新型コロナウイルスにより中国で2千人を超える死者(19日時点)が出ていることを受け、キリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」(本部・米ワシントン州、英語)は、370万ドル(約4億円)余りを拠出し、中国で命の危険にさらされている約40万人を支援することを目指している。
ワールド・ビジョンは、中国に約300人のスタッフがおり、現地の子ども約5万5千人を支援している、同国で活動する最大の人道支援団体の一つ。ワールド・ビジョンの人道問題・緊急事態プログラムマネージャーを務めるエリカ・バン・デレン氏によると、中国でワールド・ビジョンの支援を受けている子どもたちのうち、約3万9千人が新型コロナウイルスにただちに感染するリスクのある地域に住んでいるという。だが幸いにも、これまでのところ、子どもたちの中に感染者は出ていない。
「私たちは、支援先の子どもやその家族と協力し、必要な防護装備が確実に家族の手に渡るようにしています」とバン・デレン氏。「(家族は)子どもたちに、ウイルスから身を守るために必要なノウハウを教え(る必要があり)、恐れやストレスがあれば、それについても話します」
ワールド・ビジョンは、マスク、体温計、消毒薬、せっけんなどの個人用防護装備や衛生品を配布することにより、中国の10省で約39万人を支援することを目指している。すでに、病院用マスク5万枚を4省5県で配布した。「(配布の対象は)非常に貧しいご家庭の方々です。ワールド・ビジョン・チャイナは、これまでも貧困層のニーズに対応してきました」とバン・デレン氏は言う。
子どもやその家族に対する支援だけでなく、ワールド・ビジョンは湖北省や湖南省で、保健医療従事者にも、ガウンや手袋、保護メガネ、人工呼吸器など、適切な保護用品を配布することで支援している。さらに今後は、孤児院や障がい児センターなどの支援も計画しているという。
「現在のニーズは、そういった領域にあります」とバン・デレン氏。「ワールド・ビジョンは、そのニーズを満たす手助けをしています。政府と協力し、必要な保護用品がそういった施設で働く方々に確実に手に渡るようにしています」
ワールド・ビジョンは過去においても、ジカ熱やエボラ出血熱、新型インフルエンザ(H1N1)などの健康危機に対する活動を通じて、助けを必要とする人々を支援してきた。
中国政府は19日、新型コロナウイルスによる肺炎(COVIDー19)により、同日午前0時時点で中国本土の死者数が前日から136人増え、2004人になったと発表した。感染は中国外にも広がっており、世界保健機関(WHO)の報告(英語)によると、18日までに中国を含む26カ国で感染が確認されており、感染者は世界全体で7万3332人に上る。そのうち中国での感染者が7万2528人とほとんどを占めるが、中国外でも804人の感染が確認されている。
そのため、ワールド・ビジョンは各国の事務所、特に中国に隣接する地域やアフリカの事務所で、新型コロナウイルスの感染拡大に備えた世界規模の準備計画を進めている。
「私たちは、中国外に感染が拡大するのではないかと人々が怯えてほしくないのです」とバン・デレン氏は話す。「実際のところ、最大の懸念は中国国内にあります。しかし、ワールド・ビジョンの各事務所は、(自国に)感染が広がった場合、各事務所の対応能力がどの程度であるか、また自国の政府に対応する準備ができているかどうかなどを確認しているところです」