レビ記15章
(1)15章の内容と前後の流れ
① 15章の内容は、32節と33節に要約、「以上が、漏出のある者、また精を漏らして汚れた者、また月のさわりで不浄の女、また男か女で漏出のある者、あるいは汚れている女と寝る男についてのおしえである」。
目的は、31節に、「あなたがたは、イスラエル人をその汚れから離れさせなさい。彼らの間にあるわたしの幕屋を汚し、その汚れたままで彼らが死ぬことのないためである」。きよめ、イスラエルの民の生。
② 全体の流れ
12章、積極的、出産。
13章、特別、皮膚病、検査。
14章、皮膚病、癒やし、贖い。
15章、漏出、異常。
この全体の流れから、創世記1章に明示されている創造、2章の罪、3章の救いの三要素全体から15章の内容を受け止める必要を確認します。
(2)15章の構造と美しい調和のとれた表現
体内からの漏出される正常なものと異常のものの両面。男子と女子、そして男女。
① 男子
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A 1~15節、異常なもの。13~15節、きよめ。
B 16、17節、正常なもの。
C 男女 18節、中心「男が女と寝て交わるなら、ふたりは共に水を浴びる。彼らは夕方まで汚れる」。参照12章、通常の結婚生活におけるいけにえ。
② 女子
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B’ 19~24節、正常なもの。健康に配慮。
A’ 25節以下。28節、「もし女がその漏出からきよくなったときには、七日を数える。その後にその女はきよくなる」、きよめ。
男女の別、性差の事実。しかしそれとともに男女の別なく人間として一つ。中心点、創世記1章27節、「神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして彼を創造し、男と女とに彼らを創造された」。まさに本来の人間、人間らしい人間が主眼(マルコ1章17節、「イエスは彼らに言われた。『わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしてあげよう』」。
(3)15章の意味
① 衛生、健康管理の上から
② 神学的意味、聖書全体の流れ
神に創造され、祝福された人間存在。その中での性、生殖。
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この人間の存在の深みまで蝕む罪の影響。創造された本来の祝福された姿(性を含め)から、ずれ・ゆがみの現実。歴史的背景、カナン偶像礼拝と性的混乱の密接な関係。一方では、性的放縦、他方では、性に関する一切を汚れとする極端。
何故、「汚れているのか」直接の理由を述べていない。
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新約聖書の光、マルコ5章25~34節。罪を示しつつ徹底的な救い、救いの祝福を受ける。根本的には、創造の神、出産の祝福、ヘブル13章4節、「結婚がすべての人に尊ばれるようにしなさい。寝床を汚してはいけません。なぜなら、神は不品行な者と姦淫を行う者とをさばかれるからです」。
さらに血の結び、血縁を越えた霊的な関係の豊かさ、たとえば、マザーテレサこそ、全人格的意味で母のイメージ、「主は子を産まない女を、子をもって喜ぶ母として家に住まわせる。ハレルヤ」(詩篇113篇9節)。
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宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。宇都宮キリスト集会牧師、沖縄名護チャペル協力宣教師。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、『哀歌講解説教 哀歌をともに』、『ルカの福音書 味読身読の手引き①』以上クリスチャントゥデイ、など。
■外部リンク:【ブログ】宮村武夫牧師「喜びカタツムリの歩み」