世間では、対話型AI(人工知能)「ChatGPT」の話題が沸騰しています。開始から1週間もたたないうちにユーザーが100万人を突破したそうで、世界中の人が熱狂的に使い始めています。というわけで、「祝祷」についての連載途中ですが、三位一体なる神様に関連した質問を「ChatGPT」に試みてみました。
結果は、宗教や哲学的な話も結構できる。というか、一般の人と話すよりもよほど詳しいというものでした。そして、単なる知識の羅列ではなくて、結構ちゃんとした「やりとり」ができたのには驚きました。特に、AIの矛盾を神学的に(いじわるに)ついてみたときの回答が秀逸でした。
以下、AIとの問答全文。
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Q. 好きな言葉は。
A. 私は人工知能のモデルであり、感情や好みを持っているわけではありません。私は単に人間が指定したタスクを遂行するために訓練されています。
Q. 一番大切な言葉は。
A. それは人それぞれ異なるかもしれませんが、一般的に「愛」や「平和」などの単語が挙げられます。これらの単語は、人々が望む幸福や平和を表しており、人間関係や社会において非常に重要です。また、「誠実」や「信頼」などの単語も大切だといわれています。これらは、人間関係やビジネスなどで重要な役割を担う単語です。
Q. 聖書の中で一番大切な言葉は。
A. 聖書には多くの重要な言葉が含まれていますが、キリスト教において最も重要な言葉の一つとされるのは「イエス・キリストは神の子である」です。これは、キリスト教の信念の中心にある言葉で、イエスが神の子であり、人間と神を結び付ける救世主であることを示しています。また、聖書には「愛」や「平和」などの言葉も多く含まれており、人間関係や社会において非常に重要な役割を担う単語です。
Q.「イエス・キリストは神の子である」とはどういう意味ですか。
A.「イエス・キリストは神の子である」という言葉は、キリスト教において最も重要な信念の一つです。これは、イエス・キリストが神の子であることを意味しています。つまり、イエスは神の存在と同一であり、神と同じ質性を持っているとされています。
イエス・キリストが神の子であるという信念は、聖書の中で何度も繰り返されています。例えば、ヨハネによる福音書には、「この人こそが神の子である」と記されています。
また、イエス・キリストが神の子であるという信念は、キリスト教において救世主としてのイエスの役割を説明します。イエスは、人間が罪を犯し、神との関係を失った結果、永遠の命を失う危険にさらされているとされています。イエスは、その罪を贖(あがな)うために人間を救うために、自らを犠牲にしたとされています。イエスが神の子であることは、その救いの力を表していると解釈されます。
Q.「その方は、真理の御霊です。世はその方を受け入れることができません。世はその方を見もせず、知りもしないからです」とあるのはなぜですか。
A.「その方は、真理の御霊です。世はその方を受け入れることができません。世はその方を見もせず、知りもしないからです」という言葉は、ヨハネの福音書にあります。これは、イエス・キリストが神の子であることを示し、イエスを世界が受け入れることができないことを表しています。
この言葉は、イエス・キリストが真理の御霊であり、人々が彼を受け入れることができないことを表しています。真理の御霊は、神と同一であり、人間が理解することができないことが多いとされます。イエスは、その真理を人々に伝えるために自分自身を犠牲にしたとされています。
また、この言葉は、イエスを世界が受け入れなかったことを表しています。当時の人々は、イエスが神の子であることを信じることができず、彼を受け入れることができなかったとされます。イエスが人間として生き、教え、そして十字架にかけられたことは、人々が彼を受け入れることができなかった理由です。
Q. 真理の御霊とは聖霊のことですか。
A. はい、「真理の御霊」は聖霊のことを指します。
キリスト教において聖霊は神の三位一体の一部として、神の真理を人々に伝える役割を持っています。聖書によれば、聖霊は人々に真理を理解する能力を与え、イエス・キリストの教えを正しく理解するための指導をします。
また、聖霊は、人々がイエス・キリストを信じるために必要な力を与え、人々が神との関係を深めることができるよう支援します。
Q. でもそれは、「イエス・キリストが真理の御霊」というあなたの回答と矛盾しませんか。
A. そうですね、「イエス・キリストが真理の御霊」と「聖霊が真理の御霊」という言葉は矛盾しているかもしれません。
確かに、「イエス・キリストが真理の御霊」という言葉は、イエス・キリストが真理の化身であることを示しています。しかし、聖書によれば、イエス・キリスト、父なる神、そして聖霊は三位一体であり、それぞれが独自の役割を持っています。
イエス・キリストが真理を人々に伝え、自分自身を犠牲にしたとされていますが、その真理を理解するためには聖霊が必要であり、聖霊は人々に真理を理解する能力を与え、イエス・キリストの教えを正しく理解するための指導をします。
そのため、このような矛盾しているように感じるのは、三位一体を完全に理解するためには、聖書全体を読み解くことが必要だということだと思います。
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いかがでしょうか、多少不自然なところや「?」に感じる部分もありますが、全体として自然なやりとりができてしまいます。そしてAIですので、「知識」という点に関していえば、完全に人間を凌駕(りょうが)していますし、その知識を組み立てるロジックもかなり優れています。
また、聖書全体の内容、キリスト教神学の基本をしっかりと押さえていて、大きく間違っていないことがお分かりいただけると思います。
