(ハ)ダニエルに見る労働の姿
旧約聖書に見る本来の労働の姿として、ダニエルの労働を取り上げる。現代の労働はほとんど、何らかの組織を通じて行われる。そして、ほとんどの組織や制度は、権力の獲得や維持、また利益の追求を目的としている。
そのような組織の中で働くことが正しいかどうか。このことについては、ユダヤ人でありながらバビロンに忠実に仕えたダニエルの歩みが模範となる〔6〕〔10〕〔17〕〔18〕。
第一に、ダニエルは異教徒のバビロン王に仕えることを拒否しなかった。憎むべき敵国であっても、国を治めて義と公平の支配する健全な社会を作り上げるのは神のみ旨であると知って、王の召しに応じた。
王に仕える職務を、究極的には天地を造り全ての人を支配しておられる神に仕える仕事だと考えたからである〔10〕。
第二に、政治的支配者である王に仕えることは拒まなかった、ダニエル6:3「ときに、ダニエルは、他の大臣や太守よりも、きわだってすぐれていた。彼のうちにすぐれた霊が宿っていたからである。そこで王は、彼を任命して全国を治めさせようと思った」参照。
しかし、異教の神々に仕える宗教的服従は拒否した。ダニエルは、信仰においては神の法則に従うことを選び妥協しなかった〔10〕。
第三に、ダニエルは神の主権のもとで、神の栄光のために仕事をした〔10〕。そしてついに、彼が仕えた王たちに「ダニエルの神はほむべきかな」と神を認めさせ、神をあがめさせたのである〔18〕、ダニエル2:47「王はダニエルに答えて言った。『あなたがこの秘密をあらわすことができたからには、まことにあなたの神は、神々の神、王たちの主、また秘密をあらわす方だ』」参照。
およびダニエル6:26、27「私は命令する。私の支配する国においてはどこででも、ダニエルの神の前に震え、おののけ。この方こそ生ける神。永遠に堅く立つ方。その国は滅びることなく、その主権はいつまでも続く。この方は人を救って解放し、天においても、地においてもしるしと奇蹟を行い、獅子の力からダニエルを救い出された」参照。
この世の仕事は、常に、何らかの偶像礼拝に引き寄せられていく。企業は「金もうけ」という偶像の前に正義を捨てるし、役所は官僚機構の維持のために一切を犠牲にする。
このような世界の中で、仕事の全体を神に仕えさせ、神の栄光を現すものとすることは、ほとんど不可能に近いように私たちは思いがちである。しかし、本気で祈り、難事業に取り組む者には、不可能も可能にされる神が助けを与えてくださる。
ダニエルも神によって、王の見た夢を内容も知らずに解き明かすことができた〔10〕。
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(参考並びに引用資料)
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