昨年12月にケニアで起きたバス襲撃事件で、キリスト教徒をかばったイスラム教徒の乗客が、事件の際に銃撃されたけがのために死亡した。生前、キリスト教徒とイスラム教徒双方に対し、兄弟として生きるよう勧めていた。
BBCニュースは18日、サラ・ファラさんが首都ナイロビでけがの治療のための手術中に死亡したと報じた。
ファラさんと他のイスラム教徒の乗客は、昨年12月に起きたテロ組織「アルシャバブ」によるバス襲撃事件で、キリスト教徒を守るために命を危険にさらした。事件では2人が死亡、ファラさんを含む3人が負傷したが、もし乗客が襲撃犯に対抗しなかったら、さらに多くが殺害されただろうと当局の職員は話していた。
事件後のBBCのインタビューで、5児の父のファラさんは、襲撃犯が当初ファラさんに逃げるよう勧めたと明かした。
「犯人は、もしあなたがイスラム教徒なら、安全だと言いました。イスラム教徒でない人もいて、その人たちは身を隠しました」
今月に入り、ファラさんは米国のラジオ局「ボイス・オブ・アメリカ」に対し、イスラム教徒とキリスト教徒は隣人同士として共に平和的に生きることができると話した。
「私たちは兄弟です。違うのは宗教だけです。だから兄弟であるムスリムたちに、キリスト教徒の世話をするよう願い、またキリスト教徒も私たちの世話をすることも願います。そしてお互いに助け合い、平和的に共に生活しましょう」
ケニアのガリッサ教区司教をはじめとする宗教の指導者は、この事件でアルシャバブに対抗したイスラム教徒を称賛した。多くのイスラム教徒が襲撃犯に「皆殺しにするかここから去れ」と言い、キリスト教徒の乗客と分けられることを拒否した。
「これは非常に良いことです。ケニアのイスラム教徒が暴力に反対していることを示す具体的なサインです」とモンシニョール・ジョセフ・アレッサンドロ司教は語った。
「アルシャバブは今や、イスラム教徒からの支持を得ていないことを知っています」とアレッサンドロ司教。「1年前にも、大量殺人という結果になった似たような事件がありましたから、このような方向が今後も続くことを願います」
ジョセフ・ヌカイセリ内務大臣もこのことを称賛し、ケニア国民がテロに対して共に立ち上がることができることの証左だと述べた。
「私たちは皆ケニア人で、宗教によって分けられることはありません。私たちは国家として、一つです。これは、イスラム教徒である兄弟姉妹からのとても素晴らしいメッセージです」
何年にもわたりケニア市民を襲撃しているアルシャバブは、多くの事件で、イスラム教徒とキリスト教徒を分けてからキリスト教徒のみを殺害する戦略をとってきた。
昨年12月に発生したガリッサ大学襲撃事件では、152人という多くの犠牲者が出た。そのほとんどがキリスト教徒だった。この事件は、ケニアで発生した事件の中でも最も死者の多い事件の一つとなった。
警察のジョセフ・ボイネット首席監察官はファラさんの死亡を受け、ファラさんは「真の英雄」だと述べた。
「埋葬のために、警察のヘリコプターでマンデラまでご遺体を搬送しました。犠牲者が、無実のケニア人を助けようとして亡くなったからです」とボイネット氏。