ゴスペルを歌う日本人の9割以上はクリスチャン(キリスト教徒)ではない。このような現象は世界でも珍しい。なぜ、日本でこんなにもゴスペルが多く歌われているのか。ゴスペルには何があるのか。ゴスペルという切り口で、今の日本を、そしてその先にある思いを切り取ったドキュメンタリー作品――。
そんな触れ込みで2014年に全国公開された「GOSPEL」(松永大司監督)が、昨年12月からアジアンドキュメンタリーズで配信されている。日本でのネット配信はこれが初めて。クリスマスシーズンに合わせて配信が始まった後、徐々に視聴数を伸ばし、直近の3週連続で視聴数1位をキープ。想定以上の反響だという。
アジアンドキュメンタリーズは、本作について次のように紹介している。
ゴスペルにハマる日本人と、日本人の「信仰なきゴスペル」に戸惑う黒人たちの本音に迫ったドキュメンタリー。ブームが起きて30年。日本の音楽シーンに根付いたゴスペルだが、ゴスペルを歌う日本人の9割以上が非キリスト教徒だ。にもかかわらず、彼らは歌の中で神を賛美し祈りをささげる。米国のゴスペルシンガーは「理解できない」とあきれ顔を見せ、日本人のゴスペル講師は「マスコーラスという一つの音楽形態に落とし込んで、宗教色を出さない」と割り切る。クリスチャンではない者がゴスペルを歌う。その矛盾に悩む人、まったく気にしない人、キリスト教に入信する人・・・さまざまな人間模様とともに、日本人とゴスペルの微妙な関係を追究した。
本作は、足かけ2年にわたる日米のゴスペル関係者などへの取材に基づいた作品。日本では、淡野保昌や亀渕友香、ラニー・ラッカーら、日本のゴスペル界の礎を築いた指導者らにインタビュー。また、国内最大のゴスペルイベント「横濱(よこはま)ゴスペル祭」や「仙台ゴスペル・フェスティバル」をはじめとした日本各地のイベント、コンサート、教会を取材している。
米国では、南部やニューヨークの黒人教会などを取材。ゴスペル界のトップスターであるグラミー賞受賞歌手カーク・フランクリンや、著名なキリスト教伝道者フランクリン・グラハムなどの映像も多く目にすることができる。
アジアンドキュメンタリーズではこの他、2021年製作の「ミャオ族の聖歌隊」(ドンナン・チェン監督)も配信されている。中国・雲南省の山岳地帯に暮らし、クリスチャンが多いミャオ族を取り上げた作品で、こちらは日本初公開。アジアンドキュメンタリーズは、次のように紹介している。
中国・雲南省の少数民族・ミャオ族の聖歌隊が、商業主義に翻弄されながら民族のアイデンティティーと信仰心を拠り所に生きてゆく様を追った作品。敬虔なクリスチャンとして神に歌をささげる一方、役人の指示に従い宗教色を排除した歌で人気を獲得していく。知名度が上がり次第に豊かになっていくとともに、村は一気に押し寄せる開発の波から逃れられなくなる。土地を失い、報酬をめぐって信頼関係が揺らいだ。そんな苦境にあっても、信仰心と歌は決して忘れることがないミャオ族。しかしその陰で、失われてゆく伝統もあった。民族として守るべきものは何なのか。ミャオ族の苦悩が、観る者の心に問いかける。
両作とも、単品購入(購入後7日間視聴可能)は495円。月額見放題(990円/月、ガイド郵送付きは1100円/月)を登録すれば、見放題で視聴できる。