もう数年前の話だが、2018年6月、ナイジェリアのプラトー州にあるキリスト教徒の村が、約300人の武装した過激派フラニー族の牧畜民に襲撃された。過激派の一団は無差別に発砲し、多数のキリスト教徒を殺害。人々の家や村の教会に火を放ったのだ。
一部のキリスト教徒家族らは武装集団から逃れ、近隣のイスラム教徒の村に避難した。すると、村のイマーム(イスラムの宗教指導者)が村に逃げきてきた262人のキリスト信者を保護した。女性や子どもらを自宅に隠し、男たちをモスクでかくまった。
武装した襲撃者たちは、キリスト教徒を追って村に侵入。イマームと対峙して彼を脅迫し、家とモスクを焼き払うとすごんでみせた。このイマームは、勇敢にも武装集団がモスクに侵入するのを拒み、中にいるのは全員イスラム教徒だと主張したのだ。他の村人たちも一緒になって口裏を合わせ、フラニ族がその地域から立ち去るようにと懇願した。
当時このイマームは、BBCの取材に対してこう答えた。40年前、この地域のキリスト教徒たちはイスラム教徒たちに対して寛容を示し、彼らがモスクを建てることを許可してくれたのだ。そのことを覚えていたイマームは、今度は自分たちが恩を返す番だと言わんばかりに、助けを求めてきたキリスト者たちを守りたいと思ったのだと語った。
今回の襲撃のように、彼がこれほどまでにひどい事件を経験したのは、イスラム教徒がキリスト教徒の隣村に住むようになってからの長い年月で初めてだという。
最初の襲撃のあった週の週末、11の村が襲撃され、約200人が死亡した。半遊牧民であるフラニ族はキリスト教徒の村々を襲撃し、土地を奪い取るのだ。彼らは建物や家々に火を放ち、無差別に発砲するのである。
近年のナイジェリアは、キリスト教徒にとって最も殺伐とした国である。子どもたちがベッドの中で殺されているケースもある。
暗い話の一方で、イマームの示した隣人愛は、砂漠の中のオアシスのような慰めを与える。このような義なるイスラムの友人に福音の恵みが届くように祈らずにはおれない。
このケースでは、キリスト者を殺すのがイスラム教徒であるなら、守るのもイスラム教徒だった。後者のようなイスラムが増えるなら、世界はもっと住みやすくなるのだろう。主が善良なイスラムを増やして、彼らを主イエスの福音による救いに導いてくださるよう、祈っていただきたい。
■ ナイジェリアの宗教人口
イスラム 45・1%
プロテスタント 37・1%
カトリック 12・1%
土着の宗教 3・3%
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