この数年、根拠の曖昧な地球温暖化への対応が求められ、自動車の電動化が極端に進められていることに違和感を覚えています。現在の内燃機関の完成度は非常に高く、その素性の良さを正しく評価して、電動化を慎重に議論すべきと考えてきました。
そんな折、次期ランドクルーザー300に、新規V6ディーゼルエンジンが搭載されるとのニュースに触れ、大変うれしく思っています。
技術の詳細は不明ですが、私の知る限り、あらゆる面で世界最高水準のパワーユニットになると予想され、世界中で広く用いられることで、多くの人に内燃機関の卓越性を実感してもらいたいと思います。
過去の知見、伝統は夢の実現を生む
19世紀末にルドルフ・ディーゼルがディーゼルエンジンを発案して以来、燃料噴射、燃焼、吸排気などに数多くの技術が検討されてきました。
現在のような高圧の燃料噴射装置のない時代には、気化、微粒化の難しい燃料を効率よく燃焼させるため、さまざまな技術が生まれました。どの技術の中にも多くの人の知恵が注がれています。
その後、過給機(ターボチャージャー)の採用により動力性能が向上し、広く乗用車にも搭載されましたが、排気ガス浄化が難しく、日本での販売台数は大幅に減りました。
その後、コモンレール燃料噴射装置(高圧噴射)が採用され、直噴化、多段噴射、吸排気4弁化、可変ノズル付き過給機、DPFやSCR(排気浄化装置)などの新技術が開発され、排気ガス低減だけでなく、動力性能、燃費なども大幅に改善されました。
今回のランクル300では、バランスの良い新V6エンジンに、2つの過給機を連続的につなぐ並列2WAY方式が加わったことで、さらに高い性能が期待できます。
これらの技術を採用するための関係者の苦労は大変なものだったと思います。過去の貴重な技術遺産を受け継ぎ、その上に新技術を実現させたことに深く敬意を表したいと思います。
急速な電動化は大切な遺産を潰し、地球環境の悪化を招く
極端な電動化によって、内燃機関をそっくり電気モーターに変えると、これまで蓄積した貴重な技術遺産を潰す恐れがあるだけでなく、地球環境にも悪い影響を与えます。
バッテリー製造や充電設備の普及は、それだけで新しい産業を巻き込み、二酸化炭素の排出量を増大させます。さらにバッテリー充電に必要な電力需要を支えるには、安全性に課題を残す原子力発電に頼るしかありません。
もちろん再生可能エネルギーへの転換は徐々に進むでしょうが、電動化の急激な進展を支えるのは難しいといわれています。
電動化を急速に進ませる動機は「利権の確保」
このような状況は、既に専門家が指摘していることですが、それでも電動化が急速に進む理由は、環境問題とは関係のない電動化に伴う利権の大きさにあります。
全世界の四輪車の保有台数は14億3318万台(2018年日本自動車工業会資料)もあり、毎年新規に製造される四輪車は9000万台を超えるそうです。
非常に大きな市場ですので、開発途上にある国にとって新規参入したいところですが、蓄積された多くの技術はそれぞれの自動車会社が保有し、付加価値の高い車両分野ほど新規参入は難しい状況にあります。
ところがここに、地球環境改善を名目に、新規参入の容易な電気自動車を持ち出し、極めて大きな市場の利権を一気に奪おうとするC国と、C国の生産力に頼る世界経済の歪んだ力が働いていることは言うまでもありません。
技術動向を正しく判断し、バランスの取れた将来を目指そう
最近の内燃機関は、燃費、性能だけでなく、排気浄化性能は著しく向上し、吸入した大気をさらにクリーンにして排出する「走る大気清浄機」になる可能性まで持っています。
そして、今回のランクル300のように、世界のどこにでも出掛け、そして帰ってこられる車両の信頼性は、長年の技術蓄積を持つ内燃機関によってのみ確保されます。
電動化の検討は、これら内燃機関の正しい評価の上に、時間をかけ、状況判断を繰り返して進めるべきです。利権の奪い合いは、かつては悲惨な戦争を生みましたが、現代社会では、あらゆる貴重な遺産を根絶やしにするグローバル化を推進します。
歴史の中で、多くの先人たちの残した貴重な技術遺産が今後も受け継がれ、正しい選択がされることを心より願っています。
金持ちになりたがる人たちは、誘惑と罠と、また人を滅びと破滅に沈める、愚かで有害な多くの欲望に陥ります。(テモテへの手紙第一6章9節)
次期ランドクルーザー300は、今の私のライフスタイルに合わない高価な車ですが、大変魅力的な車ですから、一度は運転して遠くに出掛けてみたいものです。(補足:この車両には、新V6ガソリンエンジンも搭載される予定です。)
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