全国に約600人の会員がいる聖句書道センター(大阪府東大阪市)の第36回聖句書道東京展が、2日から5日まで、東京都中央区の小津ギャラリーで開催されている。同センターを主宰する佐藤望雲氏(単立みとキリスト教会牧師)の指導を受ける、関東練成会の会員による作品約50点が展示されている。
一人一人が思い思いに選んだ聖書の言葉が、漢訳、文語訳、口語訳などのさまざまな言い回しで、また、楷書、草書、隷書などのさまざまな字体で書き表されている。普段、機械で印刷された聖書を読み慣れている人にとっては、訳の違いだけではなく、書体の違いからも、言葉の印象が異なって感じられることは驚きだろう。佐藤氏は聖句書道について、「キリストの福音は『言葉』という翼を持たなければ人に伝わらない。この『言葉』を運ぶものは文字であり、音声。私たちは口で物を言うより、文字で書き記すとき、一層の考えの深い、気持ちのこもった言葉を伝えるもの」と話す。佐藤氏が言う通り、紙に手書きされた聖書の言葉は、不思議な重みを持って心の中に届けられる気がしてくる。
また、「伝統が磨き上げた美しい言葉の翼は書である」と佐藤氏が言うように、書の一枚一枚が芸術作品であるのはもちろんのこと、書と一体化した軸装や額装からも日本の伝統的な美しさを楽しむことができる。下絵装飾や金銀の切箔(きりはく)が施された素晴らしい料紙に、創世記1章1節の言葉を書いた山根吟さんは、平安時代の家集『貫之集』で使用されていたこの華麗な料紙の複製の一部を手に入れた時から、「この素晴らしい紙に創造主の栄光と愛を書きたい」と思いを温めていたそうだ。
展示されている作品の書き手の年代は非常に幅広い。最年少は小学2年生で、最年長は96歳の稲垣白邑さんだ。詩編118編24節の言葉を、「この一年も主の憐(あわ)れみによりつつがなく過ごせたことを感謝し、朝ごとに主にささげて一日を過ごしている聖句を、主の恵みの証しとして書いた」という。佐藤氏が「書くことによって祈ることもできる」と話す通り、書が祈りであり、証しであることが伝わってくる。
展示初日はあいにくの大雨となったが、50人以上が訪れ、秋晴れとなった2日目は祝日の「文化の日」であったこともあり、開場直後から来場者の足が途絶えることのないほどの盛況ぶりだった。会場中央には「体験コーナー」も設けられており、同センターに所属する書道の先生の手ほどきを受けて、作品を書くこともできる。
クリスマスが近づいていることから、「『よいしらせ』と書いてみませんか」と声を掛けられた20代の女性は、「中学校まで書道をやったけど全然だめだった。普段文章を書くのは全部パソコンだから自信がない」と、ひらがなよりもバランスの取りやすい漢字で、「信仰・希望・愛」と書くことに挑戦していた。また、キリスト教系雑誌の案内を見て初めて来場したという50代の女性は、「もう一度聖書を開いて確かめてみたいと思う御言葉がたくさんあった」と感想を話してくれた。
聖書には、「あなたたちはこれらのわたし(神)の言葉を心に留め、魂に刻み、これをしるしとして手に結び、覚えとして額に付け、(中略)あなたの家の戸口の柱にも門にも書き記しなさい」(申命記11:18~20)と書かれている。またパウロは、「自分の手で挨拶を記します。これはどの手紙にも記す印です」(2テサロニケ3:17)と自筆で手紙を書くことにこだわった。手で書く言葉の持つ力を体験しに、会場に足を運んでみてはどうだろうか。
聖句書道東京展は、5日(木)午後2時まで。小津ギャラリー(日本橋本町3−6−2 小津本館ビル2階)で。詳細・問い合わせは、東京展責任者の伊藤青風さん(電話:029・831・5031)まで。