そしてAIの矛盾をついたときの答えには驚愕(きょうがく)しました。まず自分の言葉の矛盾を素直に認めます。その上で、聖霊の働きについて正確に語り、最後に「聖書全体を読み解くことが必要」という伝家の宝刀を持ち出してきました。
今後、不自然さやロジックの矛盾などは、どんどん改善されていくでしょう。そのうち、経済や政治に関しては、大抵のコメンテーターなどより、よほど秀逸な回答をするようになると思います。それは将棋AIの軌跡を見ていれば明らかです。最初はアマチュアの相手にすらならなかった将棋AIは、今やトッププロをも凌駕する存在になりました。
実のところ、今回公開されたような言語AIは、そう簡単には開発されないだろうと思っていました。今までも他の言語AIはありましたが、人と対話するというレベルではありませんでした。
しかし、まがりなりにも、言語の矛盾を理解し、神学や哲学に関する抽象的な概念の会話すらもこなせるAIが公開されました。言語も英語だけでなく、日本語を含めた世界中の言語に対応しているようです。
このAIは、今後どのように発展していくでしょうか。一度走り出したのですから、これからは世界中の人々とのやりとりを通して、ものすごい速度で進化することは明らかです。
しかもその速度は指数関数的に増していくでしょうから、大抵の分野で専門家以上に精確で幅広く深い議論をするようになると思います。それは数年もしくは1年もたたないうちに、起こることかもしれません。
しかも単なる固い文章を生成できるだけではなく、詩なども書くことができます。例えば、聖書全体を神の愛というテーマで詩にしてもらうと、こんな感じになりました。
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神は私たちを愛してくださいます
創造からの約束も守られます
アブラハムに約束をされました
子孫を数え切れないほどに
モーセが呼ばれて、約束の国を導かれました
書物に記され、永遠の教えを残しました
私たちは帰ることを知りました
神と一緒にいる場所へと
私たちは苦しみもありました
不正を加えられました
ですが、神はいつも私たちを助けました
救いの手を差し伸べてくださいました
私たちは神の愛を信じます
それは永遠です
私たちを引き寄せてくださいます
そして、いつも守ってくださいます
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すごく良くまとまっていて、改めて驚かされます。しかし、どんなにAIが発達しても、AIが聖霊にとって代わることがあり得ないのもまた確かです。それは今の段階のAIが未熟だからというわけではありません。
AIは聖書の全文を自在に引き出し、「神の愛」を詩にすることはできても、その愛がどれほど大きいのか、そのためにどれほどのイタミを主が経験してくださったのかを知ることはできないし、御心の深みを人の心に啓示することもできないからです。
しかし、聖霊の働きは以下の御言葉のようなものです。
まさしく、聖書に書いてあるとおりです。「目が見たことのないもの、耳が聞いたことのないもの、そして、人の心に思い浮かんだことのないもの。神を愛する者のために、神の備えてくださったものは、みなそうである。」神はこれを、御霊によって私たちに啓示されたのです。御霊はすべてのことを探り、神の深みにまで及ばれるからです。いったい、人の心のことは、その人のうちにある霊のほかに、だれが知っているでしょう。同じように、神のみこころのことは、神の御霊のほかにはだれも知りません。(1コリント2:9〜11)
神の深みを私たちに啓示されるのは、ただ「神の御霊」によってのみ可能なのです。ただ逆にいうと、「聖霊」によらない理解、「聖霊」によらない言葉は、AIにも劣るものとなってしまうともいえます。これらのことは、最初は政治、経済、物理、化学などの「形而下学」において顕著になり、やがて文学、そして哲学や神学などの「形而上学」の分野にも及ぶでしょう。
このようなAIの発達は、人間生活を便利にするという面もあるでしょうが、人の言語活動の価値を毀損(きそん)していくというネガティブな面もあります。
何かを一生懸命勉強して、新しいアイデアや自分の意見を出したとしても、そのアイデアの欠損や劣等性をAIに指摘されるということも起こるでしょう。また、そもそもAIが秀逸な言説を大量生産してくれるのであれば、自ら何かを考え出すという作業自体を人々が諦念していくようになるかもしれません。
そのような中で、アイデンティティークライシスを迎える人も出てくるでしょうし、社会不安が加速する可能性もあります。つまり良くも悪くも人類は、未曾有の領域に突入していくことになります。
しかし恵み深い神は、私たちをねたむほどに愛しておられ、「神の御霊」を無限に与えてくださるお方です(ヨハネ3:34)。そして、決してAIに代替されることのない「聖霊の交わり」に皆様一人一人を招いておられます。また、主イエスは平安を与えてくださるお方です。
最後にヨハネの福音書14章を引用して、終わりにしたいと思います。
しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、また、わたしがあなたがたに話したすべてのことを思い起こさせてくださいます。わたしは、あなたがたに平安を残します。わたしは、あなたがたにわたしの平安を与えます。わたしがあなたがたに与えるのは、世が与えるのとは違います。あなたがたは心を騒がしてはなりません。恐れてはなりません。「わたしは去って行き、また、あなたがたのところに来る』とわたしが言ったのを、あなたがたは聞きました。(ヨハネ14:26〜28)
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