スイス・ジュネーブに拠点を置くNGO「国連ウォッチ」が、2020年に人権侵害が最もひどかった国のトップ10を発表し、中国を最悪の人権侵害国に指定した。
国連ウォッチは、国連憲章に従って国連が活動しているかを監視するNGO。発表(英語)では、中国について「100万人のウイグル人を収容所に収容し、人権活動家を投獄し、チベットを踏みつぶし、李文亮(リ・ウェンリャン)医師や市民ジャーナリストの張展(ジャン・ザン)氏のように新型コロナウイルスに警鐘を鳴らした勇気ある男女を黙らせ、香港の自由を窒息させた」と批判した。
李氏は、新型コロナウイルスの発生地とされる中国・武漢で、医療関係者として最も最初期にウイルスについて内部告発した数人の一人。自らも感染し、昨年2月に33歳で亡くなった。元弁護士の熱心なクリスチャンである張氏は感染拡大初期に武漢入りし、現地の情報を発信していたが、その後拘束され、昨年12月に騒動挑発罪で禁錮4年を言い渡された(関連記事:武漢のコロナ情報発信、クリスチャンの女性市民ジャーナリストに禁錮4年)。
中国に続く人権侵害国として挙げられたのはイラン。さらにその後に、カメルーン、ベネズエラ、サウジアラビア、ジンバブエ、キューバ、トルコ、北朝鮮、ロシアが続いた。国連ウォッチはこれらの国々について、自国民を拷問し、投獄し、餓死させ、政治的反体制派を殺害し、宗教的な理由で人々を迫害しているとしている。
一方、これらの国々における人権侵害のイデオロギー的動機は異なる。北朝鮮、ベネズエラ、キューバ、中国は、共産主義または社会主義の国家で、ジンバブエ、ロシア、トルコ、カメルーンは、暴力を用いて権力を握る独裁的な指導者によって支配されている。サウジアラビアとイランはイスラム教の神権国家。
深刻な人権侵害がありながらも、ロシア、キューバ、ベネズエラ、カメルーン、中国の5カ国は現在、国連人権理事会の理事国となっている。国連では2020年、中国、ベネズエラ、サウジアラビア、ベラルーシ、キューバ、トルコ、パキスタン、ベトナム、アルジェリアの人権侵害を非難する決議が通過しなかった。しかし同じ年に、イスラエルに対する決議は17回も可決する時間があった、と国連ウォッチは指摘している。
人権侵害国2位~10位と指定理由は以下の通り。
2位:イラン
政権批判者を処刑し、シリアにおける大量殺人やテロ活動に資金を提供し、旅客機を爆撃し、平和的な抗議者を殺害した。
3位:カメルーン
ジャーナリストのサミュエル・アブウェ氏を拷問して殺害し、学校の子どもたちを虐殺し、政治的反体制派を脅迫した。
4位:ベネズエラ
政府批判者を暗殺し、偽の選挙を行い、何百万人もの人々に影響を与えた人道的危機を無視した。
5位:サウジアラビア
何千人もの罪なきイエメン人を空爆し、人権活動家を投獄し、渡航制限で批判者を黙らせた。
6位:ジンバブエ
調査ジャーナリストのホープウェル・チンオノ氏を逮捕し、抗議者を拷問し、政府の新型コロナウイルス対策を批判した人々に暴行を加えるなどした。
7位:キューバ
食料や医療援助を遮断しながらも、基本的な人間の自由をすべて否定し、抗議者を圧迫し、麻薬密売を推進した。
8位:トルコ
人権活動家のオスマン・カバラ氏と記者を投獄し、46万人のクルド人への給水を断ち切った。
9位:北朝鮮
何百万人もの国民の飢餓を許し、10万人を強制労働と略式処刑の対象となる収容所に収容し、子どもたちに公開処刑への参加を強要した。
10位:ロシア
野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺を試み、362人の政治犯を拘束し、300人のエホバの証人を迫害し、シリアで民間人を標的に空爆を行った。