昨年11月以降、ロシアはウクライナとの国境付近に20万人近い兵力を増強し、西側諸国も含め全世界が懸念していた。2月22日、ロシアは親露派東部2州の独立を承認し、同時にこれと同盟条約を結んだ。当初、軍事行動があったとしても、東部親露派地域に限定されるものと予想していた多くの専門家らの予測を裏切り、ロシアは24日、三方向からウクライナへの全面的な侵攻に踏み切った。これに対して米中心の西側諸国は、矢継ぎ早の経済制裁を打ったが、プーチン大統領は侵攻から1カ月たつ今も強気な姿勢を崩していない。
しかし、ウクライナ側も決死の覚悟で抗戦に出ており、数日で陥落すると見られていた首都キエフの防衛をはじめ、各地で奮闘している。強く懸念されるのは、学校や病院などへの無差別な攻撃に加え、原子力発電所への攻撃や、ロシア側の核兵器使用の言及についてだ。いかなる理由があろうと、21世紀の国際社会において、19世紀、20世紀的な「力による現状変更」は決して許されるべきではない。核拡散防止条約(NPT)で、米、英、中、仏、露だけが例外的に核保有が認められているのはなぜか。当然この5カ国には、それに見合う責任が伴うからだ。しかも国連の常任理事国たる大国においては、なおのことその責任は重い。このような責任ある大国が、核戦力を後ろ盾に小国をどう喝するなど言語道断だ。このような核保有国の横暴は、NPT体制そのものを根底から覆しかねない。
一方、紛争や戦災によっていつも煮え湯を飲まされるのは、子どもや女性、高齢者や病人などの弱者だ。国境を超えて近隣諸国に難を逃れる民間人は、すでに350万人に達している。
混乱が続くなか、ウクライナの牧師たちは自分たちもまた戦災被害の当事者でありながら、助けを必要としている人々のニーズに届くことを求めている。彼らウクライナ人の信者らは、紛争によって生じる不安や恐れは人々を福音に導くまたとない機会だと認識している。
この地でラジオ伝道に取り組むTWR(トランス・ワールド・ラジオ)は、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの人々に福音放送を提供している。送信設備を追加することで電波を強化し、より多くの人が福音番組を聞くことができるようにした。「戦地にいる人々ほど希望の言葉を必要とする人はいない」とTWR欧州は言う。「インターネット設備が戦闘によって破壊された場合でも、私たちは妨げられず、電波に乗せて希望のメッセージを放送することができます。だからこそ今、一層私たちはこの働きに力を入れるのです。私たちは、励ましを与え、慰めの源である神を指し示すさまざまなプログラムを持っています」と述べた。彼らは、ウクライナ語の2つの番組と、地元のパートナーの協力によるロシア語の2つの番組を通じて、敵味方の別なく、戦禍の中で苦しむ人々に希望を投げ掛け続けている。
ウクライナの国内外にスタッフを擁するジーザス・フィルム・プロジェクトは、ポーランドに逃れてきたウクライナ難民たちに、物理的な支援とともに、ジーザス・フィルムを通じて福音の希望をも提供している。現地関係者によると「避難民らは、目まぐるしく起きる出来事のため、精神的に疲弊し、怯えており、明らかにPTSDを発症しています。そんな苦しみの中にある彼らが、母国語でイエスの物語を聞き、イエスが与える希望と救いを聞くことができるなら、これはどれほど大きな影響を彼らに与えることができるでしょう。私には想像もつきません。ここポーランドには、毎日10万人の難民が押し寄せてくるのですが、ある教会はたった200人しか会員がいないにもかかわらず、この200人で50人の難民を受け入れたのです。彼らは1週間で1万ドルを募りました。それは、彼らの年間予算の3分の1にもなるのです」と述べた。
ウクライナと近隣諸国の兄姉たちは、自分たちの力以上に、避難民たちの物質的な必要と、そして何よりも、決して失せない「命のパン」である永遠の希望を与える霊的必要を提供しているのだ。
現在のウクライナを取り巻く情勢は、世界大戦と核戦争に拡大しかねないリスクが、近年経験したことがないほど最大化している。各国首脳が正しい判断を下すことができるように祈るのは、他でもないわれわれキリスト者の務めだ。敵味方関係なく、首脳たちが正しい判断を下し、速やかに停戦に至るよう祈ろう。また、紛争地の兄姉たちが、患難や苦しみを粉砕して余りある福音の力を、さらに多くの人々に指し示すことができるように祈っていただきたい。
■ ウクライナの宗教人口
正教 61・2%
新教 5・8%
旧教 10・1%
イスラム 1・1%
ユダヤ教 0・2%
無神論 19・5%
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1995年に宣教師訓練センターを卒業し、長年ルーマニア宣教に従事した石川秀和牧師(現近江聖書教会牧師)を通じて、ルーマニアの関連宣教団体であるカイロス・エージェンシーが、国境を越えてくる避難民に緊急支援活動を開始しました。
私たちもまた、祈りと支援を通じて、戦災に苦しむ人々を支える奉仕の業にあずかろうではありませんか。支援窓口はこちらより。