一行が次に訪問したのは397年建設の聖ガブリエル修道院施設で、膨大な敷地に幾つかの礼拝室や講義室、宿泊施設などがあった。施設案内の担当者が私たちを歓迎してくださり、迎賓室で修道院の歴史を聞き、重要で貴重な施設を案内された。
これらの施設内でもマリア立像はなく、礼拝室では聖書と賛美歌で礼拝していた。私は景教碑の下部にあるシリア文と上部の扁額部分の拓本を贈呈した。すると大変貴重なシリア語の聖書と修道院概要の出版物を数冊頂くことができた。
修道院の位置はニシビス(ヌサイビン)の北に位置し、丘の上に建てられている。
聖ガブリエル修道院は、西暦397年に建てられた。ここは現在も活動していて、修道院の生活様式と伝統を保ち、生かし続けている世界で最も古く希少な修道院の一つだ。シリア正教会の最も重要かつ古代の宗教の中心地の一つであり、トルコだけでなく世界の歴史的、文化的遺産の中でも最も貴重な傑作の一つだ。
シリア正教会のために訓練された、知識豊富で賢明な聖職者を擁するユニークな典礼神学教育センターとなっている。人々が祈り、祝福を受けるために訪れるこの修道院は、西暦615年から現在に至るまでトゥラブディン都市圏の精神的な行政の中心地で、重要な歴史的および文化的価値があり、私たちのように世界中から観光客が訪れている。
またこの地は、古代はローマ帝国とペルシア帝国のはざまで帝国同士が対立する中、迫害を受けたり、逃亡を経験したりして発展してきた。現在はこの地域に60以上のシリア正教の修道院があるといわれる。
この表は、古代の教会会議からの立場の違いや発展、流れをまとめたもの。
20世紀になって、東方正教会とシリア正教会はキリスト論について話し合い、過去に言葉の違いはあったものの、まことの神が人となられたキリストの「神性・人性は融合も変化もなく、分割も分離もなく一つで、受肉において完全に結合されたキリストは唯一の神の子、主であり救い主である」との同じ認識に至ったといわれる。
※ 参考文献
『古代シリア語の世界』(イーグレープ、2023年)
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
『景教碑の風景』(シリーズ「ふるさと春日井学」3、三恵社、2022年)
【著者の最新刊】
『古代シリア語の世界』(イーグレープ、2023年)
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