米大学において数十以上のキリスト教キャンパス伝道グループが活動しているが、各伝道グループがそれぞれ大学キャンパスでの学生伝道において、互いに競争することなく、協力して伝道活動を行うための協定の更新がなされ、17もの宣教団体がこれに賛同を示した。
全米規模の大学宣教団体「インターバーシティ」・「クリスチャン・フェローシップ」、「キャンパス・クルセード・フォー・クライスト」(CCC)および「ナビゲーターズ」は共に同じ大学で伝道活動を行っており、各伝道団体は昨年10月、「シカゴ協定」にて「主の下に学生たちを招く」という一致した宣教の使命のもとに協力して伝道活動を行うことを改めて確認し合った。
インターバーシティ広報担当のゴードン・ゴヴィエ氏は16日、米クリスチャンポストに対し「私たち人間は、自然と他者と競争しようという欲求に駆られます。大学のような環境下にあって、伝道団体それぞれが同じ学生を伝道しようと『競争心』を持ってしまっていることを自覚しているのではないでしょうか。私たちはこのようなイエスの証人としての活動を妨げる競争を避ける必要があります。結局は、伝道団体はそれぞれ異なれども同じ神に仕えている身なのですから」との見解を述べた。
インターバーシティ、CCCおよびナビゲーターズ指導者たちは昨年10月に米シカゴで会議を行い、40年前に行われた共同コミットメント声明を更新した。当時は異なる宣教団体が同じ大学キャンパス内で伝道を行うことに関して、それぞれの地域ごとの競合による問題を防ぐために共同コミットメント声明が出された。
より「競合」の問題を現実的に解決するために、それぞれの伝道団体らは1971年にトレイル・ウエスト協定を結んだ。この協定に調印することで、各伝道団体がいかなる大学キャンパスもそれぞれの伝道団体が伝道する排他的なキャンパスとして見なされないことに合意し、キャンパス内の他のキリスト教伝道団体と関係を構築し、すべての団体が「キリストのからだ」として用いられていることを確認していた。
その後協定の内容が修正された「シカゴ協定」では「我々はそれぞれの伝道団体・メンバーからの批判を避け、良く関係を結んでいく。地域的および国家的レベルの問題に関してお互いが謙遜にコミュニケーションを図ることで、主の御心を共に模索しながら問題解決をしていく」ことが含まれるようになった。またそれぞれの伝道団体は、他の伝道団体に既に所属しており、その指導的ポジションにある学生や教員を強引に自分の伝道団体に伝道しないことも新たな協定の下で合意することになった。
このシカゴ協定には、キャンパス・アウトリーチ、カイアルファなど予想を上回る17の伝道団体が1月に賛同を示した。インターバーシティによると「シカゴ協定はそれぞれの伝道活動がキリストの御業を大学キャンパスに伝えるためのユニークな伝道活動を行っている。私たちはそれぞれの伝道活動のスタイルを保持していくことに熱心になっています」と述べた。
米国でも青年が大人になるにつれ教会に通わなくなる傾向があり、特にその傾向が顕著なのが大学時代となっている。米国教会牧師、宣教師らからその問題が提起されていた最中にシカゴ協定がなされることになった。米国調査団体「アンサーズ・イン・ジェネシス」によると、20歳から29歳の福音主義キリスト教徒のうち95%は小中学生時代に毎週教会の礼拝に出席していたが、大学生になっても、毎週教会の礼拝への出席を保ち続けた人の割合は11%にまで急落していることが示された。
大学生となるにつれ教会に来なくなる米国人が多い一方、キャンパス伝道団体ではイエスキリストの御言葉に耳を傾ける多くの学生がキャンパス内に存在していることを証ししている。ゴヴィエ氏は「キャンパス内での霊的環境は『宗教的』ではなく『精神的』な哲学に依存するようになっている。これは宣教にとっては良い環境だと思います」という。
米伝道団体はそれぞれ、さらに多くのキャンパスでの伝道活動を模索しており、シカゴ協定では、各伝道団体が協力した伝道活動を行うことで、よりキャンパス伝道において大きな影響力を持つようになるとの方向性で合意を示している。