サッカーのワールドカップ・ブラジル大会が6月13日から7月14日まで約1カ月にわたって開かれるのを前に、同国のキリスト教会や他の宗教者たちがワールドカップに正義や平和を求めている。一方、同国の貧困層はその高い開催費用に抗議している。
ブラジル・カトリック司教協議会(CNBB)の慈善・正義と平和の司牧のための司教委員会は、「ワールドカップに尊厳と平和を」というポルトガル語のしおりを作成し、公式ウェブページに掲載して、暴力や奴隷労働、人身売買、性的搾取、人種差別のない安全なワールドカップの成功を呼びかけている。
また、カトリックニュース通信(CNA)によると、神に自らを捧げ人身売買に反対する女性たちの国際的ネットワーク「タリタ・クム(Thalitha Kum)」(事務所=ローマ)は、「いのちのために人身売買に反対して競技しよう」と題する運動をワールドカップ開催中に行っている。この運動は5月20日に開始され、米国の駐バチカン大使館がそれを支援しているという。
また、ラテンアメリカ・カリビアン通信社(ALC)が26日に報じたところでは、ワールドカップの開催地の一つで、リオデジャネイロにあるサッカー専用スタジアムであるマラカナン競技場で、諸宗教による祝祭が行われ、6月に始まるワールドカップに対するブラジルの諸宗教の伝統が持つ希望を表したという。
ALCによると、この祝祭は、司教や司祭、牧師、僧、ブラジルの混合宗教、イスラエルの代表、そして社会学者が集まり、平和かつきれいで公正な競技を呼びかけ、スポーツを様々な人たち同士の結びつきのための機会として是認するものとなったという。
一方、バチカン放送局が28日付で報じたところによると、儀式の衣服をまとった先住民がブラジルの首都ブラジリアで、サッカーのワールドカップにかかる莫大な費用に反対して抗議に加わった。同国の貧困層は怒りの声を上げているという。
これに対し、オーストラリア・カトリック教会の国際援助団体であるカリタス・オーストラリアは、世界で最も貧しい人たちのために、学校や職場、地域社会で社会正義のために募金をし人々を教育する「カリタスKs」という活動の中で、ブラジルの貧しい人たちのために「正義のためのスポーツを(Sports for Justice)」という催し物を行っているという。
「世界の目は、2014年に開かれるサッカー・ワールドカップと、2016年のオリンピックに注目することでしょう。でも、多くの人々がスポーツのスタジアムやホテルに道を開けるためにサンパウロで立ち退きに直面していることから、ファベーラ(ブラジルの貧困層が住むスラム街)の住民たちは、これらの催し物が本当に誰のためのものなのかと問いかけています」と、同団体は英文ウェブページに記している。
「この憐れみプロジェクトで、私たちはあなたの学校がカリタスKsの『正義のためのスポーツを』というとても特別な催し物を開き、ワールドカップやオリンピックのために立ち退きに直面している、ブラジルのサンパウロにいるファベーラの住民と連帯して立ち上がるようお招きしています」