クリスチャンのアーティスト4人がコラボして、東京・日本橋の画廊で「Christmas Christian Creator Quartet 4つの表現展」を開催している。初日の19日には、クリスマスゆかりの曲をバイオリンとギターで奏でるミニコンサートも開かれ、作品と音楽で来場者を楽しませた。展示はクリスマスの25日まで続く。
作品を展示しているのは、日本画家の今吉淳恵さん、キリスト教美術家の小泉恵一さん、テンペラ画家の服部州恵(くにえ)さん、鋳造水引作家の君塚聖香さんの4人。イエス・キリストの誕生を祝うクリスマスをテーマに、受胎告知からイエスの生涯、そしてイエスの受難後にもたらされた喜びあふれる世界までを、絵画や彫刻など、それぞれのアーティストが得意とする技法を生かして表現している。
天使ガブリエルがマリアに、イエスの妊娠を告げる受胎告知の場面は、服部さんが、主にルネサンス期に用いられた絵画技法であるテンペラなどを用いて描いた。ガブリエルが手にしているのはユリの花。白く、雄しべのないユリの花を用いることで、マリアの純潔を表現した。また、ルネサンス期の巨匠らが金箔を使って聖なる世界を表現していたことに触発され、独自の研究も加えつつ、金箔をふんだんに使った。
ガブリエルがユリの花を向ける先には、小泉さんによるマリアの彫刻が置かれている。世の救い主となるイエスを身ごもったことを知り、マリアが神をたたえる「マリアの賛歌」(ルカによる福音書1章)を表現したものだ。
そして、救い主に出会うまで死ぬことはないと言われていたシメオン、イエスを「世の罪を取り除く神の子羊」と宣言したバプテスマのヨハネ、高価な香油でイエスの足を洗った女、イエスに尋問するユダヤ総督ピラト、十字架を背負って自らゴルゴダの丘を目指すイエスなど、30数年にわたったイエスの生涯を再現した小泉さんの彫刻が並ぶ。
小泉さんの彫刻群と対面するように展示されているのは、今吉さんによる日本画2点。このうち1点は、今吉さんがまだ救われて間もない頃、教会でイエスの十字架の血潮について歌うワーシップソングを聞きながら描いたもの。当時はまだ、歌詞の意味はよく分からなかったが、出来上がったのは真っ赤な十字架が象徴的な作品だった。それを見た牧師も、今吉さん本人も驚いたという。
画廊の中央には、小泉さんによる十字架にかけられたイエスの彫刻が立つ。聖書によると、十字架の罪状書きは、ヘブライ語、ラテン語、ギリシャ語の3カ国語で書かれたとされる。西洋美術の作品ではラテン語の頭文字のみを取り「INRI」と略されることが多いが、小泉さんは、聖書を可能な限り忠実に再現する作品造りを心掛けており、展示されている十字架の罪状書きは3カ国語で書かれているなど、聖書の世界が細部まで再現されている。
十字架にかけられたイエスの彫刻を堺に、画廊の奥には、服部さんによるテンペラと油彩による絵画が並ぶ。花をモチーフにした作品を中心に、イエスの十字架後にもたらされた喜びにあふれた世界、天国を表現している。
君塚さんは、祝儀袋などに飾りで使われる帯ひも「水引」を型に取り、金属の錫(すず)で鋳造する作品を手掛ける珍しいアーティスト。錫製の水引は輝きが美しく、また柔らかな金属であるため肌にもよくなじむという。会場では、紙製の水引ブローチと、錫製の水引箸置きなどを展示・販売している。
ミニコンサートでは、普段から教会で音楽奉仕をしているインドネシア出身のジョルミン・フサダさんとフサダ早紀子さんの夫妻が、「天なる神には」「さやかに星はきらめき」など4曲を演奏。クリスチャンとして歩む2人の証しを交えつつ、教会に行ったことのない来場者にもイエスの誕生の意味を分かりやすく伝えた。
4人がコラボして作品展を開くのはこれが初めて。バイブル・アンド・ミニストリーズの会員でもある服部さんは、「一言で芸術家といっても、それぞれの賜物は違います。今回のコラボを通して、互いの賜物を組み合わせることで、聖書をより立体的に表現できることを感じました」と語った。
会期は、12月19日(日)~25日(土)午後12時半~午後6時半(最終日は午後5時まで)。会場は、東京都中央区日本橋2-1-19三幸ビルB1のギャラリーカノン。入場無料で、会期中はいずれかの作家が毎日在廊し、作品を紹介する。