北朝鮮は6日、平壌科学技術大学(PUST)の教授で、クリスチャンであることを自認している米国人のキム・ハクソン氏を、北朝鮮政府に対する敵対的行為をしたとして、拘束した。金正恩(キム・ジョンウン)政権によって拘束された米国人は、これで4人目となる。
北朝鮮の国営・朝鮮中央通信(KCNA)によると、ハクソン氏が拘束されたことで、福音派系のPUSTで教授が拘束されたのは2人目となる。北朝鮮当局はハクソン氏の容疑について「詳細な捜査」を実施したとしているが、詳細は明らかにしていない。
一方、ロイター通信(英語)によると、ハクソン氏は、サンパウロにある韓国系ブラジル人教会のウェブサイトに掲載した2015年2月のメッセージで、自身がPUSTで試験農場を始めようとしているキリスト教の宣教師であると語っていたという。
PUSTでは4月末にも、50代の韓国系米国人で同大教授のトニー・キム(韓国名:キム・サンドク)氏が拘束されている。トニー氏の拘束は今月3日にKCNAが報じたばかりで、罪状は明らかにされていない。
PUSTのパク・チャンモ名誉総長は声明で、トニー氏は孤児院の支援など、PUST以外の活動にも関わっていたとコメント。「彼が即時解放されることを心から願い、また祈ります」と話していた。
PUSTは北朝鮮の首都・平壌にある同国唯一の私立大学。南北交流事業の一環として、韓国のキリスト教系団体である北東アジア教育文化協力財団と北朝鮮の教育省が共同で、2010年に設立した。
米CNN(英語)によると、ハクソン氏は中国の吉林省生まれで、カリフォルニア州の大学で教育を受けた。ハクソン氏が北朝鮮の農業経済の改善に専念していたことは、明らかだという。
「彼は勤勉で仕事熱心な男性で、北朝鮮の人々を助ける決意をしていました」と、元級友のデビッド・キム氏は語った。
ハクソン氏は2000年代に米国の市民権を取得し、その後、中国に帰国。中国には今も家族がいる。吉林省東部の延辺(エンペン)にある大学で農業を専攻した後、15年に平壌に行く決意を固めたという。
「ハクソン教授は、北朝鮮を自分の国と呼ぶ人でした。彼は、北朝鮮が食糧自給できるように、農業技術開発に専念するため北朝鮮に行ったのです」とデビッド氏は言う。
米国在住の別の級友デビッド・リー氏は、ハクソン氏は飢餓状態にある北朝鮮の民衆への思いから、北朝鮮に食糧を送ろうとしていたと語った。「北朝鮮は、自国の救済者を迫害しています。自国の民衆を助けに来た人物をです。これは間違っています」
米国務省は短い声明を発表。「北朝鮮における米国市民拘束の報告を受け、私たちは在平壌スウェーデン大使館と協力している。同国は北朝鮮における米国の利益代表国だ」と述べ、4人目の拘束を認識していることを示した。
米朝関係は緊迫した状況にあり、ハクソン氏が拘束されたことで両国の関係は一層悪化するとみられる。ドナルド・トランプ米大統領は、金正恩政権が国際制裁を無視し、弾道ミサイルの発射実験を続けていることを受け、北朝鮮との「大規模な衝突」を懸念していると警告している。
一部の脱北者らは金正恩政権が5年以内に倒れる可能性があると予想しているが、そうなった場合、シリアの現状を上回る大規模な難民危機が生じる恐れがあると、国際キリスト教コンサーンなどの迫害監視団体は警告している。米国オープン・ドアーズは、信仰を公に実践したり、聖書を所有したりすることさえも違法になるとし、北朝鮮を世界最悪のキリスト教迫害国としている。