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聖書原語への招き

聖書原語への招き─霊に燃え、主に仕えるために(4)新約聖書をギリシャ語で読むメリット 白畑司

2026年3月12日16時33分 コラムニスト : 白畑司
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新約聖書をギリシャ語で読むなんて、これまで考えたこともないと言われる方々も少なくないと思います。しかし、今のAI時代には、聖書を原語で学ぶハードルはとても低くなっています。

試しに「チャットGPT」で「新約聖書をギリシャ語で学ぶ利益を7つ挙げよ」と入力すると、次のように出てきます。

1. 聖書の意味をより正確に理解できる

翻訳は必ず「解釈」を含みます。原文を読むことで、翻訳では一つにまとめられている意味の広がりを直接確認できます。原語では意味の幅を意識しながら読めます。

2. 文法が神学的意味を明確にする

ギリシャ語は動詞の時制・態・法が非常に豊かです。これが神学理解に直接影響します。救い・義認・赦(ゆる)しなどの出来事の性質が文法から見えてきます。

3. 強調点や著者の意図が見える

ギリシャ語は語順が自由なので、語順の変化によって強調が生まれます。これによって著者がどこを強調しているかが明確になります。

4. 聖書著者の思考世界に近づく

新約聖書は、ユダヤ思想、ギリシャ語文化という2つの世界の交差点にあります。コイネー・ギリシャ語を理解すると、当時の人々がどのように概念を表現していたかが見えてきます。

5. 聖句同士のつながりが見える

同じ語がどこで使われているかを見ることで、著者の神学的テーマが見えてきます。語彙(ごい)研究によって聖書全体の神学ネットワークが理解できます。

6. 誤解や過度な教理化を防ぐ

翻訳だけに依存すると、1)訳者の神学、2)教派的解釈に影響される可能性があります。原文に触れることで、聖書そのものに戻る作業(ad fontes)が可能になります。

7. 霊的読書がより深くなる

原語で読むと1)言葉の響き、2)文のリズム、3)表現の強さが直接伝わります。例えば福音書のイエスの言葉は、原文で読むと非常に生き生きとした口語的表現であることが分かります。これは聖書を読む体験を知的にも霊的にも深めます。

マタイ6章33節をギリシャ語本文で味わう

このメリットをすぐに体験するために、「神の国とその義を第一に」で有名な「マタイ6章33節をギリシャ語本文で出して日本語での読み方を表示してください」「それぞれのギリシャ語の言葉を解説してください」と入力すると、答えが出てきます。各自で確認してください。

ここでは、私が作成したインターリニアギリシャ語新約聖書のマタイ6章33節の前半から、新約聖書をギリシャ語で読むメリットを直接味わっていただければうれしく思います。

マタイ6章33節をインターリニアギリシャ語で示すと、以下のようになります。

聖書原語への招き─霊に燃え、主に仕えるために(4)新約聖書をギリシャ語で読むメリット 白畑司

注目すべき第一点は、ζητεῖτε(ゼーテイテ)が最初に来ることです。この語は、動詞、命令法、現在形、能動態、2人称複数です。原形が ζητέω(ゼーテオー)で、ギリシャ語辞書ではこの形で出てきます。その意味は「追求する、探し求める」です。

ギリシャ語は語順が自由です。また、強調される語は、文の最初に置かれます。ですから、最高度に強調されていることは「追求しなさい、探し求めなさい」です。

文法的には時制で現在形です。しかし、ギリシャ語動詞の時制は、時間的要素ではなく、動作の様態、つまり、継続している動作なのか、それとも終了した動作なのかが関心事です。この点について深掘りするだけでも、一般的な時制という視点とは全く異なっていることが分かって、ギリシャ語の世界をのぞき込んだことになります。

詳しい説明を望まれる方は、ギリシャ語の大家、A・T・ロバートソンの『A Grammar of the Greek New Testament in the Light of Historical Research(歴史研究に照らしたギリシャ語新約聖書の文法)』(1914年、邦訳なし、筆者が日本語訳済)を参照してください。

現在形は、継続動作、繰り返しの動作を示しているので、「(神の国とその義を)追求し続けなさい、探し求め続けなさい」となります。言葉を変えて拡大して表現すれば、「絶えず探求せよ、停止することなく、マンネリに陥ることなく、他の関心事に心と人生を奪われないで、追い求め続けなさい」「到達した地点に満足しないで、もっと深い所、もっと豊かな所、もっと高い領域を探し続けなさい」です。

