【CJC=東京】香港などのカトリック系メディアは、中国陝西省西安近郊、周至教区のマルチン・ウー・キンジン司祭(47)が10日、周至の「無原罪の聖母マリア大聖堂」で司教に叙階されたと報じている。同司祭は2005年にバチカン(ローマ教皇庁)の承認を受けて司教に叙階されたが、中国政府が難色を示したため「秘密叙階」となり、これまで公然と司牧活動を行うことはできなかった。
10日の叙階式典は、同省楡林教区のヤン・シャオティン司教と西安教区のアントニー・ダン・ミンヤン司教が共同司式した。ヤン司教は中国天主教(カトリック)司教会議副議長。司祭73人も参加した。「聖堂内は素晴らしい雰囲気が保たれていたが、外側には制私服の警察関係者が多数おり、緊迫した状況だった」と匿名の教区関係者はUCAN通信に語った。
「叙階は政治的なものに過ぎない」と、「ヨセフ」と名乗った参列者の1人は語る。「表面では、ウー司教のために全てが行われたように見える。実際には叙階前夜、司祭たちは皆政府の監視下におかれていた」「司祭は信徒3人だけの同行が認められ、同じ宿舎に泊められ、そして当日は一緒に大聖堂に送られた」「大聖堂の中では当局が電気、放送、食事から演説や垂れ幕などまで全てを事前にチェックした」と言う。
「ヨセフ」氏によると、司教の担当教区からの記念銘板は、「信仰を守り、キリストに忠誠を」と書かれていたため、公開を許されなかった。バチカンに認められたものではないと見られる認証状は、式典で、省政府や北京から派遣された宗教関係者列席の下で読み上げられた。
これまでの例から見ると、秘密裏に叙階された司教が政府の認可を得るには、教皇の指令なしに叙階された「違法司教」とミサを共同司式し、中国天主教愛国会に加盟することが条件のようだ。ウー司教は、昨年「違法」の司教協議会会長マ・インリン司教とミサを共同司式したという。UCAN通信は両司教に問い合わせたが、確認は拒否された。バチカンからも司教任命が認可を得てのものとの確認を取ろうとしたものの、いまだ成功していない。
ウー司教は、2005年に米国留学から帰国後にバチカンの承認を受けて秘密に叙階された。そのことを教区の司祭に明かしたのは06年5月22日のことだった。そして9月には政府の尋問を受け、大聖堂から所属不明の集団によって拉致されたが、5日後に解放されている。
07年3月、再教育のため喚問され、所在不明となったが、西安教区の小神学校に軟禁されていることがその後明らかになった。近年は監視が緩和され、訪客との会談や非公開にミサを行うことはできるようになった。しかし昨年まで自身の教区に戻ることは許されなかった。