英国の北アイルランドの裁判所は7日、引退したバプテスト派の牧師に対し、中絶を行う病院の近くで野外説教したことを理由に罰金刑を命じた。牧師は「キリスト教の自由にとって暗黒の日だ」と判決を非難した。
罰金刑を命じられたのは、アイルランド・バプテスト教会協会(ABCI)元会長のクライブ・ジョンストン牧師(78)。中絶サービス(安全アクセス区域)法に違反したとして、北アイルランド北部コールレーンの治安裁判所が、罰金450ポンド(約9万6千円)の支払いを命じた。
中絶サービス法は、中絶を行う施設の周囲100メートル以内を「安全アクセス区域(緩衝地帯)」として定め、区域内でのプロライフ(反中絶)活動を禁止するもので、北アイルランドで2023年に施行された。ジョンストン牧師は24年7月7日、コールレーンのコーズウェイ病院周辺に設けられた区域内の路上で、少人数のグループによる野外礼拝を行い、その中で説教をした。
「欧州のキリスト教徒に対する不寛容・差別監視団」(OIDAC、英語)によると、コールレーン治安裁判所は「場所と周辺の状況」を理由に、ジョンストン牧師の行為が同法違反に当たると判断した。
検察は、大型の十字架、賛美歌、マイクが用いられていたことを根拠に、中絶サービス利用者に影響を及ぼそうとする行為に当たると主張。これに対しジョンストン牧師は、自身の説教では中絶については一切触れていないと反論。警察のボディーカメラの映像(英語)にも、人々が賛美歌を歌い、ヨハネによる福音書3章16節「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。御子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」など、聖書の一節を引用する様子が映っているのみであることを挙げていた。
ジョンストン牧師は判決後、「緩衝地帯に関する法律は非常に広範であるため、日曜礼拝を行うことが犯罪行為と見なされる場合もあるのです」と述べた。
「誰かが屋外で騒ぎを起こしたり、暴力をあおったり、嫌がらせをしたり、人を言葉で攻撃したりしているのであれば、もちろん遠慮なく起訴すべきです。しかし、警察の(ボディーカメラの)映像が示している通り、また事件に関わった全員が認めている通り、私はそのようなことは一切行っていませんでした」
中絶サービス法は、中絶サービスを利用する「保護対象者」に対し、影響を与えることを意図した行為、あるいは影響を与えるかを顧みない「無謀」な行為を、指定区域内で行うことを犯罪と定めている。
ピーター・キング判事は、保護対象者に影響を与えることを意図した行為、あるいは影響を顧みない無謀な行為を指定区域内で行ったとして、また、区域内からの退去指示に従わなかったとして、ジョンストン牧師を有罪とした。
キング判事は、ジョンストン牧師が「強い宗教的信念と善良な人格を備えた人物」であり、以前から公に反中絶の立場を表明してきた人物だとする一方、「法を試みようとした結果、法を犯すに至った」と結論付けた。また、ジョンストン牧師が中絶施設に近いことを理由に、あえてその場を礼拝の場に選んだとして、有罪認定の法的要件を満たすと判断した。
英国では23年から24年にかけ、北アイルランド以外でも同様の法律が成立し、中絶施設近くでのプロライフ活動が禁止されている。施設周辺で黙祷したことを理由に逮捕される事件も複数発生しており、逮捕の不当性が認められ、警察側が和解金を支払った事例がある一方、有罪となった事例もある。

















