インド中部チャティスガル州で、ヒンズー民族主義者の暴徒約200人が礼拝中の家の教会を襲撃し、牧師と少なくとも信徒2人を負傷させ、キリスト教徒の女性1人を強制的にヒンズー教に改宗させる事件があった。
米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)によると、事件は9日に同州コンダガーオン県オダゴアン村の家の教会で発生。サンジス・ヌグという名の男が率いる暴徒の集団が襲撃したという。
ヌグは礼拝を行っていた民家に押し入り、ヘマンス・カンダパン牧師や信徒らを殴打。その後、カンダパン牧師を200人以上の暴徒が集まる屋外に引きずり出したという。暴徒らは、ヒンズー教徒を違法にキリスト教に改宗させているとして激しい暴行を加えた。この事件でカンダパン牧師と信徒のサンカル・サラムさんが大けがを負い、入院を余儀なくされた。暴徒らは「村で祈りを続けるなら殺す」と言い、信徒らを脅したという。
カンダパン牧師はICCに、「私は9時間近く自宅に軟禁されました。その間、私は警官の前でさえ暴徒から虐待され続けました」と話した。
翌10日には、ヒンズー民族主義団体「世界ヒンズー協会」(VHP)の指導者らが、オダゴアン村のキリスト教徒らに対し、スンデリ・バシさんをヒンズー教に改宗させる儀式へ参加させるよう強要。バシさんは強制的にヒンズー教に改宗させられたという。カンダパン牧師は、「オダゴアン村の状況はいまだ緊迫しています」と述べ、事件を受け5家庭が隣村に避難したことを付け加えた。
コンダガーオン県は先住民の部族が多い地域で、キリスト教を信仰している部族に対する攻撃は、ヒンズー過激派が先住民のキリスト教改宗を阻止するキャンペーンを2020年に始めて以来、増加している。過激派のグループは、キリスト教への改宗者が教育や雇用の機会を得ることを禁止するよう政府に要求するなどしている。
インドの先住民の多くは、自らをヒンズー教徒とは認めず多様な宗教的慣習を持ち、自然崇拝者も少なくない。だが政府は国勢調査で、彼らを一律にヒンズー教徒とみなしている。
インドでは、2014年に親ヒンズー教で知られるナレンドラ・モディ首相とインド人民党(BJP)が政権を取って以来、キリスト教徒への攻撃が増加している。インドの人口に占めるキリスト教徒の割合はわずか2・3パーセントである一方、ヒンズー教徒は人口の約8割を占めており、宗教的少数派に対する過激なヒンズー民族主義者の攻撃は増加している。
60カ国以上を対象に活動している迫害監視団体「オープンドアーズ」は、インドの状況について次のように報告している。
「ヒンズー過激派は、すべてのインド人はヒンズー教徒であるべきで、キリスト教とイスラム教はこの国から排除されるべきだと考えている。彼らはこの目標を達成するために、特にヒンズー教のルーツを持つキリスト教徒らをターゲットに大規模な暴力を行使している。キリスト教徒は、『外国の信仰』に従っていると非難され、地域社会の不運の原因として非難されている」
オープンドアーズは、インドのキリスト教徒にとって昨年は「最も暴力的な年」であったとし、キリスト教徒に対する迫害事件が少なくとも486件発生したとしている。