ローマ教皇フランシスコは、2000年以降にキリスト教信仰を理由に殺害された世界中のあらゆる教派のキリスト者を特定するため、バチカン(教皇庁)の聖人認定部門である列聖省内に新たな作業部会を設置した。
列聖省内に設置されたのは、「新しい殉教者・信仰の証人委員会」。教皇は、5日に発表した書簡(英語)で、カトリック教会で25年ごとに持たれる「聖年」を迎える2025年に、これらの殉教者をたたえることを目指すものだとし、次のように述べた。
「私たちが『希望の巡礼者』として集う2025年の聖年を考慮して、私は、キリストを告白し、キリストの福音を証しするために血を流した全ての人々の目録を作成するために、列聖省に『新しい殉教者・信仰の証人委員会』を設立しました」
2025年の聖年に関するウェブサイト(英語)によると、聖年は「特別な恵みの年であり、カトリック教会は信者に、自分自身や亡くなった親族のために特別免償を求める機会を与える」。期間は一般的には1年間で、前年の「主の降誕」の祝日(クリスマス)直前に始まり、翌年1月上旬の「主の公現」の祝日に終わる。
教皇は書簡の中で、殉教者は「最初の数世紀よりも現代においてより多くなっている」と指摘している。
「彼らは司教や司祭、聖別された男女、一般の信徒や家族であり、世界のさまざまな国で、その命の賜物によって、慈愛の最高の証明をささげました」
教皇はまた、この新しい取り組みで調査し、記録することが期待されるこの四半世紀における現代の殉教者の物語は、この分野の過去の研究の上に築かれるものだとし、「キリスト教共同体が大切にする宝」だと語った。
「従って、兄弟姉妹たちの血を流すまでに至った生涯の証言を集め、彼らの記憶がキリスト教共同体にとって大切な宝となるようにするためには、歴史研究を続けることが必要です。この研究は、カトリック教会だけでなく、キリスト教の全ての教派に関わるものです。時代の変遷を目の当たりにしている現代においても、キリスト者たちは、大きな危険の中で、私たちを結び付ける洗礼の活力を示し続けています」
書簡によると、現代の殉教者の多くは、キリスト教に敵対する場所でイエスを礼拝しようとしたり、貧しい人々や社会から拒絶された人々を助けようと活動したりする中で、さまざまな理由により殺害された。
「危険と知りながら、信仰を表明したり、日曜日に聖体の秘跡を受けたりする人も少なくありません。また、貧しい人々の生活を慈しみ、社会から拒絶された人々の世話をし、平和の賜物と赦(ゆる)しの力を大切にし、広めようとする努力の中で殺された人々もいます」
「さらに他の人々は、個人としてあるいは集団として、歴史の激動の中の静かな犠牲者となっています。私たちは彼ら全てに大きな借りがあり、彼らを忘れることはできません。この新しい委員会の活動によって、教会によって公式に認められてきた殉教者たちと共に、兄弟姉妹たちの文書化された証言――それは数多くあります――を、一つとなったキリスト者の殉教の声が響き渡る広大なパノラマの中に並べることができるようになることでしょう」