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21世紀の神学

21世紀の神学(30)伊藤貫氏が提唱する古典教育とセオセントリズムの復権 山崎純二

2025年8月28日12時04分 コラムニスト : 山崎純二
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関連タグ:山崎純二

現在のユーチューブは飽和状態にあり、有名人による派手な企画でさえ、再生数が伸び悩んでいるといわれています。しかし、そのような中で、真面目な国際政治や文明論を一人で語り、数十万再生数超えの長尺動画を多発し続けている人物がいます。その方の名前は、国際政治学者の伊藤貫氏です。

彼は、過剰な言説や最新のトレンド、時流に合わせた内容ではなく、古典に基づく思想の深みで、多くの人々を引きつけている稀有(けう)な存在です。

人間中心主義(ヒューマンセントリズム、ヒューマニズム)

彼が最近公開した講義によると、現代社会は「人間中心主義(ヒューマンセントリズム、ヒューマニズム)」を前提として動いています。これは、啓蒙思想以来の潮流であり、人間(自己)を中心として、個人の幸福や自由を追求するものです。

しかし「人間中心主義」を悪く言えば、「人間の欲望に奉仕するだけの論理」ということになります。人は誰もが自分に都合の良い理屈を作り出すため、人間中心的な考え方だけでは、真に道徳的になることも、幸福になることもできず、このような思想の土台の上では、書店に並ぶ数々の新刊も、近年発達した心理学や教育学なども、ろくなものではないと、彼は看破しています。

古典の復権

例えば、現代の教育学者などは古典教育に反対し、古典を教育から排除しようとしています。それは、現代の物差しからは、古典の内容が「性差別主義的」「白人中心主義的」であると見えるからです。

例えば、旧約聖書の時代背景は、家父長主義(Patriarchy)ですし、イエスの十二使徒は皆、男性です(もちろん、女性たちも大きな役割を担っていますが)。そして、プラトン、アウグスティヌス、カント、ヘーゲルなどの西欧哲学の系譜は、ほとんどが白人男性によって紡がれています。

しかし、価値判断やまともな道徳規範を身に付けるためには、ポリコレを重視した新刊を読むことではなく、過去の人類の歴史の中で、時の洗礼を経て残ってきた古典を学ぶことが必須であると、伊藤氏は指摘します。そして、人類の歴史の中で読み継がれるべき重要な古典は、せいぜい50冊か、多く見積もっても200冊程度であると見立てています。

古典教育

彼はさらに続けて、学校教育においては、小学3年生から高校3年生まで、毎朝30分古典を読ませるべきだと提言します。そして逆に、新刊本はほとんど読むべきではなく、むしろ価値判断が混乱したり、鈍くなったりするので、99・99%は読まない方が良い、多くの本を読むと、逆に愚かになるとまで述べています(詳しくは動画を視聴してください)。

神中心思想の提唱

伊藤氏は、こうした状況に対して「神中心主義(セオセントリズム)」を提唱します。これは、聖書を含めた古典由来の思想に根ざし、人間を超えた価値規範を仰ぎ見る立場です。

ソクラテスやプラトン、さらにはカントも、人間の知性や言語が、究極的な真理や神を把握できないことを認めました。そのため、神を理性によって証明するのではなく、「直感」によって感じ取る他はなく、それを非科学的だと無視してはいけないのです。

そして、神の存在を感じる人は、人間中心の価値判断だけでは判断しません。人間中心主義と神中心主義との間は、多くの場合、対立していて、そこに緊張関係が生まれるからです。

伊藤氏自身も、「人間にとって都合が良いか」だけでなく「神様から見ればどうなのか」という二元論的視点から判断しようと心がけていると言います。

福田恆存

世界的に見ても、現代は人間中心主義の言論人が隆盛しています。しかし、そのような中でも、神中心主義的な複眼的視点を持っている思想家たちはいて、伊藤氏はこのような人物たちの著作に触れて、神中心主義の視点に気付くことができたと、過去の経緯を回顧しています。

残念なことに、日本の近年の思想家や論壇人の中で、このような視点を持っている人は皆無です。しかし、そのような中でも伊藤氏は、福田恆存氏を高く評価しています。

彼は、カトリック的世界観を受け入れながらも教会に属さず、自身を「無免許運転のカトリック」と称した思想家です。彼の文章の中には誇張がなく、二元論的視点を持った稀有な存在であるとのことです。

最後に

もちろん、既にキリスト教信仰を持っている方々にとっては、今回の内容は至極当然のことなのかもしれません。教会では「人間的に〜」という言い方がありますが、それは裏を返すと、神中心主義を前提にしているということです。

ただそれでも、教会の運営方針や私たちの日々の生活の中には、人間中心主義的な部分が反映されてしまっていることは否めないでしょう。今回の記事の内容が少しでも、私たちの歩みを振り返るための参考になればと思います。

また、伊藤氏が語るようなコアなメッセージが、一般の多くの人々の関心を引いているということ自体が、日本が変わっていく予兆なのかな、とも期待する今日この頃です。

お知らせ

さて、私は今週、横浜に戻ってきました。前々から告知させていただきましたが、ぜひ皆様とも直接お会いしたいと思い、JTJ宣教神学校同期の進藤龍也牧師を誘って、ゴスペルトークイベントを企画させていただきました。興味のある方は、お越しいただけるとうれしいです。詳細は、以下の通りです。

「罪人の友」主イエス・キリスト教会(埼玉県川口市)の進藤龍也牧師と、クリスチャントゥデイのコラムニスト、山崎純二氏の対談イベント「神様との出会いで人生が変わった」が、8月30日(土)に同教会で行われます。予約不要で、誰でも気軽に参加できます。入場無料です。

日時:8月30日(土)午後2時から
場所:「罪人の友」主イエス・キリスト教会(埼玉県川口市南鳩ヶ谷5丁目16−18)
会場へのアクセスは、同教会のホームページを。

山崎純二のユーチューブチャンネル「21世紀の神学―Gゼロ時代の津波石碑―」の方でも、さらに踏み込んだ内容が発信されていますので、興味のある方はこちらもご視聴いただけます。

山崎純二の論考をもっと詳しく読みたい方は、書籍『Gゼロ時代の津波石碑―再び天上の神様と繋がる日本―(21世紀の神学)』を手に取っていただければと思います。

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◇

山崎純二

山崎純二

(やまざき・じゅんじ)

1978年横浜生まれ。東洋大学経済学部卒業、成均館大学語学堂(ソウル)上級修了、JTJ宣教神学校卒業、Nyack collage-ATS M.div(NY)休学中。米国ではクイーンズ栄光教会に伝道師として従事。その他、自身のブログや書籍、各種メディアを通して不動産関連情報、韓国語関連情報、キリスト教関連情報を提供。著作『二十代、派遣社員、マイホーム4件買いました』(パル出版)、『ルツ記 聖書の中のシンデレラストーリー(Kindle版)』(トライリンガル出版)他。本名、山崎順。ツイッターでも情報を発信している。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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