キリスト教精神に基づき世界の子どもたちのために活動するワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)は、国連が定めた7月30日の「人身取引反対世界デー」に合わせて、15日から、人身取引(人身売買)に関する啓発教材の無料提供を始めた。この教材は、中高生以上を対象に制作されたもので、人身取引を終わらせ、世界や日本社会に溶け込んでいる犯罪を事前に防ぐことを目的としている。
同団体によると、人身取引は、現代の奴隷制とも呼ばれ、国際労働機関(ILO)は、その犠牲者が世界で約2090万人に上ると報告している。人身取引による不正利益は3兆円ともいわれ、強制労働や性的搾取などによって、被害者の権利と尊厳を否定し、肉体的・精神的ダメージを与えている。
この深刻な問題は、発展途上国だけではなく、日本でも起きている。特に、児童ポルノやJKビジネス(女子高生によるマッサージ、添い寝、過激なポーズでの撮影会など)をはじめとした性的搾取、研修・技能実習制度で日本に来た外国人に対する暴力や脅迫、過酷な労働条件、人権侵害などが問題になっているという。
米国務省人身取引監視対策部が発行する「人身売買報告書」では、日本は2013年度まで10年連続で、「人身取引根絶の最低基準を満たさない国」という、先進国では最低のランクに分類されていた。14年度にはようやく評価が上がったが、それでも4段階評価の上から2番目で、「最低基準を十分に満たしていないが、改善に努めている」というランク。
配布される啓発教材は、人身取引の現状や日本の課題を理解するためのデータや対策が冊子にまとめられ、人身取引の被害から子どもたちを守るために、総合学習や国際理解教育などでの活用を見込んでいる。希望者には、視聴覚教材(DVD)も用意されているという。詳細・申し込みはこちら。