能動態は、自分が主体的になって行う動作を指します。誰かに気を使ってとか、人目を気にしてとか、空気を読んでではなく、「追求し続ける、探し求める」のです。問題や困難があっても、誰かが教えてくれなくても、自分の意思を働かせてそうする動作を示しています。

命令形であることは、選択科目ではなく、必須科目であることを示しています。

求めることと探すこととの違い

マタイ6章33節での ζητέω の訳は、日本語では、文語訳、口語訳、2017を含む新改訳、新共同訳、協会訳、フランシスコ会訳、岩波訳も「求める」と訳されています。英語訳では、ほとんどが「seek」です。同じ語が、マタイ7章7節では「求めなさい、探しなさい、たたきなさい」で「探しなさい」と訳されています。

聖書ギリシャ語レキシコン(辞書)での最高峰といわれるBDAG(Bauer–Danker–Arndt–Gingrich)では、「自分の望みや目的を実現するために真剣な努力を払う、努める、目指す、得ようと努める、望む、願う」としています。

ですから、「神の国を探し求めよ」と訳す方がより原語に忠実であるといえるのではないでしょうか。

探し続けている人の特徴

探し続けている人は、現状に満足していません。周囲の人々の意見や考えに容易に同調しません。何かがあると信じて、期待しながらの行動をします。失敗と思われるものも、成功への一ステップと考えて、新しいチャレンジを選びます。

現状に束縛されない、諦めない、妥協しない、既成概念にとらわれません。自由な発想をします。新しい何かのために、探求、努力、工夫を惜しみません。

自然界でも、エジソン、グラハム・ベル、ノーベルといった人々は発明家として有名です。今は世界中の人々が、太陽電池、太陽光発電、原子力、インターネット、AIなど、「探す、探求、研究する」人々の恩恵にあずかっています。

自然界以上の世界が「神の国」です。主イエスが示した例は、マタイ13章の天の御国の例えの5番目の「畑に隠された宝」、6番目の「高価な真珠を探す大豪商」です。スミス・ウィルグスワースという偉大な信仰の聖徒は、「私は『現状に満足しない』ことに満足している」と言いました。

求めることと探すこととの違いを意識すると、「神の国」を探して手に入れるために、身を乗り出して探求する、必死に求める姿勢の信仰生活になります。神のなさる新しいことに敏感になります。

A・T・ロバートソンからの引用を結びにします。

ギリシャ語新約聖書ほど、暗黒時代からギリシャ語聖書を手にして抜け出した世界を若返らせるものはない。エラスムスは『ギリシャ語新約聖書』の序文で、自らの歓喜のときめきをこう記している。「この聖なるページは、キリストの心の生きたイメージを呼び起こすだろう。キリストご自身を、語り、いやし、死に、よみがえらせ、一言で言えばキリストのすべてを与えてくれるだろう。キリストが目の前に立っておられたら、その姿は見えなくなってしまうほどの親密さで、キリストをあなたに与えてくれるだろう」

ギリシャ語新約聖書は新約聖書である。それ以外はすべて翻訳である。イエスはギリシャ語のすべてのページから私たちに語りかけている。主はしばしばギリシャ語で語られたからである。イエスのこれらの言葉を理解するためには、どんな文法にも目を通し、最後まで読み進める価値がある。

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◇

白畑司

白畑司

(しらはた・つかさ)

1949年山形県生まれ。同県米沢市の福田町キリスト教会(現恵泉キリスト教会米沢チャペル)で信仰を決心。山形大学大学院でレーザーのコヒーレント効果を研究。日本電信電話公社(現NTT)電気通信研究所に在籍する。召命の御言葉で献身し、聖書神学舎(現聖書宣教会)で学ぶ。御徒町キリスト教会牧師を経て、84年から市ヶ尾キリスト教会の開拓伝道に従事。現在同教会主任牧師。カルバリー聖書学院(大川従道院長)で20年余り、新約聖書とギリシャ語の科目を担当。著書に『インターリニア新約聖書』(全32巻、2001〜04年、ポーロス会)。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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