2024年3月11~23日、トルコ(首都はアンカラ)の大都市イスタンブールに旅した。旅の目的はシリア語を現地話者から学び、習得することにあった。通訳を日本人のK氏に依頼し、空港までお迎えいただいた。帰国の離陸まで通訳とガイドをしてくださり、大変素晴らしい時間を過ごすことができた。
シリア語教師は大学生のルカス君と指導者のミハエルさん。当初ミハエルさんのみであったが、父親の死去と葬儀で不可能となり、ルカス君が急きょ教えてくれて、最後にミハエルさんから学んだ。ミハエルさんが景教碑の下に彫られたシリア語をすらすら読み、訳されたことには大変驚いた。
シリア語の学習は始めのOLAF(オラフ)から最後のTAV(タヴ)の発音を繰り返し、RとLの発音が同じ発音となることを注意された。これは日本人の経験していないもので苦労した。
教科書は現地のシリアニー正教会で発行しているシリア語書籍を何冊か購入した。その中の2冊を紹介する。
現地はイスラムのラマダン断食月。彼らの断食は朝から日没までで、日没から一斉に食事を取る。イスラム教徒でない方や私のような旅行者たちは、断食日に関わりなく食事を得ることができたが、あいにく多くの食堂は閉店していた。シリアニー正教会も断食のダイエットがあった。
旅の目的はもう一つ、イスタンブールで日本語学校に集うトルコの方々有志に日本文化である書を教えることだった。日本語学校が企画してくださり、1クラス5人前後で計20数人の方々に漢字や仮名の成り立ち、日本文化についてお話しする機会を得た。参加者は熱心に学び、楽しい交流の場でもあった。私にとっても異文化交流の有意義なひとときであった。
主日にはシリアニー正教会の礼拝に参加し、100人以上の信徒さんたちと和気あいあいな愛餐会に参加し、食後の楽しい交わりも与えられた。執務室では書籍を数冊購入することができた。ここで今年のカレンダーやミニカレンダーを頂いた。ミニカレンダーにもシリア語が書かれていたので訳してみた。
シリア正教会は、東方ハリストス正教会やローマ・カトリック教会とは歴史の流れと神学が違い、特にマリア崇敬はなく、聖伝承よりもシリア語聖書を重視する初代教会の流れといわれている。ちなみに、古代にトルコの東のウルファから生まれた東方教会は、東方アッシリア教会を母体としてペルシアに向かい、中央アジアからバイブル・メシアロードを経て、唐代中国の長安に至って名を景教として栄えたのは有名である。彼らも同じシリア語で宣教と教会生活をしていた。
一方、シリアニー正教会はウルファから西に向かい、古代ローマ帝国領内でシリア語礼拝を行い、栄えてきた。これらはあまり知られていないので、私が紹介する形となった。
礼拝の最後に、主教が会衆に向けてメッセージし、その中でシリア語が唐代まで伝わったことについてお話しされていたことに感動した。(続く)
※ 参考文献
『古代シリア語の世界』(イーグレープ、2023年)
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
『景教碑の風景』(シリーズ「ふるさと春日井学」3、三恵社、2022年)
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