一行が次に訪問したのは聖ヤコブ修道院。ガイド・マップと修道院のガイドさんから丁寧な説明を聞いた部分をまとめた。
聖ヤコブは、西暦3世紀半ばにこの地で生まれ、ヌサイビン(ニシビス)近くの修道院で俗世を捨てて司祭としての生活を始めた。ヌサイビンの権限ある人々が彼を修道院からディヤルバクルに連れてきて、西暦309年に聖マリア教会で開催された司教会議の決定により、彼はヌサイビンの司教に昇進した。彼は、ヌサイビンの教会は小さいと考え、313年に聖ヤコブ修道院の建設を開始。その一部が現在も存在している。
教会内部にある長さ3メートルの石、石の加工を見せるアーチの装飾、神聖な儀式が執り行われる部分のハーフドームなど、壁面のモチーフや構造物が幻想的なたたずまいを見せている。この聖ヤコブは教会教父と呼ばれ、彼の弟子にシリアのエフレム(306〜73)がおり、エフレムは彼から信仰教育と典礼教育を学び育てられたといわれる。
この地域で行われた発掘調査では、5つの建物跡が確認され、修道院の西側で大聖堂が発掘された。13世紀にさかのぼると考えられる建築の部屋の遺跡が、墓地の下で発見された。発掘調査が行われたことで、教会に関連する建築構造が教会の四方全てで明らかになった。
発掘調査は進んでいるものの、全てが明らかになったのではない。なぜなら発掘調査に関わる費用がないとのことで、何とか進むよう願っていると懇願していたことが印象的だった。
※ 参考文献
『古代シリア語の世界』(イーグレープ、2023年)
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
『景教碑の風景』(シリーズ「ふるさと春日井学」3、三恵社、2022年)
【著者の最新刊】
『古代シリア語の世界』(イーグレープ、2023年)
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