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Gゼロ時代の津波石碑

Gゼロ時代の津波石碑(9)対イラン戦争の根源的理由と「戦い」の新約的意味 山崎純二

2026年3月25日18時08分 コラムニスト : 山崎純二
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関連タグ:山崎純二イラン米国

前回の「日本人が宗教アレルギーとなった経緯」では、日本特有の歴史的背景について書かせていただいた。しかし、キリスト教が誤解や曲解をされやすく、さらには政治利用までされてしまった歴史というのは、日本だけが直面したことではない。むしろ、世界(西欧)史において、より顕著である。

そして、このことは過去のことではなく、現代においても、宗教の影響はより直接的なものとして国際政治の中に表出している。例えば、米国の一部の福音派の中には、イスラエルの「敵」に対する武力攻撃を支持し、さらには第三神殿の再建に助力することで、キリストの再臨の条件を整えようとしているという考え方を持つ指導者たちもいる。しかし、新約聖書においてキリストが否定している敵対的武力行使によって人間が神の計画(時)に影響を与えることはできないし、するべきでもない。

それより私たちキリスト者が肝に銘じなければならないのは、解釈の余地のない、より直接的なキリストの言葉である。確かに聖書には多くの自由解釈の余地はあるが、それが曲解にならないためには、直接的なキリストの言葉を、比喩的な解釈に優先させるという原則が必要である。彼はこのように語っている。

しかし、わたしはあなたがたに言います。自分の敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい。(マタイ5:44)

さて、このような現代の事象を判断するためにも、拙著の中から、過去の西欧キリスト教の問題点について、見出しの部分だけ書き出してみたいと思う。これにより、いかに私たち人間が、聖書本来の教えから乖離(かいり)しやすいかということを、皆様と一緒に確認できればと思う。

  • 労働に対する両極端の誤謬(ごびゅう)
  • 植民地主義とセットで行われた宣教活動
  • 聖地奪還という大義名分のもとに行われた十字軍
  • 免罪符─信仰(救い)の商品化─
  • 科学と衝突した天動説などの宗教的思い込み
  • 異端審問(魔女狩り)
  • 反ユダヤ主義
  • 同性愛者に対する迫害の歴史
  • 禁酒法等の厳格な道徳法規

これらの歴史的な問題の多くは、宗教が外的な力や制度として誤用された事例であるが、同様の構造は、より身近な私たちの内面の性質としても現れる。例として「労働に対する両極端の誤謬」を考えてみたい。

限定的ではあるが、西欧において、労働が、罪の結果としての世界に属する営みと見なされる傾向があった。そして、一部の修道院などにおいては、世俗的労苦から距離を置くことが志向されることもあった。

一方で、マックス・ウェーバーの著作『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』においては、プロテスタントの倫理が資本主義の発展に寄与したとされている。これは、予定説を主張するカルヴィニズムにおいて、自分が選ばれているという救いの確証に対して不安を抱く人々が、禁欲で勤労的な生活を送り、結果として資本が蓄積され、資本主義が発展したという経緯である。

ちなみに、この傾向は現代に至るまで、間接的に受け継がれている。例えば、オランダにおいては、経済的に余裕のある人でも、靴下の生地がボロボロになっていたり、穴が空いていたりする。場合によっては、左右バラバラの靴下を履いているケースも何度か見た。これは、一概にカルビン主義と短絡的に結び付けることでもないのかもしれないが、やはり住んでみると、質素倹約をモットーとする伝統の残り香のようなものを感じるのである。

話を戻すと、同じ聖書信仰を持ちながら、一方で労働を避け、一方では資本主義の発展に寄与するほどの勤労精神を生み出すという両極端の解釈を生み出していたということになる。もちろん、勤労精神自体は否定されることではないが、それが不安や恐れにかられていたものであるとするならば、何か偏った理解に陥っているということになる。

本来のキリストの教えは、罪の赦(ゆる)しを宣告し、弱者や孤独な魂を慰め、不安や貧しさの中にいる者たちに福音(良き知らせ)を宣べ伝えるものである。そして、神からあなたへのメッセージは「神はあなたを息子・娘として愛している」というシンプルでパワフルなものであり、それに多くの人が感銘を受けてキリスト教は世界宗教になったのである。

では、なぜ「良き知らせ」であるはずの聖書に立脚しているキリスト教は、歴史的にさまざまな過ちを繰り返してきたのであろうか。

もちろん、歴史的な事象は、権力構造や時代の流れなど、さまざまなことに起因しているので一概には言えないが、一つの側面として、「新約神学」が、深く理解されてこなかったのではないかという点を指摘したい。新約神学の要は、次の聖書箇所に表れている。

律法はモーセをとおして与えられ、めぐみとまこととは、イエス・キリストをとおしてきたのである。(ヨハネ1:17、口語訳)

ここには、「律法」と「恵み」という2つの神学的概念が書かれている。律法とは、簡単に言えば、「善いことをしなさい、そうしたらあなたは祝福される」「悪いことをしてはならない、したらあなたは呪われる」というものであり、分別をわきまえない子どもに対して、体罰の伴う教育をするようなものである。

このような律法的な宗教の下では、さまざまな禁止事項が作られ、人々は抑圧を感じる。そこでは、お酒や性的なことにはじまり、さまざまな行動に規制がかけられ、人々は「不自由」であると感じるのである。また、戒律を守れないことによる良心の呵責(かしゃく)や、神の裁きに対する不安などをも抱え得てしまう。

