おことばどおりに
ルカ1章26~38節
[1]序
前回の洗礼者ヨハネ誕生の知らせの記事に続き、今回は、主イエスご自身の誕生の知らせを伝える箇所を味わいましょう。ヨハネの場合は聖所で祭司に告げられたのに対して、主イエスの場合はナザレの町のひとりの処女に告げられました。小さな目立たない始まりです。
[2]マリヤへの呼びかけ
(1)マリヤの紹介
28節に見る、「恵まれた方」との呼びかけ。30節では、「神から恵みを受け」と。マリヤの使命を示しています。
(2)「あなたはみごもって、男の子を産みます」
処女降誕。イザヤ7章14節の預言。マリヤを通して、「男の子」は人間としての性質を受け、全き人となられたのです。同時に、このお方は、「すぐれた者となり、いと高き方の子と呼ばれます」(32節)とあるように、さらに35節で明らかにされているように神としての性質をお持ちになる、全き神にして全き人なるお方です。
(3)「神である主は彼にその父ダビデの王位をお与えになります」
ダビデ王国の再建、回復はキリストにおいて成就。これは直接イスラエルに与えられた約束であると共に、全世界に対しての約束です。
(4)「聖霊があなたの上に臨み」
34節に見る、「どうしてそのようなことになりましょう」と、マリヤは経過と方法について尋ね、35節の大切な答えが与えられます。「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます。それゆえ、生まれる者は、聖なる者、神の子と呼ばれます」
[3]マリヤの応答
(1)「主のはしため」
マリヤは自分の立場を自覚しています。主なる神の意志に従い用いられることを願い、自らを神の御前に差し出しています。
(2)「あなたのみことばどおりになりますように」
マリヤは語られたことばを信仰をもって受け入れています。
[4]結び
(1)処女降誕の意味。使徒信條、「主は聖霊によりてやどり、処女マリヤより生まれ」。主イエス・キリストにおいて、神性と人性が一つに結ばれ、主イエス・キリストを通して、神と人との間の和解。
(2)マリヤの信仰。神の力を確信、神の呼びかけを受け入れ、約束のことばに望みを置く。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。