれていることを明白に体験するとき、人は誰でもその心に大きな安息と喜びと感動を禁じえない。そしてこのキリストの偉大な愛によって受容され、抱かれ、尊ばれている自らを再発見するとき、人は誰でもこのキリストの大いなる愛に応えて、真心からキリストの御旨通りに生きることを願うようになる。と同時になによりもキリストが最も求めておられる自らがキリストに愛されたように、自らも他者を愛せる人間に変えられてゆくのである。いやそうせずにはおられなくなるのである。これこそ神的天的大恩寵であり、愛の福音である。
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<峯野龍弘牧師プロフィール>
淀橋教会にて牧会の傍ら、94年ビリー・グラハム東京国際大会実行委員長、日本メディア伝道協議会会長、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁、東京大聖書展実務委員長等を歴任。 今年5月には、米アズベリー神学校から名誉神学博士号を授与された。
現在、JEA理事長、ウェスレアン・ホーリネス教団委員長、日本ケズィック・コンベンション中央委員長などを務める。国内、海外のキリスト教界のみならず一般社会でも広く講演活動に従事している。