例えば、愛のある親からの善い戒めであっても、若者たちはそれを煙たがるということがあるが(欧米の一部の知識人たちがひたすらに宗教を否定する背景には、知的合理性というよりは、このような感情があることを知る必要がある)、まして、一部の指導者たちの偏見や誤解、また金銭的必要によって作られた堅苦しいルールや偏った教えは、人々を幻滅させ得る。

さらに、そこに「自分たちは優れた教えを持った先進的な国であるから、他国を植民地としてもよい」というような横暴さや、旧約聖書に描かれているような「武力」を使ってでも、神の計画を遂行することを是とするような誤謬が加わると、福音の輝きは失われ、感受性の高い人ほど受け入れられないものに変質してしまうのである。

キリストは明らかに、「平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう」(マタイ5:9、口語訳)と語っている。つまり新約聖書においては、旧約的な「戦い」の概念は、内なる戦いへと昇華されるべきであると教えているのである(エペソ6:12)。

それは、自分の内面の「憎しみ」と格闘して「赦す」という戦いであり、欲や罪と戦って人を愛するという戦いである。そして、その戦いすらも、私たち主導のものではない。なぜなら、まずキリストが十字架上で血を流しながら、私たちの罪を「赦し」、父なる神が無条件で一方的に私たちを愛してくださったからである。

これは教会の内にいる現代の欧米のクリスチャンであっても、必ずしも全員が明確に理解しているわけではない。であればなおさら、キリスト教を外部から眺めている日本社会においては、余計に理解されづらい。そして「宗教=怖い」というイメージを持たれている方々も少なからずいる。それは教会側の問題でもあるので、私たちは真摯(しんし)に誤解を解き、聖書本文が何と語っているのかを伝える努力をし続けなければならないのだと思う。

さて今回、本書の原稿と今現在の状況を見渡したときに、「恐れ」や「不安」というのが、大きなキーワードになっていると感じる。禁止事項や宗教的ルールの厳格化、労働に対する誤謬に至るまで、私たちは恐れの故に神を誤解し、不安の故に聖書を誤読し続けてきたのだと思う。

それは、現代の戦争においても同様のことが言える。ロシアはNATOの東方拡大を恐れ、欧州はロシアによる侵略を恐れている。イランはイスラエルからの攻撃を恐れ、イスラエルはイランの核開発を恐れている。

つまり、私たちは神の言葉に不安を感じ得るし、お互いの存在を恐れ得てしまうのだ。だから私たちは、誰かの聖書解釈だけではなく、聖書自体、キリストご自身の言葉に直接耳を傾けなければならない。キリストは弟子たちに対し、このように力強い「平安」の宣言をされた。

わたしは、あなたがたに平安を残します。わたしは、あなたがたにわたしの平安を与えます。わたしがあなたがたに与えるのは、世が与えるのとは違います。あなたがたは心を騒がしてはなりません。恐れてはなりません。(ヨハネ14:27)

そして、キリストはただ言葉で平安を語られただけでなく、ご自身の命を賭することを通して、私たちに対する神の愛を示してくださった。そして、彼の言葉と行動によって神の愛を悟った使徒たちは「恐れ」から解放された。最後に「ヨハネの手紙第一」の箇所を引用させていただきたい。

愛には恐れがありません。全き愛は恐れを締め出します。なぜなら恐れには刑罰が伴っているからです。恐れる者の愛は、全きものとなっていないのです。私たちは愛しています。神がまず私たちを愛してくださったからです。(Ⅰヨハネ4:18、19)

私たちは敵を愛すべきだと言われ、それが正しいことが分かっていても、愛することができない。それどころか、自分を愛してくれている親や友人さえも十分に愛することのできない、愛の欠けた者であり、結果として不安や恐れの中にいる者である。また私たちは、どこかの国や指導者が特別に悪いという他責思考に陥りやすく、聖書を誤読してしまう者である。

しかし神は、そのような私たちを、そのままの状態で受け入れ、赦し、一方的に愛し、さらには平安を告げてくださるのである。これこそが、新約聖書によって啓示された神の「恵み」であり、それは全ての民族に向けて語られている福音である。

私たちはこれ以上悲しい人が増えることのないよう、神の言葉とその愛に、耳と心を開いていければと思う。

*

本稿は拙著『Gゼロ時代の津波石碑―再び天上の神様と繋がる日本―(21世紀の神学)』の抜粋です。全文をお読みになりたい方は、ぜひ書籍をご覧ください。

山崎純二のユーチューブチャンネル「21世紀の神学―Gゼロ時代の津波石碑―」の方でも、さらに踏み込んだ内容が発信されていますので、興味のある方はこちらもご視聴いただけます。

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※ 本コラムでは、特に断りのない限り、聖書の引用は新改訳(第3版)を使用しています。

◇

山崎純二

山崎純二

(やまざき・じゅんじ)

1978年横浜生まれ。東洋大学経済学部卒業、成均館大学語学堂(ソウル)上級修了、JTJ宣教神学校卒業、Nyack collage-ATS M.div(NY)休学中。米国ではクイーンズ栄光教会に伝道師として従事。その他、自身のブログや書籍、各種メディアを通して不動産関連情報、韓国語関連情報、キリスト教関連情報を提供。著作『二十代、派遣社員、マイホーム4件買いました』(パル出版)、『ルツ記 聖書の中のシンデレラストーリー(Kindle版)』(トライリンガル出版)他。本名、山崎順。ツイッターでも情報を発信している。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:山崎純二イラン米国
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