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わが人生と味の道

わが人生と味の道(19)結婚と両親の死 荘明義

2015年12月4日06時46分 コラムニスト : 荘明義
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私は21歳になったとき、本店でレジを打っていた美しく、魅力的な女性、鄧玉屏と恋に落ち、その後5年の交際で婚約し、1年後に結婚しました。

しかしながら、幸せの絶頂にあったこの年と翌年には両親が亡くなるという、まさに天国と地獄の両方を味わったような時期でした。思えば両親は熱心なクリスチャンでした。この私といえば、14歳で両親に連れられて教会に行き、20歳で洗礼は受けたものの、あまり熱心なクリスチャンとはいえない状態でした。

私が料理の道に入ったとき、姉はカナダに留学し、弟も同じくカナダで学んでおり、両親の元には私しかいませんでした。私が結婚したとき、父はもう片目が見えず、がんに冒されていました。父親が亡くなってその1年後に、母も亡くなったのです。母親の具合が悪くなったとき、姉はカナダから戻ってきて、しばらく看病をしてくれました。仏教徒だった父も、幸せなことにキリスト教と出会う機会が与えられ、晩年は教会で母と共によく奉仕もしていました。彼は亡くなるときは全く目が見えず、がんの非常な苦しみの中で天に迎えられたのです。その1年後に、母も胃がんで天に召されました。母は、父を看病するために自分の痛みを押して看病していたので、彼女のがんが発見されたときには、すでに手遅れという状況だったのです。

この母親は入院して3カ月後に亡くなったのですが、多くの人が見舞いに来、逆に母親に励まされたということを聞きました。母は祈りの人でした。しかし、彼女は亡くなる少し前に、姉としばらく生活することができて、平安のうちに天に召されたのです。

今姉はカナダに、そして牧師となった弟は、カナダ・香港で牧会をしています。弟は母親が亡くなったその日に、牧師になる決意をしたのでした。しかし、この私といえば、両親が生きているときには熱心に教会に通ったのですが、両親が亡くなってからは、特に土曜日、日曜日は店が忙しいという理由もあっていつの間にか、遠ざかってしまったのです。前に述べたように、私が17歳で料理長になったときには多くの収入があったのですが、友人にお金を貸すことで、ほとんど現金は手元に残っていませんでした。母は、私が結婚したとき、「あなたはお金の管理があまり上手でないから、奥さんにお金の管理を委ねなさい」と言いました。それで私は、その言葉通り、妻にそれを委ねました。母の言葉は正しかったと、私は今も思っています。

私は27歳にして家を与えられ、車も与えられ、仕事も順調で、生活はとても豊かでした。しかも翌年には長男義光を、その翌年には長女明恵を授かり、家庭的にも満たされていました。その当時の私といえば、本店、新館、別館と拡大した重慶飯店の責任者として駆け回り、料理学校の講師として教え、テレビに出演し、多くの講演会に招かれてとても人気がありました。また、大龍で冷凍食品の開発をし、味の研究をし、そして幾つもの店の顧問をし、いろいろな所に出張教師としても招かれるといった忙しい日々を送っていました。それで、いつの間にか私は、お金も、地位も、名誉も、家庭も、すべてが与えられていて、自分には何一つ不自由するものはないのだというような錯覚に陥ってしまったのです。それにまだ若かった私は、多くの人に教えたり、一緒に勉強したり、付き合ったりすることが楽しくて夢中になり、すっかりイエス・キリストに救われたことも、福音のことも忘れてしまい、教会に通っていたのが遠い昔のようにさえ感じられたのでした。

前の教会の牧師はとても熱心でした。たびたび家に訪ねてきました。しかし、私はそういうことが何か迷惑のように感じられたのです。正月などに訪ねてくると、家族に「牧師が来たら戸を開けるな」と言い、居留守を使いました。こうして、せっかく訪ねてきてくれた牧師と会うこともなく、13年という歳月がたったのでした。

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◇

荘明義

荘明義(そう・あきよし)

1944年中国・貴州省生まれ。4歳のときに来日、14歳で中華料理の世界に入り、四川料理の大家である故・陳建民氏に師事、その3番弟子。田村町四川飯店で修行、16歳で六本木四川飯店副料理長、17歳で横浜・重慶飯店の料理長となる。33歳で大龍門の総料理長となり、中華冷凍食品の開発に従事、35歳の時に(有)荘味道開発研究所設立、39歳で中華冷凍食品メーカー(株)大龍専務取締役、その後68歳で商品開発と味作りのコンサルタント、他に料理学校の講師、テレビや雑誌などのメディアに登場して中華料理の普及に努めてきた。神奈川・横浜華僑基督教会長老。著書に『わが人生と味の道』(イーグレープ)。

■ 横浜華僑キリスト教会ホームページ
■ 【荘明義著書】(Amazon)
■ 【荘明義著書】(イーグレープ)

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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