学校法人同志社(京都市)は17日、創立者の新島襄ゆかりの地として知られる群馬県安中(あんなか)市と、教育や文化、スポーツ、まちづくりなどの分野において相互に協力することを目的とした包括連携協定を締結した。
安中市は、安中藩士の父を持つ新島にとっては故郷であり、米国からの帰国後、キリスト教や海外文化を伝達する活動を本格的に始めた最初の地でもある。市内には、新島から洗礼を受けた30人が設立した「安中教会」や、新島の名前を冠した「新島学園」などがある。
17日には、安中市役所で締結式が行われ、同志社大学の八田英二総長兼理事長らが出席した。
八田氏は、安中教会や新島学園、また双方の設立に大きな役割を果たした湯浅家の連携により、安中市が新島の理念を現在にまで継承しているとして敬意を表明。協定については、「私たちが共有する目標に基づき、教育の質を向上させ、地域の発展を促進するための協力体制を確立するもの」と語った。
安中市の岩井均(ひとし)市長は、「今もその(新島が伝えたキリスト教の)教えは安中市の文化や教育に深い影響をもたらしています」とコメント。その一方で、昨今は人口減少や少子高齢化により、子どもの健全な育成や教育環境、文化の継承で課題が生じていると説明。今回の協定締結により、人材育成や地域振興にいっそう取り組んでいきたいと語った。また、学校法人などとの協定締結はこれが初めてだとし、今後の教育や文化を通じた地方創生の取り組みにも弾みが着くと期待を示した。
締結式の後には、協定締結を記念し、また同志社創立150周年記念事業の一環として、2つの講演も行われた。
元同志社大学神学部教授の本井康博氏は、「安中と同志社の史的連鎖―シン・中山道への道」と題して講演。同大卒業生で北京オリンピック陸上男子400メートルリレー銀メダリストの朝原宣治(のぶはる)氏は、「夢を追いかけて―諦めなければ夢は叶(かな)う」と題して語った。朝原氏はこの他、新島学園のグラウンドで、地元の中学生50人を対象にした陸上教室も行った。
同志社は今後、協定を活用したさまざまな活動を計画している。具体的には、運営する同志社大学や同志社女子大学、同志社国際学院初等部の学生や児童が、安中市の新島旧宅や安中教会を訪問し、同市と同志社との関係を学ぶプログラムの実施や、大学生へのインターンシップ・Iターン・Uターン情報の提供、同市の企業からの研究員の受け入れ、大学教員による同市の企業の技術者への最新の研究成果の発表会の実施、「安中・同志社新島講座」(仮称)の定期的な開催などを予定しているという。