今年で76年目となる終戦記念日の8月15日を前に、日本キリスト教協議会(NCC)は3日、「8・15平和メッセージ」を公式サイトで発表した。メッセージは、昨年から続くコロナ禍や、その中で開催されている東京五輪、2月に発生したミャンマーの軍事クーデターなどに言及。このような「苦難の時代」に教会は、「弱さの中でこそ真に力をあらわしてくださる主が招き導かれるいのちのふれあう福音宣教の原点に立ち帰る恵みの時」を指し示されているなどと伝えた。
吉高叶(かのう)議長と金性済(キム・ソンジェ)総幹事の連名で出されたメッセージは、コロナ禍について、「人類の到達した貪欲な資本主義と飽食・大量消費・環境破壊文明と無関係ではない」と指摘。そのコロナ禍の中で開催されている東京五輪は、「『人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会を奨励』するオリンピック憲章の精神から大きく逸脱した現実を露呈」することになったとし、首都圏を中心に感染が急拡大していることを踏まえ、五輪後に直面する社会状況に深い憂慮を示した。
また、沖縄の辺野古新基地建設問題や膠着(こうちゃく)が続く日韓関係、米中対立、台湾海峡問題などを取り上げ、「平和と逆行する不安と敵意の気運が支配する国際政治の流れ」が増していると指摘。そうした中で日本が「憲法9条の精神とそれに基づく対話の平和外交の道を見失い、なし崩し的に流されて進む」ことが懸念されるとした。
2月に軍事クーデターが発生したミャンマーについては、「一日も早い民主主義の復活を求め、あらゆる武力の根絶を願い祈ります」とし、現地で非暴力の不服従抵抗運動を行っている人々や、日本で声を上げている在日ミャンマー人への連帯を表明。帰国困難になった在日ミャンマー人の生活保障や、ミャンマー国軍を利するような政府開発援助(ODA)の再検討を日本政府に求める責任を覚えるとした。
その上で、このような危機的な現実の中で、キリスト者や教会は何を求められているのかを自問。十字架の死から復活したイエス・キリストは、悲しみと恐れの中にあった弟子たちに、「あなたがたに平和があるように」(ヨハネ20:19)と告げ、聖霊を注ぎ、使命を授け、世に遣わしたとして、次のように説いた。
「キリストの教会はこの国で戦後、廃墟の中から福音に励まされ、苦難と悲しみにある隣人に寄り添い、絶望を乗り越える希望の灯(ともしび)をともす宣教の道を、ゆるされ導かれてきました。今わたしたちは、弱さの中でこそ真に力をあらわしてくださる主が招き導かれるいのちのふれあう福音宣教の原点に立ち帰る恵みの時(カイロス)を、今再びこの苦難の時代に指し示されています」
「いのち、ふれあい、そして共に生きようとする平和が引き裂かれた世にあって、共感不能、排除、差別、そして敵意の広がりに抗(あらが)い、ひたすらいのちが分かち合われ、だれもが『喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣き』(ローマ12:15)ながらつながり合う平和を、エキュメニカルに追い求め、共に働く道を、今こそ主はわたしたちに、この危機の最中の今から未来に向かって呼び集められるキリストの体なる教会の存在理由として指し示されます」
そして最後には、「危機の嵐に心囚(とら)われず、『向こう岸に渡ろう』(マルコ4:35)と告げる主に励まされながら、わたしたちは共に『望みの港』(詩編107:30)をめざし、どのいのちも取り残さない正義と平和の灯をかかげ続ける宣教の道を進み続けましょう」と呼び掛けた。